プレスリリース:COVID-19によって広がる男女間の貧困格差---UN WomenとUNDPが新データを公開

記事をシェアする

2020年9月30日

2020/09/02

新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により、ここ数十年にわたって成果を挙げてきた極度の貧困を撲滅するための取り組みが後退し、新たに4,700万人を超える女性と少女が貧困ライン以下に追いやられようとしています。

UN Womenと国連開発計画(UNDP)が新たに発表したデータによると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大によって女性の貧困率が劇的に増加し、男女間の貧困率の差が広がることが想定されます。


洞察から行動へ:COVID-19のジェンダー平等への影響

女性の貧困率は2019年から2021年にかけて2.7%低下すると見込まれていましたが、新型コロナウイルス感染症拡大とそれに伴う影響のために、現在では9.1%増加すると推定されています。

UN WomenとUNDPの委託によりデンバー大学の国際未来のためのパルディセンターが行った予測によると、この感染拡大は世界の貧困全般に影響を及ぼすものの、なかでも女性、特に生殖可能年齢にある女性が極めて大きな影響を受けることが示されました。2021年までに、1日平均1.9米ドル以下で暮らす極度の貧困状態にある25~34歳の男性100人に対し、同様の状態にある女性は118人と推定され、2030年までにはその差がさらに広がり、男性100人に対し女性は121人になると予測されています。

「極度の貧困状態にある女性が増えるということは、社会と経済を構築してきたこれまでのやり方に重大な欠陥があるということを明確に示してしています」と、プムズィレ・ムランボ=ヌクカUN Women事務局長は述べました。「家族の世話をする責任のほとんどは女性の肩にかかっています。女性は男性に比べて収入も貯蓄も少なく、雇用も不安定です。実際、全体的にみると、女性の雇用は男性よりも19%もリスクが高いのです。女性を今回の危機からの復興の中心に据える、迅速で効果的な政策行動を推進するためには、ここに示す複数の不平等に関する証拠が極めて重要です」。

UN Womenがまとめた洞察から行動へCOVID-19ジェンダー平等への影響というレポートのデータでも、新型コロナウイルス感染症の拡大によって2021年までに9600万人が極度の貧困に追いやられ、そのうちの4700万人が女性と少女であることが示されています。これによって、極度の貧困状態にある女性と少女の数は4億3500万人に増え、2030年までにこの数字が感染拡大前のレベルに戻ることはないだろうと予測しています。

今回の危機は、2030年までに極度の貧困を撲滅するという見通しを大きく脅かしていますが、現実はさらに厳しいものと思われます。なぜなら、女性と少女の貧困率が高まるというこの予測は、国内総生産(GDP)の下方修正だけを捉えたものであり、例えば、育児のために仕事をやめた女性など、同じく貧困の性別分布に影響を与える可能性があるその他の要因が考慮されていないからです。

「各国政府が、教育と家族計画へのアクセスの改善、公正かつ平等な賃金、社会的移転(社会福祉)の拡大などを目指した包括的な戦略を実施すれば、1億人以上の女性と少女を貧困から救うことができます」と、アヒム・シュタイナーUNDP総裁は述べています。 

また、「今回の危機の影響を最も受けているのは女性です。女性は男性よりも収入源を失う可能性が高く、社会保障政策の対象となる可能性は低いからです。ジェンダー不平等の削減に投資することは、賢明であり、かつ大きな資金は不要というだけでなく、新型コロナウイルス感染症拡大が貧困の削減に与える影響を反転させるために政府が取り得る緊急の選択肢でもあります」と付け加えました。

新型コロナウイルス感染症の拡大がもたらす影響によって、極度の貧困に対する予測はあらゆる地域で変わるでしょう。サハラ以南のアフリカには、現在、世界の貧困女性の59%が暮らしていますが、その地域は今後も世界でも極度の貧困状態にある人々の多い地域であり続けるでしょう。でも、それだけではありません。南アジアでは、この数年間、貧困削減にかなり大きな進歩がみられていましたが、また極度の貧困状態にある人々が増えると予測されています。南アジアで、極度の貧困状態にある25~34歳までの男性100人に対し同様の状態にある女性の数は、2021年の118人から2030年には129人に増加するでしょう。

これは憂慮すべき数字ではありますが、今回の調査によると、2030年までに世界を極度の貧困から救い出すのに必要なのは、世界のGDP(2兆米ドル)のわずか0.14%です。また、性別による貧困格差を埋めるのに必要なのは480億米ドルです。ただし、各国政府が何の対策もとらなかったり、対策をとるのが遅すぎたりした場合には、この数字ははるかに高くなる可能性があります。

また、その他の既存のジェンダー不平等も増加の一途であるということも、このような数字に影響を与えるでしょう。女性は、宿泊・飲食サービス業、家事労働など、新型コロナウイルス感染症の拡大によって最も打撃を受けている職についていることが多く、一時解雇や生活手段の喪失の対象になりやすい立場にあります。国際労働機関(ILO)は、2020年6月までに、世界の家事労働者の72%が新型コロナウイルス感染症拡大のために職を失ったと推定しています。ロックダウンが行われている間、女性も男性も、これまで以上に家事をこなし子どもや家族の世話をしてはいますが、家事労働の大半は依然として女性と少女の肩にかかっています。

貧困撲滅活動の後退は避けられないわけではありません。新型コロナウイルス感染症拡大により女性が恒久的に置きざりにされるのを防ぐためには、職業差別、ジェンダー間の賃金格差、手頃な価格の育児サービスへの不十分なアクセスなどへの対処から、各国における脆弱な女性を対象とした経済的支援パッケージの導入、女性と少女を対象とした社会的保護政策の強化、新型コロナウイルス感染症拡大のジェンダーに基づく影響に関する研究とデータをより利用しやすくすることまで、幅広い対策が推奨されます。

(翻訳者:松本香代子・実務翻訳スクール)

カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会

寄付する