移住女性に関する5つのよくある誤解
有害な固定観念がもたらす影響と求められる変化
2025年12月15日付

移住は、越境した人数、移住にかかる費用、移住者がどれほど経済に貢献しているかなど、数字で語られることがよくあります。しかしながら、それぞれの統計データの背後には、勇気、大志、レジリエンスに突き動かされて移住した人の旅が存在します。
世界全体の海外移住者3億400万人の半数近くが女性で、海外移住者による世界の労働力の38.7%を占めています。移住女性の多くは家事労働やケア労働に従事してケア経済を支えており、そのシステムのおかげで家庭や地域社会、経済が上手くまわっています。
ところが、移住女性は多大な貢献をしているにも関わらず、固定観念の枠にはめられ、結局はそれに基づいて処遇を決められることがあまりにも多すぎます。移住女性を被害者に仕立てたり、脅威として非難したり、安い労働力としての価値しかないとみなしたりするような考えは、正確さに欠けるばかりか危険です。そうした考えが差別を強め、政策決定に影響を与え、排除を正当化し、移住女性、特に社会から最も取り残されている女性の多くを暴力にさらす危険性を高めます。
移住女性が直面する5つのよくある誤解とその背後にある現実を以下に述べます。

写真:ジュアン・ルーカス・ガラク(パオラ・サイメントさん提供)
ウィメン・イン・ミグレーション・ネットワークのパオラ・サイメントさん
「移住女性を被害者という狭いストーリーの中に閉じ込めるのは大変不当です。女性たちが直面する実際の困難や脆弱性を決して無視してはいけませんが、私たちが選ぶのは、レジリエンス、機知、リーダーシップなど、あらゆる側面からストーリーを語ることです。移住女性は単に状況に流されているのではなく、主体的に変化を進めており、複雑なシステムをうまく切り抜けながら、新たな人生を築き、自分たちが参加する社会を力強く形作っています」。
1つ目の誤解:移住女性は被害者
この言葉は同情的に聞こえるかもしれませんが、移住女性の力を奪いかねません。このように表現すると、移住女性を無力で受け身で依存性があるとみなすことはあっても、自らの機会を模索する、有能で力のある個人とみなすことは、まずありません。
こうしたレンズを通して、移動する女性はしばしば次のように描かれます。
- 本質的に脆弱で、助けが必要な者
- 援助を受動的に受ける者
- 人身取引や暴力の被害者
- 夫についていくためだけに移住する「従属妻」
このように移住女性を被害者という枠に当てはめ、苦しみと従属のみを描くと、移住女性に対する地域社会の認識や政府、メディアの描き方が狭まります。
しかし、世界各地の移住女性は、特殊かつ困難な状況の下で組織を作り、コミュニティを形成し、家族を支えています。例えばエチオピアでUN Womenが行った調査では、5人に1人の移住女性が移住期間にジェンダーに基づく暴力を経験していましたが、その後、多くの人が安全な移住を求める地域社会の擁護者になっています。

知っていましたか?
2022年、オランダ当局は偏ったアルゴリズムを使用し、「外国人と思われる名前」、特にモロッコ、スリナム、トルコ出身と思われる姓を持つ若いシングルマザーは育児手当詐欺を行う危険性が大変高いと、誤ってプロファイリングしました。
後に政府は、欧州議会でこの醜聞を認め、固定観念がどのように公共制度に入り込んでいくのかが明らかになりました。
2つ目の誤解:移住女性は社会の荷物
この有害な考えは、人種差別、性差別、外国人嫌悪、排除を助長します。そして、移住女性、特に人種を理由に社会から疎外されている女性や子どものいる女性を、国家資源を浪費する者、あるいは非生産的な社会の構成員だとみなします。
よくある思い込みには次のようなものがあります。
- 移住女性の子どもたちが、将来、国の文化を変えたり薄れさせたりするのではないかと懸念し、女性たちの出産能力を、国家のアイデンティティに対する脅威であるかのように述べる。
- 移住女性が福祉制度を浪費し乱用する、または制度に貢献していないと非難する。
- 移住女性を統合される意志のない者、もしくは統合できない者として位置づける。
こうした固定観念は、「福祉排外主義」の考え方、つまり、公共の利益はいわゆる「本当の」国民のために留保されるべきだという信念を強めるものです。たとえ移住者が移住した国に何年も住んでいるとしても、合法的な身分を持っているとしても、あるいは市民権を証明できないとしても、このような考えが移住者を排除することはよくあります。現実的には、多くの移住女性が育児や医療といった基本的なサービスを受けられないということです。

知っていましたか?
南アフリカ共和国で行われた調査では、地元の女性が移住女性に対して嫉妬や不信感を抱くことが多いと判明しました。サービスや仕事へのアクセスに対する嫉妬や不信感だけなく、移住女性の主体性やより良い生活を築こうとする決意に対するものもあります。
このように敵意をもたれることで、移住女性は職を探したり、事業をはじめたり、地域社会に定住する際に、不当な扱いを受けていました。
3つ目の誤解:移住女性は労働力不足の安価な解決策として、経済に良い影響を与える
一見すると、この考えは良いことのように思われるかもしれません。ですが、これは移住女性を権利の保有者もしくは経済への平等な参加者とみなすのではなく、生産性だけで評価するものです。移住女性が安価で搾取可能な労働力や技術不足を補うために来るなら歓迎するものの、それに当てはまらなくなれば追い払うという考え方です。
移住賛成論の主流は経済的な観点からの主張ですが、その主張は
- 生産性と仕送りに焦点を当てています。
- 移住女性の権利、幸福、尊厳を無視しています。
- 移住女性に「生産性がある限り歓迎する」と、条件付きで受け入れようとします。
ケア労働や家事労働を移住女性に頼る経済は多いですが、このような労働に従事する者は概して十分な給料が支払われず、病気休暇、年金、医療保険といった社会保障の対象から外されます。
移住女性が健康の問題や年齢、育児などで経済に貢献できなくなると、かつては喜んで受け入れてくれた社会が女性たちを再び荷物として扱います。移住女性を経済生産性というレンズを通してのみ認めることによって、私たちは彼女たちを人権やニーズ、可能性、夢を持つ人間としてではなく、搾取できる資源として扱う危険を冒しています。

知っていましたか?
フィリピンでは、移住女性を母国に仕送りをしてくれる「国のヒーロー」として褒め称えることがよくあります。しかしながら、こうした称賛の裏には、移住女性とその家族が何年もずっと離れて暮らすことや、家族を呼び寄せる政策がないことなど、別離という個人の多大な犠牲が隠されています。
多くの移住女性が海外で搾取的な状況に耐えていますが、その貢献は純粋に経済的な観点からしか評価されていません。
4つ目の誤解:移住女性はふしだら
性差別と人種差別の固定観念が交差して、移住女性、特にある特定の地域出身の移住女性を性的に扱うケースがよくあります。一部の国では、移住女性は「道徳的に逸脱している」、あるいはその土地の家族の価値観や文化的規範を脅かすと、誤った見方をされています。
こうした言葉は
- 特定の移住女性を過度に性的に描いています。
- 移住女性を性労働や不法行為と結びつけています。
- 移住女性を文化的な規律を脅かすよそ者と位置付けています。

知っていましたか?
さまざまな地域の調査から、性的な固定観念によって移住女性に対する態度がいかに形成されているのかがわかりました。
例えば、
・中南米のある地域に移住したベネズエラ人女性は「夫を盗む」と非難されました。
・ロシアやウクライナ出身の移住女性は、性労働に結び付けたり、現地での結婚を脅かしたりするような固定観念に直面しています。
・エチオピアでは、帰国した女性、特に子どもを連れて戻った女性が「不道徳」と判断されることがありました。
このような例が、すべての地域で見られるすべての態度を代表しているわけではありませんが、固定観念がいかに女性を孤立させ、さらなる危害にさらす可能性があるのかがわかります。
5つ目の誤解:移住女性は悪い母親もしくは自己中心的な母親
移住した母親が、電話や仕送り、オンラインコミュニケーションなどで遠く離れた場所から子どもの通学、健康、精神的な安定を見守り、面倒を見続けることはよくあります。このように「離れた場所にいながら母親の役割を果たすこと」で家族は支えられますが、母親にも子どもにも大変大きな精神的負担を強いることになります。
移住した母親が直面する、よくある固定観念は次のようなものです。
- たとえ母親の稼ぎで家族を養っているとしても、子どもを置きざりにして育児を放棄していると見られる。
- 子どもと一緒にいることよりも経済的な支援を重視する悪い母親だというレッテルを貼られる。

知っていましたか?
世界では、ケア労働者のほぼ3人に1人が移住女性で、その多くが家族や経済を支えるのに不可欠な仕事をしています。移住した母親は、世界中でケア経済を支えているにも関わらず、称賛されるどころか厳しく非難されることがよくあります。
母親たちの経済的貢献は想定されたものであり、褒められることはありません。そして、遠く離れることが家族を支える唯一の手段だとしても、育児放棄していると、今なお非難されています。
「良い」「悪い」の言及を越えて
移住女性は常に、「悪者、被害者、脅威」もしくは「経済の救世主」という2つの役割に押し込められています。いずれの例えも、移住女性たちの人生を形作る不平等の中でもとりわけジェンダー、階級、人種、移住者の地位が公差する不平等を無視しています。
誰もが安全で公平な移住システムを構築するために、私たちは移住女性と女性たちに影響を与える政策についての話し合い方を変えていかなければなりません。つまり、移住女性が日々発揮している強さ、主体性、決心、貢献を称え、移住のあらゆる段階において移住女性が確実に権利と尊厳を保てるよう行動するのです。
あなたにできること
- 移住女性に関する誤解ではなく、女性のあるがままの姿を見ましょう。
移住女性は、自分たちに投影された固定観念ではなく、希望、大志、そして自分と家族がより良い生活を送れるようにという願いから決断をしています。
- 移住女性の貢献を認め、評価しましょう。
移住女性は家庭、地域社会、経済全体を支えているにもかかわらず、安全や機会をはばむ、存続し続ける障壁に直面しています。
- 移住女性が直面する偏見に挑みましょう。
有害な固定観念、人種差別、性差別、外国人嫌悪は日常生活や法律に現れます。これに声を上げ、壊さなければなりません。
- 移住女性が築いている生活を支援しましょう。
移住女性は技術、言語、豊かな文化、新しい見方をもたらし、彼女たちが参加するあらゆる社会を強くします。
誤解を耳にしたら、指摘しましょう。移住しても、権利は故国に置き去りにされるものではないからです。
(原文)
https://www.unwomen.org/en/articles/explainer/debunking-five-common-myths-about-migrant-women
(翻訳者:本多千代美)
※ 翻訳者の方々が、ボランティアでUN Womenの記事を翻訳してくださっています。
長年のご協力に感謝申し上げます。
