チヤウパディを廃止して、ネパール農村の生理に対する烙印を消す

  • 2017/05/02

世界保健デーに寄せて

チヤウパディ[1]を廃止して、ネパール農村の生理に対する烙印を消す

 ネパールの農村では生理中の少女たちがチヤウパディと呼ばれる慣習により小屋に閉じ込められ、一人ぼっちで寒さに苦しみ、病気や動物に襲われる危険にさらされています。2005年に禁止されたこの悪習をやめさせるため、NGOである「継続的開発ネパール」(Restless Development Nepal)は国連信託基金とパートナーを組んで若者を教育し、コミュニティの生理に対する社会的通念を打ち破ろうとしています。

2017年4月6日

チヤウパディの有害な慣習について研修を受けたコミュニティリーダー、伝統的祈祷師、ボランティアのピア・エデュケーター(仲間同士で教え合う人) 写真:プシュパ・ポカレル提供。

 

カペタ・ファトゥリ[2]は生理が始まるとすぐ彼女の村の外にある人里離れた小屋、チヤウパディに追いやられ、出血が止まるまで隔離されました。この小屋で一人ぼっちにされ、家族と連絡をとることも栄養のある食事をとることもできませんでした。他の多くの女性・女児もそうですが、ファトゥリは水浴もできず、村人たちが使う水源にも近寄ることは許されませんでした。生理中の少女は穢れていると考えられていたので、学校に行くなどもってのほかでした。

 

ネパール極西部・中西部では、女性・少女のほとんどがチヤウパディと言われる有害な慣習を経験しています。チヤウパディでは女性・少女が常に寒さにさらされ、性的暴力や動物に襲われるリスクが高くなっています。地域によっては女性がチャウパディで出産することを強いられ、このように危険な状況で2週間も過ごさなくてはならないこともあります。この隔離によって母親と子どもの健康や日常生活が損なわれるのは言うまでもありません。

 

ネパールの最高裁判所は、2005年にチャウパディを禁止し、2010年にはジェンダーに根差す暴力根絶のための国家行動計画において、それを有害な慣習であり、女性に対する暴力であると規定したにもかかわらず、社会通念や無理解によってチャウパディはいまだに続いています。

若者クラブのリーダーシップ研修で有害なチャウパディについて話し合っている様子。 写真:継続的開発ネパール提供。

 

継続的開発ネパールは、個々人の衛生や性と生殖に関する健康の問題をきっかけにして、極西部・中西部の4地域でチャウパディをなくす活動に取り組んでいます。このプログラムはUN Womenの女性に対する暴力根絶国連信託基金からの支援を受け、若者をピア・エデュケーターとしてともに活動し、コミュニティ、伝統的祈祷師、自治体、地域組織に対して教育や支援を提供しています。わずか2年の間にこのプログラムによって131人のピア・エデュケーターが研修を受け、その活動は20,000人以上の少女・女性、15,000人以上の少年・男性に及びました。このプログラム実施以前は、少女・女性の約20%が生理中はチャウパディで過ごしましたが、現在はその割合は5%に下がっています。

 

カイラリ郡の母親グループのメンバーであるダニ・マヤツは言いました。「私たちのほとんどはずっと生理に関する根拠の薄い社会通念に従ってきました。生理中にはミルク、カード(凝乳)、その他の乳製品を避け、チャウパディで暮らしました。ピア・エデュケーターからそれが全くの間違いであることを学びました」彼女は続けました。「今では私たちのほとんどが生理中でも自宅で過ごし、栄養のあるものや乳製品を食べています。私たちのコミュニティではチャウバディの慣習は徐々になくなりつつあります」

小学校の先生であるブランサ・ジシもこう言っています。「プロジェクトが学校やコミュニティで実施されてから、少し変化が出てきました。プロジェクトはこれからもコミュニティ、学校で続けていくべきだと思います。行動パターンや考え方に変化を起こすのは時間がかかるからです」

ドティ郡においてピア・エデュケーターが生理、生理中の衛生、社会通念となっているチャウパディ、及び生理中の他の形の差別について話しているところ。写真:ルパ・ジョシ提供。

 

伝統的祈祷師も多くがチャウパディに関する考え方を変え始めています.伝統的祈祷師はコミュニティでの影響力が強いので、これは重要な変化と言えます。若者はこの慣習をなくすため、もっと多くのコミュニティの支援が必要だと言っています。このプログラムに参加しているラティ・ナタという伝統的祈祷師は言っています。「研修に参加してからは、妻に生理期間中も家にいて、規則的に水浴し、栄養のあるものを食べるように言っています。妻はこれに従っていますが、何も恐ろしいことは起こっていません。そこで私の家での経験から、生理中の差別はむしろ悪い結果を生むのだということを近所の人たちに対して説得しています」

 

継続的開発ネパールは、若者が中心となって活動している団体で、性と生殖に関する健康やジェンダーに根差す暴力についての教育を仲間同士でピアプログラムとして立ち上げ、学校内外の若者に提供しています。UN Womenの女性に対する暴力根絶国連信託基金は、2015年以来チャウパディの慣習をなくそうとしている彼らのプログラムを支援してきました。

 

UN WOMEN WEEKLY NEWS UPDATE(2017.4.10より)

 

翻訳:本田敏江(国連ウィメン日本協会理事)

監修:田中由美子(国連ウィメン日本協会理事)

 

 

[1] チャウパティとは、生理、出産を「穢れ」と考えて、女性が一定の期間、通常とは違う場所に住まわされる習慣、および隔離された小屋を意味します。ヒンドゥー教は、血の穢れをとても嫌い、生理中・出産時は火を別にする(別火)など、大きな問題となっています。日本でも「月小屋」「忌屋」「別屋」「産屋」「不浄小屋」などと呼ばれ、1900年ごろから徐々にすたれてきたとは言え、昭和の初めころまで女性を隔離する慣習が残っていました(参考:宮本常一『女の民俗誌』岩波現代文庫、『縮刷版 日本民俗事典』弘文堂)。世界には、現在でもこのような慣習が続いている地域があり、女性の権利(安全・安心して住む権利、栄養を摂る権利、教育を受ける権利など)が侵害されています。

[2]個人のプライバシーを守るため、本文における全ての個人名や場所の名称は変えてあります。

Categories: News, 本部

Comments are closed.