女性のリーダーが大きく取り上げられないのはなぜか...女性リーダーの5つのストーリー(前編)

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2020年10月16日

2020/9/14

2011年の民主主義デーの祝賀行事に参加する幅広い年齢層の女性リーダーたち。この祝賀行事は、UN Womenと社会科学研究所が、インド各地の女性議員の仕事を称えるために開催したものです。インドの憲法は、地方自治体の議席の3分の1を女性に留保することを義務付けており、現在、多くの州では議席の50%を女性に留保するとしています。写真:UN Women/ガンガンジット・シンハ

女性は男性と同じように有能なリーダーになれるかというのは、これまで一度も問われたことはありません。女性はこれまでも、特に困難な時期、地域社会が必要とするときは常にリーダーシップを発揮してきましたし、これからも発揮します。

むしろ問わなければならないのは、女性のリーダーはなぜ見えないのか、女性の潜在能力や力はなぜ抑え込まれているのか、ということです。

新型コロナウイルス感染症が世界中で大流行する中、行政の長、国会議員、医療従事者、地域社会のリーダーとして、女性は至る所で最前線に立ってきました。女性団体や地域団体が、ウイルスの拡大防止において多くの責任を担い、最も必要とする人々に奉仕してきました。それにもかかわらず、女性は長年意思決定のプロセスから排除されてきました。

現在、国家元首または行政の長を女性が務める国はわずか21ヶ国です。この新型コロナウイルス感染症が拡大している中にあっても、こうした女性のリーダーがより包括的な意志決定やより民意を代表する統治を生み出しているにもかかわらずです。いまだに男性が国会議員の75%、管理職の73%を占めています。正式な和平プロセスで交渉にあたるのもほとんどが男性です。

本年の国際民主主義デーでは、この新型コロナウイルス感染症の大流行からより良い社会の復興を達成するためには、女性の幅広い考え方や経験、リーダーシップを引き出すことが極めて重要であることにあらためて気づかされました。

では、ご存じない方のために、女性たちがすべての人々の幸福のためにどのようなリーダーシップを発揮したかを物語る5つのストーリーをご紹介します。(ストーリー4:先住民族に対する医療サービスと情報提供の障壁を撤去(グアテマラ)とストーリー5:ウガンダの難民居住地における新型コロナウイルス感染症拡大防止、は追って当協会ホームページに掲載される後編をお読みください)

1. 新型コロナウイルス感染症拡大下において強い女性リーダーシップを発揮(コソボ)

法学博士であり、元教授で2人の女児の母であるヴィヨサ・オスマニ国会議長。写真:国会議長執務室

新型コロナウイルス感染症拡大中に、ドイツからニュージーランド、そしてデンマークからアイスランドと、女性リーダーたちはその意思決定と政策において、明快さ、共感、そして強いコミュニケーション力を示しました。コソボの初代女性議長のヴィヨサ・オスマニさんは、この危機の最中にそのリーダーシップを称賛された多くの女性リーダーの一人です。

元教授で2人の女の子の母親であるオスマニ議長は、さらなる女性の政治参加を主張しています。「政治や国家の高い地位に女性がつくと、ジェンダーや環境に配慮し、よりバランスがとれた将来を見据えた政策策定に寄与します」とオスマニ議長は述べます。

この危機の中、コソボにおける女性の脆弱性が高まっています。他の多くの国同様、コソボでも都市封鎖開始後、ドメスティックバイオレンスの件数が増加しました。「新型コロナウイルス感染症拡大のジェンダーの側面について私は一貫して声を上げ続け、関連する事実や情報を共有する一方、政府のあらゆる行動を注視しています」とオスマニ議長は述べています。

新型コロナウイルス感染症の脅威から弱い立場にある人々を守るために、オスマニ議長はUN Womenコソボ事務所のドメスティックバイオレンス反対運動に加わり、またUNICEFと緊密に連携して子どもの健康と家族の福祉の問題に取り組んでいます。

「世界でリーダーの立場にある女性の数は限られていて、コソボも同様です。人々が社会の片隅に追いやられ、差別され、ジェンダーに基づく障壁に直面しているうちは、社会の生産性を達成することはできません」とオスマニ議長は語り、女性が意思決定できる地位につけるように男女ともに努力する必要があると付け加えました。

インタビューの全容はこちら

2. 食料不足との戦いの最前線(インドネシア)

中部ジャワのジェティスにある平和村の女性。新型コロナウイルス感染症拡大防止に立ち上がり、地域ボランティアとして中心的役割を担う女性グループのメンバー。写真:ワヒド財団提供

新型コロナウイルス感染症の危機において、インドネシアの女性に対し必要不可欠な支援を提供するプログラムの1つであるGUYUBプロジェクトの中心には、民主主義の原則があります。インドネシア語のGuyubiには、「うまくやっていく」や「一体感を持って」という意味があります。これは、フィジカル・ディスタンシング(社会的にはつながっていても物理的な距離をとること、WHOが使い始めている)や都市封鎖などによって社会生活が妨げられている中でも、地域社会を結びつけている考え方です。

UN Women、国連薬物・犯罪事務所(UNODC)、国連開発計画(UNDP)が共同で実施するこのプロジェクトは、先日、ジャワ各地の10の平和村に住む家族に対し食料と衛生用品のパッケージを配布しました。パッケージが平和村に到着した後は、インドネシアのNGOであるワヒド基金の協力で、女性中心のタスクフォースがこのパッケージを配布しました。

「市内で大規模な社会的制限が実施されていたので、食料のパッケージと衛生キットを購入し、準備して配布するのはとても大変でした」と東ジャワのバトゥ市に位置するシドムルヨ地区のタスクフォースのメンバーであるシチ・ユライカさんは述べています。しかし、以前フードバンクだった設備を利用して、行動が制限される中、最も助けを必要とする人々に食料パッケージを何とか届けました。

「多くの店や市場が閉まっていたため、食料パッケージはとても感謝されました。消毒剤や石鹸などの衛生キットも、自宅だけでなく村の軍の駐屯地など公共の場でも使われていました」とユライカさんは言います。

村人の健康を守るため、タスクフォースメンバーは公共の場の消毒、マスクの生産と配布、衛生手順に対する啓蒙など、ウイルス感染予防のために必要な対策も講じました。さらに、新型コロナウイルスに関する情報収集や接触者の追跡、健康診断を行うセンターを設置しました。

厳しい状況への迅速な対応はこれだけではありません。市場の閉鎖と商機喪失による収益の落ち込みを目の当たりにした多くの女性たちは、以前参加した企業家トレーニングで学んだことを思い返し、オンライン市場としてWhatsAppグループを立ち上げました。

「飲食の屋台オーナーは、WhatsAppを使って持ち帰り用の注文や宅配サービスの環境を整えました。このような努力によって、この危機の中でも屋台オーナーが継続的に収入を得ることができました」とユライカさんは述べています。

3. リビア全国でのウイルス感染予防対策への取り組み

リビアで新型コロナウイルス感染症の対応に携帯電話を使う和平構築のためのネットワークの女性。写真:和平構築のためのリビア女性のネットワーク提供

和平構築のためのリビア女性のネットワークに参加する36人の女性は、世界の多くの人々より一歩先んじて、今回の危機が始まる前から電話やコンピュータを使ってつながっていました。リビア国内の異なる行政区画に住みながらも、社会や世代、地理的背景が異なる多様な女性リーダーたちは、和平構築戦略について話し合うために2019年7月以来ずっとWhatsAppやZoomを使ってコミュニケーションを取っています。

「我々は1つのリビアになるべきだと思います」とUN Womenの支援によって生まれたこのネットワークのメンバーの一人が言います。メンバーは経験豊富な活動家で、それぞれが各地域で支援活動を行う地域ネットワークとつながっています。新型コロナウイルス感染症の脅威が知られるようになると、すぐにオンラインで活動を開始し、状況に対処してきました。

全国や地域のラジオを通じてウイルスやウイルス拡散に関する重要な情報を届け、低所得世帯に対し洗浄や消毒用製品を提供し、ジェンダーに基づく暴力ホットラインの電話番号を伝えました。また他の団体と連携して、刑務所や拘置所にマスクと手袋を配布し、短期刑または近々刑期満了を迎える囚人、特に高齢者や健康状態の悪い囚人の釈放を要請しました。

女性ネットワークは全国に広がっているため、地域のニーズについて有益な情報を持っていることから、それぞれの地域住民の特性に応じた人道的問題を明らかにしてきました。

家庭や地域における紛争の解決において極めて重要な役割を担っているにも拘わらず、リビア女性は男性優位の意思決定や交渉の場に入っていくことはほぼ許されていません。新型コロナウイルスの脅威や和平プロセスにおける女性疎外などの複数の問題に同時に立ち向かいながら、女性リーダーは引き続き安全で健康でより平和なリビアを目指して活動します。

「リビアの女性は、新型コロナウイルス感染症から国を分断し地域社会に想像を絶する苦難を課した紛争の結果まで、さまざまな問題に対応する最前線に立っています。今こそ、女性が和平交渉に正式に参加し、リビアの将来について発言する時です」とUN Womenリビア事務所のベゴナ・ラサガバスター所長は言います。

(翻訳者:土居良子・実務翻訳スクール)

カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会

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