ニュース

> ニュース一覧 > 【15のストーリーNo.10】ローカルな市場から始まる大変革
活動現場から

【15のストーリーNo.10】ローカルな市場から始まる大変革

ローカルな市場から始まる大変革

太平洋の島々で市場の女性たちが気づいたこと〜

フィジー、サモア、ソロモン諸島をはじめとする太平洋地域の島国には、古くから多様な農産物や魚介類、工芸品を売る市場があります。商いを担ってきたのは女性たちです。家族や地域の食卓に新鮮な食料を届け、地域経済を支えています。それなのに、市場の女性たちは社会的に不利な立場に置かれ、厳しい環境の中で懸命に生計を立ててきました。

ソロモン諸島のギゾ市場(2018年)。単なる商いの場から女性のエンパワーメントの拠点へ。写真: UN Women/ Andrew Plant 

太平洋の島々で市場の女性たちが直面する特有の課題

農村部に暮らす女性たちは、やることがたくさん!野菜の栽培や手工芸品作りに長い時間を費やしたあと、さらに時間と労力をかけて、遠く離れた町や都市まで商品を運ばなければなりません。市場の使用料は高く、トイレの利用にもお金がかかるため、手元に残る収入はごく僅かになることもあります。管理が行き届かず混雑した市場では、商品の窃盗やセクシャル・ハラスメントなど安全上のリスクも少なくありません。

こうした問題に対処しようにも、市場の女性たちは運営について発言権を持っていませんでしたし、市場を監督する立場の自治体も女性特有の課題への理解は乏しいものでした。だから劣悪な環境に耐えるしかなく、「自分たちには状況を変える力がない」と思い込まされてきたのです。


■「私たちは取るに足らない存在なんかじゃなくて、重要な存在なの。ただ、そういう風に考えてみたことがなかっただけ。」

◇ジャネット・ラモさん | ソロモン諸島・アウキ市場出店者協会 元会長

ジャネット(左)と妹のナオミ(右)。写真: UN Women/ Caitlin Clifford

ジャネットはソロモン諸島のアウキ市場で市場出店者協会の会長を務めていました。「女性たちが初めて集まって意見交換をしたとき、組織化の重要性に気づいたの」と彼女は振り返ります。「それまでは市場の管理者が女性出店者の声に耳を傾けることなんてほとんどなかったのに、状況が変わり始めたんです。女性たちは市場の使用料について疑問を呈し、やがてお金を貯めて、自分たちの事業を拡大できるようになりました。」彼女は、団結し、集団で行動することで女性が力を獲得し、その力が周りの人々の意識を変え、さらには女性たちの人生を変えていくのを目の当たりにしてきたと、誇りに満ちた声で話してくれました。

■「研修で学んだことを実践したら、たくさん売れるようになったの!」

◇ジョイ・フランクさん|ソロモン諸島・アウキ市場出店者

ジャネットと同じアウキ市場で商いをするジョイは、毎朝5時に起きて、雨の日も晴れの日も丸木舟を漕いで浅瀬を渡り、市場へと向かいます。魚や家庭菜園で育てた野菜を中心に、手に入るものは何でも売って家族を支えています。

ジョイも、「マーケット・フォー・チェンジ・プログラム」に参加して、食品衛生と安全に関する研修を受けました。商品の腐敗を防げばより多く販売できることを学んだジョイの仕事にも変化が生まれました。「食品の適切な取扱いを実践するだけで、売り上げが伸びたの!」それは、家族を支えるジョイにとって、とても大きな変化でした。

ジャネットもジョイも、以前は自分たちを「何も持たないただの女性」だと考えていました。でも今では、自分たちが市場を支える重要な担い手であり、地域社会に欠かせない存在であると胸を張って言えるようになっています。

※『マーケット・フォー・チェンジ・プログラム』とは?
UN Womenが2014年にフィジー、サモア、ソロモン諸島、バヌアツの4カ国で始めた取組み。26の市場を対象に5万500人と協働。出店者協会の設立や強化を支援し、市場の女性が団結し、声を上げ、リーダーシップを発揮できるよう後押ししてきました。

市場から広がる変革の波

「マーケット・フォー・チェンジ・プログラム」は、女性たちの収入向上にとどまらず、安全な市場の整備、自治体との対話、さらには地域全体の意識変革へとつながっています。この支援を受けたすべての市場で、出店者協会は市場の女性と自治体をつなぐ窓口として機能するようになっています。女性たちは自らの権利を知り、自信を持って意見を言えるようになりました。

出店者協会は、換気や照明の改善、生鮮食品を保管する冷蔵設備の導入、近代的なトイレの整備などを実現してきました。フェンスや防犯カメラの設置によって、盗難やハラスメントのリスクも大きく減りました。市場は安全で清潔で、女性にとって収入を増やせる場所へと変わりつつあります。

安心して休める場所、成長のための空間

「わずか2ドルで泊まれるのよ」と語るのはアテカ・リガタブアさん。「以前は、午後に村へ戻るために、急いで商品を売らなければならなかったの。その頃は利益なんて出せず、なんとかその日に帰って、また翌日来る分の交通費だけを稼ごうと、安くてもいいからとにかく売っていたのよ」。

フィジーの宿泊施設。写真:UN Women/ Mouna Peters

宿泊施設が作られたことは特に大きな改善です。市場まで、舟や未舗装の道路を使って最長7時間も移動しなければならない女性も少なくありません。往復の交通費も高額でした。そして長年、深刻な問題だったのが夜を過ごす場所でした。市場の地面で寝る―それが唯一の選択肢でした。

そこで出店者協会は自治体と連携し、フィジーの10の市場に、安全で清潔な簡易宿泊施設を設けました。女性たちは安心して休息を取ることができ、また、会合や研修を行う多目的スペースとしても活用されています。

女性たちが市場を率いる時代へ

現在、「マーケット・フォー・チェンジ・プログラム」が支援している市場では、明るく整然とした売り場に立つ女性たちの姿から確かな自信が感じられます。笑顔で客を迎え、帳簿に売り上げを記録する彼女たちの収入は、子どもを学校に通わせ、家を修繕し、暮らしと生計を発展させる力となっています。

フィジーのスバで開かれた出店者協会の会合では、長年市場で商いを続けてきたショブナ・ヴェルマさんの言葉に、大きな拍手が湧き起こりました。「私たちは家を切り盛りできる、そして、ビジネスでも大きな成功を収めることができるのです!」

自らの力に気づいた太平洋の島々の女性たちは、今日も市場に立ち続けています。その一人ひとりの声と行動が、より平等で持続可能な未来への道を切り開いています。
気づくことは変革への第一歩。私たちも今日、新しい何かに気づけるかもしれませんね。

出典:https://www.unwomen.org/en/news-stories/feature-story/2025/06/womens-market-power-how-un-womens-programme-is-driving-change-in-the-pacific