インタビュー:ウクライナの女性たちは アートを通して紛争下の性暴力と向き合っている
2025年6月19日付
6月19日の「紛争下の性暴力根絶のための国際デー」を迎えるにあたり、UN Womenは2人のウクライナ人女性アーティストに、自らの体験、そしてレジリエンス(強じん性)の表現としてのアートについてお話を伺いました。ダリア・ジメンコさんは、監禁中や占領下の性暴力のサバイバーである女性たちが団結してできたNGO「SEMAウクライナ」のメンバーです。オレクサンドラ・ズボロフスカさんは写真家で、ウクライナ女性写真家協会のメンバーです。2人は、紛争下の性暴力など、極めて個人的でありながら社会と深く関わるテーマを探求する創造的なアートプロジェクトに共同で取り組んでいます。
「ズボロフスカさんと出会ったのは1年ほど前です。その頃、占領下での自分の体験をテーマにした展覧会の構想を練っていて、写真家を探していました」とジメンコさんは振り返ります。「ズボロフスカさんが引き受けてくれたのは意外でした。これは難しいテーマで、他人のトラウマ体験に向き合うことは、誰にでもできることではないからです」。

写真提供:オレクサンドラ・ズボロフスカ
ウクライナでのサバイバル物語
2022年、ジメンコさんとその家族が暮らしていたキーウの村がロシア軍に占領されました。
ロシアの軍用車両が村内を走行する音を聞いたとき、ジメンコさんは自分の身に迫る危険を悟り、暗たんたる気持になりました。
機関銃を持った兵士たちが村を包囲し、毎日のように砲撃が続く中、生き延びるための闘いが始まりました。誰もが絶え間ない死の恐怖の中で暮らしていました。
ジメンコさんは、まるで自分の意識が身体から抜け出して元に戻れなくなったかのような、非現実的な離脱感を味わっていました。写真家のズボロフスカさんは、この時のジメンコさんの感情や心理状態を驚くほど的確にカメラで捉えています。

写真提供:オレクサンドラ・ズボロフスカ
「ズボロフスカさんの繊細さ、精神力、試みに対する前向きな姿勢に感銘を受けました」とジメンコさん。「話もたくさんしました。おそらくそれが一番大切なことだったかもしれません」。
2024年から、ジメンコさんとズボロフスカさんは、紛争関連性暴力(CRSV)に対する人々の認識を高めるために新しい創造的プロジェクトに取り組んでいます。ズボロフスカさんは、ジメンコさんが占領下で暮らしていた家を訪れ、当時彼女が描いた絵を見て、自分の感受性を総動員してジメンコさんの経験を生々しく写真で表現しました。
2人は、視覚的な媒体を通じて、拷問や虐待を生き延びることのできなかった女性たちも含め、すべての女性被害者とサバイバーの声を紹介しようとしたのです。

ウクライナで起こった紛争関連性暴力(CRSV)に光を当てる
2023年、国連は世界各地で発生した3,688件のCRSVについて報告していますが、前年比で50%増という驚異的な数字でした。
国連ウクライナ事務所の記錄によると、2022年2月から2024年12月までの間に、ウクライナでは、男性302人、女性119人、少女10人、少年2人に対する、強姦、性器の切断または性器への暴力、強制的に裸にする、脅迫、強姦未遂などのCRSVが433件発生しています。周囲からの偏見や恐怖、今なお続く不安感のために被害者が通報しないことも多いため、実際の件数はこれよりはるかに多いと考えられます。
「性暴力は戦争の武器です」とズボロフスカさんは言います。「それに対し声を上げようと決意したジメンコさんを支えるのは、当然のことです」。

「占領された地域で今、どんな恐ろしいことが行われているのか。私たちには推測することしかできません。ジメンコさんの勇気とその物語は、他の被害者に声を上げる強さを与えることでしょう」
—オレクサンドラ・ズボロフスカ、写真家
アートを通した抵抗と癒し
2人は最近、10人の女性イノベーターと10人のアーティストを集め、創造的なアート表現を通じてグローバルな課題を探求する「セレンディピタス・イベント」アートプロジェクトに参加しました。このプロジェクトは、NGO「ポートオブカルチャー」が主催し、UN Women、国連人口基金(UNFPA)、ウクライナのビジネス、文化、社会政治生活の中心拠点であるウクライナ・ハウスとの提携で行われました。
「このプロジェクトに参加したことで、たくさんの著名な女性アーティスト、科学者、指導者と出会って交流することができ、とても意義深い経験になりました」とジメンコさん。
「ウクライナでCRSVの被害にあった人の数について、信頼できるデータは今のところありません」とズボロフスカさんは指摘します。「占領された地域で今、どんな恐ろしいことが行われているのか。私たちには推測することしかできません。ジメンコさんの勇気とその物語は、他の被害者に声を上げる強さを与えることでしょう」。
「創造的なアートは私自身のトラウマを癒す助けにもなっています。アートは自己表現と内省の1つの形態で、それによって何が起こったのかをより深いレベルで理解できるようになります」とジメンコさんは語ります。
このストーリーは、国連機関間プロジェクト「紛争関連性暴力(CRSV)のサバイバーを支援するための共同行動」の一環として、国連人口基金(UNFPA)、国連薬物犯罪事務所(UNODC)、国連開発計画(UNDP)、世界保健機関(WHO)、UN Women、国際移住機関(IOM)が実施する国連紛争下の性暴力対策ネットワークの支援を受け、ジェンダー政策担当政府代表(国際技術支援の受益者)および欧州・欧州大西洋統合担当副首相府の協力のもとに作成されたものです。
この記事は2025年6月17日に公開され、その後最新のデータに更新されました。
(翻訳者:松本香代子)
※ 翻訳者さんたちが、ボランティアでUN Womenの記事を翻訳してくださっています。長年のご協力に感謝申し上げます。