紛争下の性的暴力被害者に正当な賠償を

  • 2014/07/23

紛争下の性的暴力被害者への賠償に、国連は新たな指針を作成

ロンドンで2014年6月に開催された「紛争下の性的暴力根絶のための世界サミット」で、6月7日、国連ウィメンは、OHCHR(国連人権高等弁務官事務所)と共に、国連事務総長の「紛争下の性的暴力に対する賠償についての指導覚書」を始動させました。これは、紛争下の性的暴力被害者への賠償を計画・実施する際、ジェンダー対応による取り組みを推進するための青写真となるものです。

変革をもたらす賠償制度の導入を国際社会に強く求める
紛争下の性的暴力根絶を重点的に話し合うため、国際的団体が集結した最大のサミットを背景に、ヌクカUN Women事務局長は、新たに採用された指針を提案し、賠償問題を重点的に取り上げる緊急な必要性を訴えました。同問題では、暴力被害者を最重点に取り上げます。紛争後の国では、公正さをもたらす手段である被害者への賠償のための資金が、最も不足しています。
北ナイジェリア・シリア・南スーダン・中央アフリカ共和国・アフガニスタン・その他の危機的地域から、女性を巻き込む紛争の恐ろしさを日々詳細に伝える残酷な報告がもたらされ、世界的な怒りが起きています。加害者に有罪を宣告することは不可欠ですが、それだけでは、暴力の根本的原因に取り組むことにはならないのに加え、被害者が当然受け取るべき賠償を分配することに結びつかないことを明らかにしたうえで、指導覚書では、紛争時の性的暴力に巻き込まれた個人や地域社会に、変革をもたらす賠償制度を導入するよう、国際社会に対し強く求めています。

見過ごされる直接の被害者である女性への賠償
賠償問題は、社会的・経済的差別がある中で、直接の被害者であり、未亡人・妻・母親・介護者でもある女性にとって、非常に重要であるにもかかわらず、訴訟の過程で最も見逃されやすい問題です。暴力被害者のための専門の健康管理・教育プログラムに始まり、土地返還・公式謝罪・犠牲者記念日に至るまで、賠償によって、平等な市民としての被害者の権利を認め、立ち直りに不可欠な資金を提供することが不可欠です。
「現在必要なのは、より力強い行動であり、紛争時の性的暴力は、私たちにとって最も懸念する問題です。賠償は、被害者にとって最も重要な問題であるにもかかわらず、和平交渉において決まって無視されるか、資金調達が優先されて、考慮されないのです。紛争時の性的暴力の恐怖を間近で体験した被害者の人生に、真の変化を確実に起こすために、私たちはこの行動計画を前進させなければなりません」と、ヌクカ事務局長は述べています。「UN Womenは、紛争に巻き込まれた人々の人生に重大な変化をもたらす手段として、賠償の約束を果たせるよう国際社会を支援し、包括的救済策だけでなく裁判の公正さにも、被害者のニーズを反映させる準備がいつでもできています。」

1回限りの援助ではなく、女性に土地所有や相続権を認める等、根本的改革をめざす

指導覚書は、広範な協議と調査の成果であり、紛争後の社会における、公正な政策と計画作成のやり方を伝えるため、世界中の経験の中から、すぐに実施できる指針作りをめざしています。調査研究でわかったことは、政策や法律は概ね適正であるのに、その実行やジェンダー対応の賠償計画作成が、まだ立ち遅れているということです。これらの課題に取り組むために、UN WomenとOHCHRは、国連機関のための手引書を作成した。同書にての当事者に適用できる指針が盛り込まれています。
この指針では、社会に永続的和平を確実にもたらす基盤として、ジェンダー平等のために資金を投入する必要性を強調し、長期的かつ徹底した解決策を求めています。例えば、夫が死亡または行方不明の妻に、1回限りの資金援助をして終わらせるのではなく、土地や相続権が得られるようにすること。土地を再分配し、貸付・技能・財産を得られるようにすることに加え、紛争に巻き込まれた人々に土地を返還することで、土地を元手に生計を立てられるようにすること。性的暴力被害者の将来の自立に向け、収入に結びつく技能習得を支援するだけでなく、傷の修復手術を提供することなどが挙げられます。

被害者にわかる言葉で、権利を認識させ、賠償計画から実行まで参加させること
指導覚書に盛り込まれた重要指針は、次のようなものです。
変革を起こすことができる影響力のある賠償制度が、緊急に求められていること。変革的賠償とは、単独の暴力行為に対してだけではなく、不平等を引き起こす背景に対しても補償することです。不平等社会では、女性が暴力を受けやすく、この暴力の結果と影響を伝えています。

国連安保理事会決議1325号およびそれに続く6つの決議の精神に沿って、指導覚書では、紛争に関わる性的暴力の被害者を、改革の主体として中心に据えるよう求めています。賠償計画作成の計画段階から実行・監視・評価のすべてに、被害者を参加させ、意見を聞くことが有意義に行なわれなければなりません。
人権侵害の影響は、男女で異なり、その形も様々な違いがあります。こうした現実と男女の異なるニーズを認識し、それに対応する賠償計画の作成を進めることが、緊急に必要とされています。

重要な望ましい活動は、次のようなものです。
意識向上運動と福祉活動が不可欠であり、被害者に分る言葉で、自分たちの権利を認識させる必要があります。女性が、受取人としての手続きができるように、交通手段の提供と保育施設の設置も、同様に不可欠です。更には、被害を申し出る人たちへの安全な環境作りとして、秘密保持対策も忘れてはなりません。
性的暴力被害者との有効な話し合いによって、より良い訴訟手続き・制度が構築される必要があります。変革を引き起こすには、旧態依然を脱することが求められています。
また、指導覚書では、個別的および集団的賠償が互いに補完・強化し合えるような、様々な形態の賠償を含む、包括的賠償計画の策定を推進する必要性も強調しています。

紛争下の性的暴力に取り組んでいるUN Womenの活動について、もっと多くのことを知りたい方、グローバル・サミットにおけるヌクカ事務局長のスピーチ録画をご覧になりたい方は、次のサイトでご覧になれます。

http://live.esvcsummit.com/media.html

翻訳ボランティア 上田恵美子訳

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