COVID-19感染拡大の最中そして収束後も、女性と少女に対するオンライン上の暴力に真剣に向き合うべき理由

記事をシェアする

2020年8月27日

2020/7/21

セシリア・ムウェンデ・マウンドゥさん  写真:ンジェリ・ワイギ

セシリア・ムウェンデ・マウンドゥさんはケニアを拠点とする放送ジャーナリストで、ジェンダーデジタルセキュリティの専門家です。また、国際ラジオ・テレビ女性協会(IAWRT)ケニア支部で現在事務局長も務めています。新型コロナウイルスの感染が広がる中、女性と少女は社会とのつながりを維持しようとインターネットの使用が以前よりも増えていますが、同時に身体的脅威、セクシュアルハラスメント、つきまとい、ズーム爆撃(無断で会議に侵入し迷惑行為を行う)、性的な投稿の繰り返しなど、オンライン上の暴力の標的にもなっています。新型コロナウイルス感染拡大の中、UN Womenは、各国政府に対し女性と少女のオンライン上での安全強化に取り組むよう要請し、アドボカシー活動の強化のために女性団体を支援しています。このインタビューで、セシリアさんは情報セキュリティ対策について話しています。

新型コロナウイルスの感染拡大の中、オフラインとオンラインの暴力を区別することが大きな問題なのはなぜですか。

ジェンダーに基づく暴力がオンライン上で起きる状況は、実際の生活の中で暴力が起きる場合と同様です。オフラインとオンラインの暴力の有害さの度合いはほとんど変わりません。

現在はネット上の仮想社会にも生活の場があり、オフラインの暴力がオンライン上にも広がってきています。オンライン上では、オフラインの場合よりも後先考えずに簡単に暴力行為に及んでしまいます。女性はオンライン上の暴力の主たる標的です。特にジャーナリストや政治家のような自分の意見を主張する女性はなおさらです。オンライン上のハラスメントには、いじめ、ネット荒らし、ネットストーキング、中傷、ヘイトスピーチ、つるし上げ、個人情報の盗み取りやハッキングなど様々な形態があります。私は、女性がオンライン上で自分の個人情報を保護するためのトレーニングを提供しています。

男性もオンライン上でハラスメントを受けますが、女性が標的の場合、オンライン上のハラスメントはすぐに性的いやがらせや脅しにつながります。オンライン上のジェンダーに基づく暴力は、私たちの社会に深く根付いているジェンダーの不平等をはっきりと映し出しています。

オンライン上で暴力を経験した女性や少女にはどんな影響がみられますか。

私たちが確認している最も重大な影響は、自粛です。女性はオンライン上での発言を控えるようになります。そしてそれこそが攻撃者の望むところなのです。オンライン上の暴力は、女性を主要な公共の場から排除することを目的にしています。ケニアの法律は技術の進歩に追いついていません。例えば、警察が真剣に取り合ってくれるのは、身体的暴力に対してだけです。でも、暴力がオンライン上で起きているから被害の深刻さが低いというわけではありません。

ハラスメントを受けてオンラインプラットフォームから去る女性もいます。ジャーナリストが自粛を強要されれば、それは情報の自由に対する基本的な権利への攻撃となります。

オンライン上の暴力は公衆衛生の問題であり、その影響は有害です。身体的、性的、心理的、経済的な被害をもたらし、自尊心をむしばみます。

新型コロナウイルスの感染拡大によってケニアではオンライン上の暴力は増えていますか。

明らかに増えています。世界の多くの地域と同様にケニアでも、フェミニストのウェブサイトやSNSのページが攻撃されていて、支援を求める声が増えています。多くの攻撃者が女性や活動家のアカウントに不正に侵入し、思いのままに操作しているからです。

ケニアで最初の新型コロナウイルス患者である若い女性は、退院時、恐怖で身の縮む思いをしました。オンライン上でいわれのない非難を受けたからです。「病気でもないのに政府から支援のお金を受けた」とまで言う人がいたり、私的な写真がオンライン上で公開されたりしました。

女性と少女へのオンライン上の暴力をなくすために政府や個人にできることは何ですか。

まず、皆が関心を持つことです。私がこのことを話題にしても、オンライン上の暴力は大した問題ではないと言う友人が多いです。しかし、これは現実に起こっていることで、被害者に深刻な影響を及ぼす現実の暴力だということを理解してもらう必要があります。しかも、暴力がオンラインからオフラインにも移行することもあるのです。

ジェンダーデジタルセキュリティとは何ですか。

デジタルセキュリティとは、オンライン上で個人の情報を守ることです。オンライン上で最も弱い立場にある女性と少女に自分の身を守る訓練をすることも、ジェンダーデジタルセキュリティの1つです。

女性と少女はソーシャルメディアの一員であり、ネットを利用する権利があることを彼女たちに知ってほしいです。身を守るための手段や対策はいくつもあります。例えば、最近インスタグラムは、誰でも使える「アカウントの制限」といういやがらせ防止機能の提供を始めました。オンラインプラットフォームで、他人から追い出されるようなことがあってはならないからです。以下に基本的なデジタルセキュリティ対策を紹介します。

1.推測されにくい複雑なパスワードの作成

2.アカウントごとに異なるパスワードの設定

3.信頼できるプラットフォームからのアプリのダウンロード、および 2段階認証の使用 

4.アカウントからログアウトする習慣

5.オンライン銀行の詳細など、知られたくない情報に関しては公共のWi-Fi使用の回避

6.ウイルス対策ソフトのインストールと、可能であればプライベートネットワーク(VPN)の利用

(翻訳者:早乙女由紀・実務翻訳スクール)

カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会

寄付する