「気候変動はジェンダー不平等是正のチャンスを狭める」UN Women事務局次長の演説を紹介します

  • 2015/10/27

「気候変動はジェンダー不平等是正のチャンスを狭める」

ヤニック・グレマレック事務局次長

9月29日に開催されたハイレベル会合「気候変動対策における女性のエンパワーメント」でのヤニック・グレマレックUN Women事務局次長の演説

2015年9月29日

(演説内容)
気候変動は男性よりも女性により大きな影響をもたらすだろうという認識が広まる一方で、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントの実現が、社会、経済、気候変動の問題解決に大きく貢献するという認識も広がりつつあります。これは、この数年間、気候変動に関する交渉にジェンダー主流化が組み込まれてきたという現状からも伺うことができます。

現在の重要な課題は、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントを、地域、国家、そして国際レベルで行う気候変動への対応策に体系的に組み込むことです。そのためには、気候変動への適応策、温暖化の緩和策、災害リスク管理活動の中心に女性を位置づけるというパラダイムシフトが必要です。

気候変動は、農業において女性が現在抱えている問題を深刻化させる可能性があります。女性は農業労働力全体の43パーセントを占め、家庭と地域社会で食糧の確保を担う立場にあります。しかしながら、差別的な政策や女性に不利な社会通念が存在することで、農業に従事する女性は男性よりも安定した土地所有、農業資材→土や肥料、農具など、農作業に必要な諸々のもの、資金、水とエネルギー、適切なインフラ、技術、そして政府機関による農業普及サービスの利用において不利な状況にあります。アフリカでは、土地やその他の生産資源へのアクセスに見られるジェンダー格差が是正されれば、農業生産高を最大で20パーセント押し上げることができます。これは、女性のエンパワーメント、経済発展、気候変動などの問題に対する社会のレジリエンスの向上にとって大きなチャンスです。

しかし同時に、気候変動への対応により農業におけるジェンダー格差を是正し、このチャンスをつかむ機会が狭まるとも言えます。例えば、気候変動に対応していくには、それに耐えうるインフラへの先行投資、資産、新しい農業手法への転換が必要です。そのため、現在農業で女性が直面している問題がさらに深刻になり、低利の長期融資や農業普及サービスが利用できなくなります。気候変動に対応した農業のための生産資源の利用において、ジェンダー格差是正に向けた協調した取り組みがないために、女性が置かれた状況がさらに悪化する危険性があります。

エネルギーに関しても同様で、近年の動向から、すべての人が電気を利用できるようになるには2080年まで、そして調理にクリーンエネルギーが利用できるようになるには22世紀半ばまでかかる見込みです。高度な集中型エネルギーシステムでは低所得国の貧しい人々、特に農村地帯、とりわけ女性にエネルギーが届かない状況にあります。北ナイジェリアの村に住む女性は、エネルギーを利用するためにニューヨークの住人の60~80倍もの費用を払っています[1]。分散型持続可能エネルギーの技術が、貧困層にとって費用面で利用可能なエネルギーの選択肢となりつつあります。この技術により、収入を得る活動、無償の家事労働の削減、情報、教育、公共医療へのアクセスという点で、女性のエンパワーメントの機会が大きく広がります。

多くの発展途上国の女性は家庭でエネルギーを管理する立場にあり、持続可能エネルギーへの移行において強力な変化の担い手になることができます。事業をしている女性たちは、農村地帯においてエネルギーの流通とサービスのネットワークを作り、コストをかけずに顧客を獲得し、持続可能エネルギーを普及させる大きな役割を果たす能力を持っています。

しかしながら、エネルギーの移行を促進するこの能力がほとんど活かされていないのが現状です。持続可能エネルギーの分野では女性が過小評価されているのです。繰り返しになりますが、差別的な規制、技術や低利の長期融資が利用できないなどの理由で、女性の投資リスクが男性よりも高くなり、女性のエンパワーメントを阻害し、すべての人がクリーンエネルギーを利用できるようにするための活動が妨げられているのです。

同様のジェンダー格差が災害リスク管理においても見られます。過去10年間に発生した災害の87パーセントは気候変動に関連しており、この数字は年々増えることが予想されます。気候変動に耐えうる農業における女性の役割を制限し、クリーンエネルギーの普遍的な利用を妨げている同様の構造的問題により、災害時や災害後の女性はより被害を受けやすい立場に置かれています。例を挙げると、2004年のスマトラ沖地震時の津波による死者の70パーセント以上は女性でした。2008年にサイクロン・ナルギスがミャンマーのエーヤワディー川デルタを襲った時の18歳から60歳までの女性の死亡率は、同年代の男性の死亡率の2倍でした。被害を受けた地域では、昔から女性に泳ぎ方や木登りの方法を教える風習がありませんでした。

第3回国連防災世界会議で採択された「仙台防災枠組2015-2030」は、根本にある災害のリスク要因集中的に取り組むことでパラダイムシフトすることを提唱しています。

その中には、リスクのジェンダー不平等を是正するために以下のような取り組みが盛り込まれています。

(i) 気候変動の災害リスクをジェンダーの側面から評価する。
(ii) 災害リスク管理の方針と方法を新たに策定する。
(iii) ジェンダーに対応した災害リスク管理の資金格差を是正する。
(iv) 気候変動による自然災害の防止、備え、災害後の復旧に必要な女性の能力を強化する。

今日、気候変動への対応においてジェンダー格差に組織的に取り組むことは、気候変動に左右されない強靭な未来の家族、地域社会そして国家を作り出すための最も効果的な方法の1つです。気候変動に対してジェンダーの視点を持つことにより、糸口が見えないと思われていた問題に解決策を見出すことができます。

UN Womenは、災害への適応策、緩和策、災害リスク管理活動の中心に女性を置くことにより、これらの新たな解決策をパートナー機関とともに強力に後押しします。そしてこのようなパラダイムシフトにより複数の持続可能な開発目標が同時に達成されるような好循環が創り出され、その結果あらゆる場所において女性と男性の生活が改善され、生きていく上での強靭さを育み、気候変動に耐えうる経済が実現すると信じています。

注釈
[1] コフィー・アナン前国連事務総長「Africa Power」(2015)より
UN WOMEN WEEKLY NEWS UPDATE(2015.10.5より)
翻訳協力:武藤洋子(実務翻訳スクール.com)

Categories: News, 本部

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