新型コロナウイルス感染拡大の中、女性に対する暴力の根絶に向けて

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2020年5月3日

国連信託基金の助成金を受けているコンゴ民主共和国のコンゴ女性基金(FFC)のジュリエンヌ・ルセンゲ事務局長が、新型コロナウイルスの世界的流行が発生する前に開いたワークショップの様子。写真:UN Women/ジョナサン・トルゴヴニク

2020/3/24

新型コロナウイルスが世界中で大流行する中、国連女性に対する暴力撤廃信託基金(国連信託基金)と基金から助成金を受けている団体は、コロナウイルスの大流行がもたらす影響のジェンダー的側面を認識しています。例えば、女性の介護や育児などの負担増、家庭内暴力(DV)のリスク増、サービス提供者の対応力低下などです。このような困難な状況の中、コロナウイルスの感染拡大が女性と少女に与える短期的、長期的な影響に対処することが極めて重要です。国連信託基金は、女性のネットワークと組織が果たす役割の重要性を認識し、取り残されがちな女性と少女に支援を提供する現場のパートナーたちを支えています。

コロナウイルス感染拡大が国連信託基金の助成金受給団体にもたらしている影響について調査したところ、インドからコンゴ民主共和国におよぶ市民社会組織は、感染が広まる中、刻々と変化する状況や困難にどう対応し、乗り切ろうとしているかについて次のように述べました。

「私たちは、危機対応サービスを間断なく提供できるように取り組んでいます。24時間ホットライン、虐待による火傷経験者向けの危機対応サービスや社会復帰支援サービスを必要としている人に届けます。最も脆弱な立場にある人々に危機対応サービスを提供する組織として、スタッフの健康と安全を最優先にしながらも、一人の女性も取り残さないために、24時間体制で働いています」と、国連信託基金の助成金受給団体であるPCVC(犯罪防止・被害者支援国際財団)のプログラムディレクターであるラシュミ・シン氏は述べています。

国連信託基金は、PCVCがインドの10地区で提供している、身体的・心理社会的なサポートを含め、女性の火傷経験者に対する総合的なサポートを拡大する支援をしています。PCVCはこうした火傷経験者への基本的なサービス継続の必要性を認識しながらも、スタッフの安全も最優先にして電話でのフォローアップやビデオ通話などを導入して対応しています。シン氏はこう続けました。「火傷経験者の多くがシステムから取りこぼされ、必要な身体的・心理社会的サービスを受けられないのではないかと懸念しています。現状のサービスシステムの隙間を考えると、このような感染症が発生するたびに、全ての利害関係者の連携強化と能力向上の必要性は高まるばかりです」。

コンゴ民主共和国からは、国連信託基金の助成金受給団体であるコンゴ女性基金(FFC)のジュリエンヌ・ルセンゲ事務局長が、次のように説明しました。「コロナウイルスの感染拡大によって、女性と少女が置かれている状況が一層不安定になって脆弱性が高まり、ジェンダー不平等が浮き彫りになるでしょう」。FFCのプロジェクトは、教育訓練や集団啓発活動などを通じて女子生徒に対する性暴力の防止・低減を目的としていますが、感染拡大によって学校が閉鎖されたため、その活動にも影響が出ています。

「コロナウイルス感染拡大によって、女性たちは、DVや性的暴力を含めたあらゆる種類の暴力にさらされるでしょう。[中略]一人ひとりに自分の身近な状況の深刻さを深く理解してもらえるように、専門家のメッセージをわかりやすく伝えていきます」とルセンゲ事務局長は述べました。「できるだけ現状に対応適応するように努めていますが、目の前に迫っているのは未知の世界です。コンゴで、今後状況がどう展開していくのかわかりません。[中略]ですが、この闘いは女性だけに任せておけばよいというものではありません。男性と女性が力を合わせ、家族が一体となってコロナウイルスと闘わなければなりません。私たちはこれからも、そう訴え続けます」。

(翻訳者:松本香代子・実務翻訳スクール)

カテゴリ: ニュース

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