ガザの現実(UN Women人道支援活動部長からの報告)
2025年11月25日
パレ・デ・ナシオン(ジュネーブ)でのメディアブリーフィング
以下は、UN Womenソフィア・カルトルプ人道支援活動部長がガザから帰国後、ジュネーブのパレ・ド・ナシオンで行われたメディアへのブリーフィングの要約です。
私はガザから戻ったばかりです。
現地のUN Women(国連女性機関)チームと共に、ガザ地区の北端ジャバリアから南端アル・マワシまで全域を訪問して回りました。
私たちはこれまでにもガザの映像を画面越しに見てきましたが、それは現実をまったく伝えきれていません。
町全体や地域が瓦礫と化しています。かつて家へと通じていた道は今や廃墟へと続いています。私たちが訪れたあらゆる場所で、女性たちと出会いました――避難所と化した学校で、安全な場所と化したテントで、自らの家の廃墟の中で。
私はガザの女性ではありません。だから彼女たちの痛みを理解していると主張することはできません。でも今日、私は彼女たちの声をここで、皆さんのもとに届けられます。
ガザで“女性として生きる”ということは、飢えと恐怖に向き合い、心の傷と深い悲しみを抱えながら、子どもたちを銃声や凍える夜から守り続けることを意味しています。そこに安全という概念が消えた今、女性は最後の砦にならざるをえないのです。
停戦の中で生き延びても、平和に生きているわけではありません―これが現実なのです。ガザの女性たちは繰り返し私に言いました。停戦はあっても、戦争は終わっていないと。攻撃は減りましたが、殺戮は続いています。
女性たちは、軍事的な戦争だけでなく、心への攻撃とも言える“心理の戦い”にも耐え抜いたのだと語ってくれました。彼女たちによれば、後者の方がさらに過酷だといいます。私が会った女性たちは皆、少なくとも二人の近親者——子供、兄弟姉妹、両親——を失っていました。
私たちがガザに到着したのは、激しい雨と寒さが続いた週末の直後でした。女性たちは、水浸しの仮設テントの中で子供たちが夜通し震えながら眠る様子を話してくれました。これが今日のガザで女性であることの現実です。冬が来ることを知りながら、子供たちをその寒さから守ることさえできないのです。
女性たちはまた、数えきれないほど避難を繰り返してきたとも話してくれました。移動のたびにわずかな持ち物をまとめ、子供や高齢の親を背負い、危険な場所から別の危険な場所へと移らねばならなかったのです。ある女性は戦争中に35回も避難したと言っていました。
今、ガザで女性でいることは、生きるか死ぬかの大事な決断を、ひとりでしなければならないということです。5万7千人以上の女性が世帯主となり、不可能に近い状況で再建に果敢に立ち向かっています。停戦後も食料は依然として不足し、価格は4倍に跳ね上がり、収入のない女性たちには完全に手の届かないものとなっています。
自宅が破壊されたある女性は、毎朝、瓦礫の山に戻り薪を集め、かつて家族を守った扉を燃やして、子供たちの朝食を作っています。これが今日のガザで女性であることの現実なのです。
終わらない爆撃によって、あまり語られない新しい問題が生まれました。ガザのどこを見ても目に入る、戦争で新たに障がいを負った女性や少女たちの問題です。今日、1万2千人以上の女性と少女が、2年前にはなかった長期的な戦争による障がいを抱えて生きています。
私が会った13歳の少女は、爆撃で父親と4人の兄弟を失い、自分の片足を失いました。車椅子を手に入れるのに数か月も待ったそうです。彼女の人生、未来、これまで送ってきた当たり前の生活の全てが、戦争によって打ち砕かれてしまいました。これもまた、今日のガザで女性や少女であることの現実です。
各地で女性たちは口を揃えて訴えました。停戦が維持されること。食糧が必要だということ。現金支援が必要だということ。防寒物資、医療サービス、そして心理社会的支援が不可欠だということ。仕事と正義と尊厳、そして自分たちの権利の回復を求めています。子供たちを学校に戻してほしいと願っています。
でも、ガザの女性たちの話には、生き延びたいという以上のこころざしがありました。
どこでも、女性たちは働きたい、リーダーとして関わりたい、自分の手でガザを再建したい、と語っていました。彼女たちは本気です。
家が壊れて家族ががれきの下に埋まっているその場所の向かいで、私は一人の女性に会いました。彼女は、地域の誰でもが使えるかまどを開き、少しのお金をもらって人々のために食べ物を作っていました。戦争が始まる前までは確かにあった暮らしの名残をじっと見つめながら…
ガザの女性たちが、自分たちの生活や町をもう一度作り直そうとする強い気持ちと力を持っていることを、これほどはっきり示す例はありません。今こそ、彼女たちのリーダーとしての力や困難に立ち向かう姿勢を応援し、支援することが大切です。
まさにこれがUN Womenの使命です。今日、ガザの女性たちを支えることで、明日、彼女たちがガザの復興をリードしていけるようにするのです。
UN Womenは10年以上ガザで活動してきました。どのような危機がおそってきても、その中で女性や少女たちと共に立ち、女性主導の市民社会と手を携え、彼女たちのリーダーシップとレジリエンスに投資してきました。
今日のガザで女性であるということがどんなことかを知れば、私たちは誰もが行動せずにはいられなくなるはずです。女性や少女が、生き延びるためにこれほどまでに苦労しなければならない状況はあってはなりません。
もっと多くの支援物資が、計画的かつ安全にガザに届くようにする必要があります。殺戮も止めなければなりません。なにより停戦を維持しなければなりません。そして、すべての女性と少女、すべての人々のための平和が必要です。
今日のガザで女性であるということは、勇気と疲れた手だけを頼りに、生きることと失うことの境目で踏ん張り続けることです。もしそれがガザの女性の現実なら、世界はもう一日たりとも目をそらすことはできないはずです。
