SDG目標5:今のペースでは2069年まで男女同一賃金は実現不可能

  • 2017/03/18

SDG目標5:今のペースでは2069年まで男女同一賃金は実現不可能

2017年2月24日
国際労働組合総連合、共同参画部長、チディ・キング氏

 

世界的に見て、女性は同等の仕事をしてもまだ男性より23%も少ない報酬しか得られていません。国際労働組合総連合(ITUC)、共同参画部長、チディ・キング氏がこの問題について語っています。ITUCは世界中の労働者の利益を守る労働組合の国際組織です。彼女はUN Womenのメンバーでもあり、ILOの同一賃金チャンピオンです。

 

世界的に見て男女の賃金格差は23%です。この格差はなぜ生まれるのでしょう?
この格差は、我々の社会や職場にしつこくはびこる男女の不平等によくあらわれています。男性の役割は意思決定者、女性の役割は介護者と大雑把に決めている社会的・文化的規範は女性が組み込まれていく仕事の種類だけでなく、その仕事がどのように評価されて報酬につながっていくかにも大きな影響を与えています。女性が正式に労働市場に入っていくと、彼女の仕事あるいは役割は本来の「家事を切り盛りする人」の補助的なものと見られがちです。これが回りまわって女性の報酬に影響を与えているのです。女性が男性と同等あるいはそれ以上の資格を持っていても、彼女たちのスキルは男性と同じに評価されず、昇進は遅れがちです。

「男女の賃金格差をなくすには様々な手立てが必要で、その核をなすものはディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)です」

  • 男女の賃金格差を縮める最も効率的かつ手っ取り早いやり方は最低生活賃金の実現です。
  • これは社会保障によって支えられなくてはならず、この保障はあまねくフォーマル及びインフォーマル・セクターで働く労働者にいきわたらなくてはなりません。これには失業者・非正規労働者(この人たちの多くは女性)への所得保障、有給出産休暇、育児や健康と社会的ケアへの支援、病気や業務上の傷害にそなえる保険、退職後の妥当な年金などが含まれます。
  • 労働者に結社の自由、組織化して団体交渉できる権利を保証すること
  • 質の高い公的保育、高齢者へのケアサービス、家族にやさしい就業規則、男性とケアの責任を共有する方策などを提供すること
  • 社内で報酬の基準・決定を透明化することもジェンダー格差を防ぐ助けになります。

男女賃金格差の根本的な原因は女性が男性と異なる仕事に集中し、仕事の価値がジェンダーによって決まりがちなことです。「同一労働同一賃金」を実現するには、例えば男性中心の建設分野の仕事が、女性中心の育児分野の仕事と客観的に同等・同様の価値を持つという問題に取り組んでいかなくてはなりません。しかしながら女性中心の育児分野の仕事はほぼ例外なく報酬が少なくなっています。 仕事の種類によって価値を決めるやり方を変えていかなくてはなりません。そしてこれはすでにILOの「同一報酬条約(Convention 100)」によって認められているのです。

男女の賃金格差は分野によって影響を受けるのだろうか
男性中心の分野に就業する女性は女性中心の分野の女性より報酬は多いかもしれません。でも男女の賃金格差はすべての分野で根強く残っています。例えば英国では金融分野の女性マネジャーの報酬は同じ職に就く男性に比べ39.5%も低くなっています[ 1]。全体的に見て、フォーマルセクターで働く女性は狭い分野、仕事に追いやられているのが現状です。2016年のILO働く女性の動向調査によると、高所得及び高中所得国では女性の労働力は教職、看護、保健、一般事務、販売及びサービス分野に集中しています[2]。これらの分野こそ、女性が多いということだけで過小評価され、報酬が低くなっているのです。

サプライチェーン(製造業において,原材料調達・生産管理・物流・販売までを一つの連続したシステムとして捉えたもの)の中では女性が報酬が低くて不安定、しかも危険をともなう仕事につく割合が高いのです。特に農業、繊維・縫製産業でそれが顕著です。実際、世界の女性の多くは(80%に達する地域もある[3])インフォーマル経済の下で働いており、まともな報酬ももらえず、安全な労働環境もなく、医療・有給出産休暇などの社会保障にも浴しておらず、ましてや男性並みの報酬などとてももらえていません。

有色女性や疎外された女性達にとっては人種差別などの不平等が男女の賃金格差をさらに広げています。最近のカナダの調査によれば、有色女性は白人女性が1ドルを稼ぐところを68セント、黒人男性1ドル稼ぐところを79セントしか得られていません。USA, UK, 南アフリカでも同様の結果が出ています。

仕事の世界はいまだに男性が一家の稼ぎ手で、長時間労働に甘んじているというモデルで動いているのが現状です。女性は母親になると「出産・育児によるペナルティー(罰則)」を負います。家庭の責任と仕事のバランスをとるため、女性はパートタイム、臨時雇い、低賃金の仕事に就いたり、インフォーマルセクターで働かざるを得なくなるのです。妊娠すると復帰時に差別に直面し、それが解雇、ハラスメント、降格つながることもあります。子供のために休みをとることも女性のキャリア形成を遅らせます。

男女賃金格差の短期的、長期的影響は?
男女賃金の格差を含む労働市場の差別や不平等に取り組んでいかないと、すでに貧困に陥っている働く女性の数がさらに増大し、多くの女性達が老後の貧困に直面することになります。男女賃金格差が働く女性の人生に与える長期的な影響の一つは老後にもらう年金の許しがたい男女格差です。世界的に見ても極度の貧困に苦しむ高齢女性の数が増え続けていることが立証されています。

現在有給で働く女性の40%[4]は社会保障に加入していません。これには年金、母子保護保険、疾病傷害保険などが含まれます。彼女たちは国家レベルで設定されていることが多い基本的な社会保障でカバーされていないのです。賃金や年金の男女格差は、社会保障が不十分なこととも相まって、SDG(持続可能な開発目標)の達成を大幅に妨げています。SDGは①貧困・飢餓の撲滅、②ジェンダー平等とディーセントワークの達成、③老いも若きも含めたすべての人の健康と福祉の増進を求めているからです。

男女の賃金格差を埋めるにはどんなアクションが必要でしょう
男女の賃金格差を埋めるには様々な施策がありますが、中心となるのはディーセントワークです。一番早くて効果的なやり方は最低生活賃金(あるいは最低賃金)とすべての人にいきわたる社会保障を実現することです。最低生活賃金はすべての低所得者を助けます。女性は低賃金の仕事に就く人が圧倒的に多いので、これが女性の大きな助けとなるのです。例えばドイツでは、最近なかなか埋めることのできない22.4%の男女賃金格差を改善するため最低生活賃金を導入しました。

この最低生活賃金はすべての人に行き渡る社会保障によって支えられなくてはなりません。これには当然、失業者・非正規労働者(これらの多くは女性)への所得保障、有給出産休暇、育児や医療・社会的ケアへの支援、病気や業務上の傷害にそなえる保険、そしてもちろん退職後の妥当な年金などが含まれます。このような保障がインフォーマルセクターの労働者にも届くことがとても大切です。この人たちはこの社会保障から取り残されてしまうことが多く、しかも圧倒的に女性が多いのです。

労働者に結社の自由と組織を作って団体交渉できる権利を保障することも、この問題の解決には欠かせません。USAでは平均の男女賃金格差が22%であるのに対して、労働組合に加入しているとその差は11%に縮小しています[5]。UKでは組合に加入している女性の賃金は加入してない女性より平均30%高いのです[6]。

賃金格差を埋める施策には質の高い公的保育や高齢者へのケアサービス、家族にやさしい就業規則などが含まれなくてはなりません。ケアを男性と共有するよう促す施策―例えば、父親の育児休暇―は男女格差を広げるような社会規範を是正するのに有効だということが証明されています。スカンジナビア諸国はその好例で、この地域の進歩には目覚ましいものがあります。社内で報酬の基準・決定を透明化することもジェンダー格差を防ぐ助けになります。

あなたも男女平等賃金チャンピオングループのメンバーです。このイニシャティブで何ができるか考えてください。
UN WomenとILO主導の男女平等賃金連合がアクションを起こして、賃金格差解消への動きを加速してほしいものです。最近の見通しによれば、このペースで行くと格差は2069年まで埋まりません!今私たちが行動を起こさないと仕事の世界の変化、例えばオートメーションやオンデマンド・エコノミー(学生や他の仕事を持つ人がスマホのアプリなどを使って運転、配達などのサービスを提供すること)などがこの格差をさらに広げる可能性もあるのです。

男女平等賃金チャンピオンは同一労働同一賃金の原則を広め、政治的支援を高めるよう訴え、積極的に政策立案者や決定者へ働きかけることが期待されます。一緒に次のことを目指していこうではありませんか!①男女平等賃金法案の実現、②賃金体系や賃金決定メカニズムに見られるジェンダー格差を是正する施策、③賃金や付加給付の信頼できる男女別データの構築、④母親や父親による育児休暇、育児施策、最低生活賃金の改善。

Notes
[1]英国財務相、Theresa May MP and Simon Kirby MP (2016)、「主要金融サービス企業は男女の賃金格差問題に取り組む努力をしている」
https://www.gov.uk/government/news/major-financial-services-firms-step-up-efforts-to-tackle-gender-gap参照
[2]「働く女性の動向2016」
http://www.ilo.org/gender/Informationresources/Publications/WCMS_457317/lang–en/index.htmを参照
[3]インフォーマル経済で働く男女:統計による現状
http://www.ilo.org/stat/Publications/WCMS_234413/lang–en/index.htm?ssSourceSiteId=addisababaを参照

参照
[4]  [2]と同じ。
[5]女性が労働組合に加入する利点、フリーペーパー、女性政策研究所、
http://www.iwpr.org/publications/pubs/the-union-advantage-for-women#sthash.VaUwff5l.dpuf参照
[6] https://www.gov.uk/government/statistics/trade-union-statistics-2014
UKビジネス・イノベーション技能省、労働組合メンバーシップ2014:統計広報

UN WOMEN WEEKLY NEWS UPDATE(2017.2.27より)

翻訳:本田敏江(国連ウィメン日本協会理事)

Categories: News, 本部

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