女性を前面に、女性を中心に! プムズィレ・ムランボ=ヌクカUN Women事務局長のCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)に関するメッセージ(抄訳)

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2020年3月31日

2020年3月20日

COVID-19(新型コロナウイルス感染症)パンデミックのせいで、株式市場は暴落、学校や大学は閉鎖、人々は買いだめに走り、家庭は今までになく込み合った状態にあります。その中ではっきり見えてきたことは、これは単なる健康問題ではないということです。これは我々の社会や経済に大きなショックを与え、女性が低賃金で様々な役割を担うことで動いている公共・民間機能の欠陥を如実に露呈しました。

子供たちは学校に行けず、母親は家で仕事をしながら「先生」や「ケアワーカー」の任務も担っています。8500万人に及ぶ移民女性家事労働者は不安定な契約で働いている場合が多く、彼女たちの賃金低下は国に残してきた扶養家族の生活も脅かしています。二人の子供を育てている韓国の専門職にある女性は、仕事には戻りたいけれど自分より高い報酬を得ている配偶者の仕事を優先するため、仕事をあきらめなくてはならないというジレンマに直面していると述べています。多くの国で学校が閉鎖される中、このような問題に向き合っていかなくてはない母親は増え、その悪影響も蓄積しています。

3月中旬までに166ヵ国で207,855人の感染が確認されています。しかしながら性別によるデータがないため実際に女性・男性にどのような影響を与えたについては、その一部しか知ることができません。状況がどうなっているのか、例えば感染の男女差、経済的影響やケアの負担の違い、DV・性的虐待の発生率などを把握するためには、男女別に分けたデータがもっと必要です。

しかしこのようなデータがなくても過去の大規模感染症蔓延の経験から、対応のどこに問題があって何がうまく機能したかを見つけ出し、前向きに動いていかなくてはなりません。政府やビジネス界が収入保障を導入すればジレンマは緩和され、収入が保障されるので家庭が貧困に陥ることも避けられます。対応策には、多くの女性が家計を助けるために担っている非正規労働を含めなくてはなりません。このような社会保障は特に女性に向けられるのが望ましいのです。

世界的に見て女性は保健・福祉分野の最前線で働く労働者の70%を占めています。例えば看護師、助産師、清掃作業員、洗濯作業員などです。COVID-19が女性の健康や経済に及ぼす影響を緩和する戦略が必要です。なぜならこれが女性のレジリエンス(復元力)を助けたり構築したりするからです。そしてこのような対応策をより適切なものにするには女性がその策定に密にかかわらなくてはなりません。具体的には助成を受けられる優先順位を決めたり、長期的解決を探る上でのパートナーを選択すること、などです。

私たちは中国のパンデミックから多くのことを学んでいます。そこで活動しているUN Womenのチームをとても誇りに思っています。チームはジェンダーに配慮した情報にアクセスできるよう配慮し、妊産婦や安全な出産をサポートするUNFPAと協働しています。我々はまた世界中の女性団体とも協働しています。例えばコックスバザールで暮らすロヒンギャ難民(バングラデシュ)は特に隔離された環境にあり、重要な情報が届いていません。ここでは女性達がネットワークを立ち上げ、女性・少女に感染をどのように防ぐかを教育しています。

公共部門も民間部門も同じ努力を続けていますが、先進国、開発途上国に有効な医療体制を素早く築き上げるには横の連携、特に人を中心にしたアプローチをとる必要があります。何よりも女性を意識して前面に出し、中心に据えようとする努力が欠かせません。例えば、家庭で介護・育児に携わる人に適切な個人用保護具を手に入れやすくしたり、柔軟な働き方を導入したり生理衛生用品の供給を確実にするなどして仕事をしやすくすることです。ロックダウン(都市封鎖)されたり隔離された地域ではこの必要性がさらに高まります。またジェンダーに根差す暴力はこのような状況でさらに深刻になりますが、必要な配慮が届いていません。

女性に対する暴力はすでに例外なくすべての社会でまん延しています。毎日平均137人の女性が自分の家族によって殺されています。世帯に安全・健康・金銭の心配があったり、狭いところに閉じ込められたりするストレスがたまるとDVや性的虐待のレベルが上がることが知られています。この現象は混雑した難民キャンプに暮らす移民によく見られます。また他人と距離を保つことを奨励している国ではDVが3倍に増えたという報告もあります。

インターネット上ではサイバー暴力も日常茶飯事となっています。行動が制限されるにつれてオンラインゲームやチャットルームが増えていきます。この分野も少女を守るために警戒を強める必要があります。中国ではハッシュタグ、#AntiDomesticViolenceDuringEpidemicが立ち上がり、暴力をロックダウン中のリスクととらえるのを助けています。

COVID-19は女性の人生の様々な局面で長年はびこっている不平等を改めるために徹底したアクションを取れる良いチャンスでもあります。ただ耐えるだけでなく、立ち直って前に進んでいく余地があるのです。政府や民間部門を含むすべてのサービス提供者にお願いします。COVID-19はまたとないチャンスです。今までにないような、ジェンダーの視点をしっかり入れた対応策を取って下さい。支援チームにジェンダーの知見を積極的に取り入れてもらい、対応策にジェンダーの側面を加味することです。例えば暴力を振るう配偶者などから逃げる必要のある女性達のためのシェルターへの支援金を増やす、不安定な契約で女性を雇う小売部門、接客業、小企業への経済支援や救済策を実現すること、などを目指してください。

これらの実現には基金が必要です。COVID-19への支援を提供している組織がその対応策にジェンダーの視点を入れ、「誰も取り残さない」ためには資金が必要です。支援策を維持して、元の状態を取り戻さなくてはなりません。これらの組織はどれも潤沢な資金を持っているわけではありません。ドナーはぜひこれを実現するための資金を支援策に加えてください。

今は国家及び個人の価値観や社会全体のための連帯の強さを再確認する時です。今こそより良い、より強い、よりレジリエントでかつ平等な社会を創り上げるまたとないチャンスです。大胆に優先順位をつける時です。さあ、世界中の女性に安心と希望を届けるために、復活を遂げた未来を見据えて前に進んでいきましょう!

カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会

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