スポーツは女性と女児をエンパワーする大きな可能性を秘めています」プリ国連事務総長補兼UN Women事務次長の発言を紹介します

  • 2016/03/09

「スポーツは女性と女児をエンパワーする大きな可能性を秘めています」

ラクシュミ・プリ
2016年2月16日 11時21分

2016年2月16日に開催されたイベント「社会的、経済的、環境的に持続可能な開発ツールとして大規模なスポーツイベントを開催する価値」におけるラクシュミ・プリ国連事務総長補兼UN Women事務次長の発言

潘基文国連事務総長、
各国代表者の皆様、
ご列席の皆様、
ならびに関係者の皆様、

このような大切な議論の場に参加できることをうれしく思います。これまでに登壇された方々が話されたように、スポーツは社会や経済、環境に真の変化を起こし、持続可能な開発や社会の一体性に寄与するだけでなく、固定観念や先入観に立ち向かう大きな力を持っていると、私も思います。

ジェンダー平等の実現、また持続可能な開発目標の観点からスポーツがどのような役割を果たすかを簡単にお話しします。

まず、スポーツは女性と女児をエンパワーメントする大きな可能性を秘めています。

多くの国々で、スポーツは女性の声を高め、ジェンダーの壁や差別を打ち破る力があると考えられています。スポーツをする女性は、女性というのは弱々しくて何もできないという認識が間違っているということを示してくれます。女性選手がハードルを飛び越える、あるいはボールを蹴るたびに、女性も身体的な強さだけでなくリーダーシップや戦略的な思考を持っているということが示され、ジェンダー平等に一歩ずつ近づくことができるのです。

スポーツに参加することでジェンダー・ステレオタイプを打ち破り、女性と女児の自尊心が高まり、リーダーシップのスキルを伸ばすことができる、ということがこれまで示されてきました。

次に、女性と女児は選手として、あるいは観客としてスポーツに参加するときに差別を受け、またプロスポーツやマスコミ報道、スポーツ専門のメディア、スポンサーの面でも不平等な扱いを受けるような状況が今も続いています。

歴史を振り返ってみると、現在ほど女性がスポーツで活躍している時代はありません。もともと近代オリンピックは男性のみが参加する大会として始まりましたが、その後少しずつ女性選手が参加する種目が増えていきました。1900年に開催された第2回パリ大会には女性選手が初めて参加し、997人の選手のうち22名が女子選手で、テニス、ヨット、クロッケー、馬術、ゴルフの5つの競技に参加しました。信じられないかもしれませんが、女性がマラソンに参加できるようになったのは1988年の大会からです。また2012年のロンドン大会では女子ボクシングが競技種目に加えられ、全競技に女性が参加した初めての大会になりました。

おもしろいことに、1991年以降、オリンピックの追加競技には女子の種目を設けることが義務付けられています。しかし大規模なイベントでさえ、未だに女性は困難な状況に置かれています。2015年のFIFA女子ワールドカップでは、全試合が人工芝の競技場で行われました。人工芝は、天然の芝に比べて体への負担が大きいと考えられています。男子のワールドカップで人工芝の競技場で試合をすることなど考えられません。

全体的に女子スポーツに対するメディアの関心は、男子スポーツに比べると非常に低いものです。試しに、ニューヨーク・タイムズ紙のスポーツ欄をちょっと見てみてください。いつのものでも構いません。おそらく、女子選手の写真も記事も載っていないのではないでしょうか。このことは女子選手の収入に大きなマイナスになり、スポンサー探しや大会への参加、連盟加入などもむずかしく、女性がその才能や技術を発揮できる場が少ないということになります。

実際にプロスポーツ全体において、ジェンダーに根ざした差別のうち、顕著で、かつ数字ではっきりと示すことができるものの1つに収入の格差があります。女子ワールドカップで支払われた報酬は総額1500万USドルであったのに対し、男子ワールドカップでは5億7600万USドルと、実に40倍近い開きがありました。ただし、テニスは例外で、2007年以降4大大会すべてで男女の賞金は同額になっています。

スポーツの大会を開く目的は公平という価値を広めることですが、一方で負の面も持ち合わせています。女性と女児に対する暴力はあらゆる国で、いろいろな状況において起こっています。スポーツのイベントに関連した暴力もあります。イギリスの事例から、ワールドカップの開催中や地元のチームが負けたときに家庭内暴力が増加することがわかっています。また、性的な搾取を目的とした女性や子どもの売買は、オリンピックやワールドカップといった大規模なスポーツの開催期間中に大幅に増加します。
三つ目に、UN Womenとスポーツ団体、特に国際オリンピック委員会との協力についてご紹介します。

ブラジルにおいて、UN WomenとIOCは全国スクールゲーム事業と連携して、青少年に平等、無差別、非暴力、女性のエンパワーメントの重要性、また本当の男性らしさとは何かを教えるプログラムを共同で実施しています。12歳から14歳の少女を対象に、スポーツを通じてリーダーシップを強化し、それによって自尊心を養い、正しい意思決定を後押しし、ジェンダーに根ざした暴力を防ぐことを目指しています。また、12歳から17歳の少年少女を対象に、ジェンダー・ステレオタイプを打ち破り、前向きな変化を起こすためのパートナーとして行動することを呼びかけています。

競技場の内外に関わらず、どこであってもジェンダーに根ざした暴力は許されない。あらゆる競争の場が女性と女児にとって公平である未来を築くことができる。スポーツは、パートナーシップや様々な観客との関わりを活かして、すべての人にこういうメッセージを伝えることができる場です。ブラジルでのワールドカップ開催中に、UN WomenはClique 180という携帯端末用のアプリを使って、暴力の被害を受けた女性に情報やサービスを提供しました。

他の国連機関と共同で、また事務総長が呼びかけたユナイト(UNiTE)の「女性と少女に対する暴力への対応と予防」キャンペーンの一環として、UN Womenは「勇者は暴力を振るわない」と書かれたステッカーをFIFAワールドカップの会場で配り、サッカーファンに対して、男性には女性に対する暴力を止める責任があり、ジェンダー・ステレオタイプに立ち向かわなければならないと訴えました。

UN Womenはバレンシア・クルブ・デ・フトボル(VCF)とパートナーシップを結び、ジェンダー・ステレオタイプを覆し、男性らしさに対する誤った認識を変える活動に共に取り組んでいます。VCFはジェンダー平等に賛同し、UN Womenの活動に対してリソースを提供してくれています。これによって、ジェンダー平等のメッセージをサッカークラブという、これまでとは異なる立場から発信してもらい、新しい方法で、サッカー選手やファンなど、これまで必ずしもUN Womenの活動になじみがなかった人々に対してジェンダー平等と女性のエンパワーメントについてのメッセージを届けることができるようになりました。これはUN Womenがスポーツクラブと初めて結んだグローバルなパートナーシップです。VCFは、スポーツにおける主要なパートナーであり、スポーツに関わる人々にジェンダー平等と女性のエンパワーメントについてのメッセージを発信してもらっているだけでなく、リソースの面でもUN Womenを支援していただいています。このパートナーシップの目的はジェンダー平等を広めることであり、そのために選手のウェアや競技場の横断幕、チームが発信するソーシャルメディアなどでUN Womenのロゴを使用していただいています。また、世界各地で特別試合やサッカー教室も開催しています。UN WomenとVCFは共にジェンダー平等に取り組んでいます。

四つ目に、大規模なスポーツイベントを活用して、2030アジェンダを後押しし、貧困と暴力のない世界をつくるというメッセージを広めることができます。

大規模なスポーツイベントには多数の人が押し寄せます。このようなイベントは、社会的、経済的な遺産を残せる可能性があります。平等や無差別という普遍的な価値を広め、人々に力を与え、根深い固定観念を打破することができます。幅広い人が多数参加し、選手がロールモデルとなって活躍するスポーツには、そういう力があります。

オートバイレースの世界で有名なキャシー・テンプルトンを思い出してみてください。1997年に彼女はこう言いました。「私はヒルクライムでAMAのプロライダーになった最初の女性です。このことで私が注目されるのは嬉しいのですが、同時に女性がプロライダーになるまで、これほどの時間が掛かったことを少し残念に思います。」

私たちも皆残念に思っています。もうこれ以上待てません。

スポーツの世界でジェンダー平等を実現することは私たちの「課題」です。一方で、大規模なスポーツイベントは、2030アジェンダに盛り込まれた価値、17の持続可能な開発目標で具体的に掲げられた価値を広める「機会」でもあります。
このように考えると、またここで、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントが持続可能な開発目標の達成に不可欠であるという事実に立ち戻ることになります。

スポーツにおけるジェンダー平等の実現は、持続可能な開発の強力なツールになります。スポーツで男女にかかわらずすべての人をエンパワーしましょう。人類と地球の持続可能な未来のために。プラネット50-50を2030年までに実現するために。
ありがとうございました。

UN WOMEN WEEKLY NEWS UPDATE(2016.2.22より)

翻訳:内堀千尋 (実務翻訳スクール.com)

Categories: News, 本部

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