COVID-19:新型コロナウイルス感染症による社会的・経済的影響から女性を守る対策を講じている国は、8か国に1か国にとどまることが、新データから明らかに

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2020年10月26日

                                                                                                  2020/9/28

https://www.unwomen.org/en/news/stories/2020/9/press-release-launch-of-covid-19-global-gender-response-tracker

UN Womenと国連開発計画(UNDP)が新たに開発したデータベース「COVID-19 グローバル・ジェンダー・レスポンス・トラッカー(ジェンダー対応追跡ツール))」が、このほど公開され、新型コロナウイルス感染症の拡大に対する社会的保護や雇用対策において、女性のニーズがほとんど見落とされていることがわかりました。

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UN WomenとUNDPが本日公表した、「COVID-19 グローバル・ジェンダー・レスポンス・トラッカー」の最新データによると、世界のほとんどの国々は、新型コロナウイルス感染症の危機による経済的・社会的な影響から女性と少女を守る対策を、十分にとっていないことがわかりました。

このトラッカーは、206の国と地域が導入した2,500以上の新型コロナウイルス感染症対策を、女性と少女に対する暴力への取り組み、無償のケア労働への支援、女性への経済的保障の強化、の3つの領域について、ジェンダー的視点から具体的に分析しています。

その結果によると、分析対象国全体の5分の1(20%)にあたる42か国で、ジェンダーに配慮した新型コロナウイルス感染症対策がまったく導入されていませんでした。上記3つの領域すべてをカバーする対策を導入している国は、全体の12%にあたる25か国のみです。採用されている対策には、今回の危機の間に急増した女性と少女への暴力に対処するためのヘルプライン、シェルター、法的支援の提供、女性が直接受け取ることができる現金給付、育児サービスの提供や有給の家族休暇・病気休暇の付与、などがあります。

「新型コロナウイルス感染症の危機は、各国が既存の経済モデルを、社会正義とジェンダー平等を優先する新たな社会契約へと変革する好機でもあります。この新しいジェンダー・レスポンス・トラッカーは、各国の取り組みと資金提供にばらつきがあることを示すとともに、世界中の優れた取り組みをクローズアップしており、政策改革の加速化に役立つことと思います」とアヒム・シュタイナーUNDP総裁は述べています。

また、プムズィレ・ムランボ=ヌクカUN Women事務局長は、「新型コロナウイルス感染症拡大によって、女性が大きな打撃を受けていることは明らかです。ドメスティックバイオレンスの被害者である女性が外出制限により加害者とともに家に閉じ込められたり、家族や地域社会のケア労働を無償で担ったり、社会的保護のない仕事に従事する、などの影響を受けています。このグローバル・トラッカーは、ケア政策や女性に対する暴力への取り組みの優れた例を共有し、その進捗状況を監視することで、各国政府が正しい政策をとれるよう支援します」と述べています。

新しいデータによると、各国のジェンダーに基づいた新型コロナウイルス感染症対策は、主に女性と少女に対する暴力の防止と対策に集中しており、ジェンダーを考慮しているとされた対策の71%(135か国の704件)を占めます。このうちの63%は、シェルター、ヘルプライン、その他の通報システムといった、最も基本的なサービスの強化が目的です。しかしながら、女性と少女に対する暴力に関するサービスを、国や地域の新型コロナウイルス感染症対応計画に不可欠な要素としている国は48か国のみで、分析対象国の4分の1にも満たず、これらの対策に十分な資金を提供している国はほとんどありませんでした。

一方、社会的保護、ケア危機、雇用対策の面では、女性のニーズにほとんど目が向けられていません。女性への経済的保障の強化を明確に目的としている対策は、85か国の177件(全体の10%)に過ぎず、無償のケア労働への支援策や、子ども、高齢者、体の不自由な人のケアサービスを強化する対策をとっている国は、全体の3分の1にも満たない60か国のみです。

このトラッカーから、ジェンダーに配慮した対応策には、国や地域によって大きな違いがあることもわかりました。

ヨーロッパは、女性と少女に対する暴力への対応と無償のケア労働の支援において、他の地域をリードしており、暴力対策の約32%、無償ケア労働対策の約49%がヨーロッパの政策です。女性への経済的保障の強化を目的とした対策が最も多い地域はアメリカ大陸で、アフリカがそれに続きます。

優れた取り組み例:

ボスニア・ヘルツェゴビナでは、シェルターを運営する市民社会組織への支援策がまとめられ、コロンビアスウェーデンでは、ジェンダーに基づく暴力の被害者を支援するための財源が確保、もしくは今後確保される予定です。

・ケア危機への対応として、アルゼンチンでは毎月の児童手当が増額され、オーストラリアコスタリカでは、ロックダウン中も保育サービスが保障されています。オーストリアキプロスイタリアでは、働いている親が、家族の世話をしなければならないなどの影響を受けた場合には、追加の家族休暇が認められ、カナダスペイン韓国では、学校や保育施設の閉鎖の影響を受けた親への現金給付が導入されています。

トーゴジョージアモロッコなどでは、女性の起業家や、市場などで小規模の商売をする女性に、現金給付や補助金の交付が行われています。

トラッカーの分析結果に基づく提言

ジェンダーに配慮した対策を数多く導入している国でも、それらが効果を発揮するには、適切な財源の確保と長期にわたる施行が必要であることがわかりました。そこで、以下の3つの項目を提言します。

・女性と少女に対する暴力への対応とこれを防止するためのサービスは、不可欠なものとして扱われなければならず、十分な資金が提供され、国と地方の新型コロナウイルス感染症対応計画に必ず盛り込まれるべきである、

・新型コロナウイルス感染症への対応と回復から、女性が取り残されることのない財政政策を考案すべきである、

・政府は、新型コロナウイルス感染症対応における女性のリーダーシップと政策の決定過程への、女性の積極的な参加を支援すべきである。また、今回の危機の影響が性別によって異なることが認識され、効果的に対処されるよう、性別データの収集に投資すべきである。

(翻訳者:祖父江美穂・実務翻訳スクール)

カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会

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