2020年、女性にとっての決定的瞬間(抄訳)

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2021年1月8日

2020年12月17日

UN-Women.Medium.com掲載記事より

2020年は、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)が世界中で我々の生活のすべてを変えてしまったことで記憶されるでしょうが、女性の権利やジェンダー平等でもいくつかの進展がありました。ドメスティックバイオレンス(DV)やジェンダー平等に取り組む新しい法律から、パンデミック禍に欠かせない女性のリーダーシップまで、ジェンダー平等の決定的瞬間を共に祝おうではありませんか。

COVID-19禍で女性のリーダーシップが輝く

 世界中の政府は懸命にCOVID-19に対応してきました。ある研究によると女性がリーダーシップを取っている国ではそうでない国より、対応がより迅速かつ効果的で強力でした。ニュージーランド、ドイツ、フィンランド、バングラデシュなどの女性がリードする国では、対応が素早くて明確であったため、これが感染者、死者の数の低さにつながりました。
 COVID-19によって女性がリーダーシップを取ったり、決定に加わることがいかに重要であるかが分かってきたものの、2020年12月現在、女性が国家元首を務める国は、世界193か国のうち22か国に過ぎません。将来、良い社会の復興を遂げるためには、女性のリーダーシップが必須でそれが成功につながります。

アメリカ合衆国、史上初の女性副大統領が誕生

 11月、カマラ・ハリスさんは、長年アメリカ政界の最高レベルに男性を囲っていた砦を壊して、アメリカ合衆国最初の女性次期副大統領になりました。2021年1月に宣誓すると、世界の他の女性副大統領の仲間入りをします。女性が副大統領についている国は、ブルガリア、ニカラグア、リベリア、コスタリア、ベネズエラ、ガンビア、南スーダンなどです。
 ジョー・バイデン次期大統領は、ホワイトハウス初の全員女性から成る上級コミュニケーションチームを発表しました。

スコットランド、全ての人に生理用品を無料化

 スコットランド議会は、11月、全員が生理用品法に賛成し、学校、大学を含む公共施設で生理用品に皆が無料でアクセスできる最初の国になりました。
 これは、今まで色々な意味で女性・少女を縛ってきた「生理の貧困」に抗議するグローバル運動の勝利を意味します。世界の12.8%の女性・少女が貧困の中に生きており、生理用品のコストやそれにかかる税金のため自分の生理を安全に処理することができていません。

アフガニスタンで子どものIDカードに母親の名前が含まれるようになる

 アフガニスタンでは、大統領が新しい法律に署名し、これによってはじめて母親は子どもの出生証明や身分証明カードに名前を載せられるようになり、子どもの教育、医療などが受けやすくなります。これは特に、夫を亡くした女性、離婚女性、シングルペアレントにとっては朗報です。

世界のリーダー、北京行動綱領のビジョンを再燃

 10月、国連総会議長とUN Womenが共催した会議で、世界のリーダーたちが一堂に会し、現在に至るまでジェンダー平等を進めるうえで最も包括的なロードマップと言われる北京宣言と行動綱領の25周年を祝いました。100ヵ国以上が世界中の女性・少女のエンパワーメントとジェンダー平等実現を促進する具体的なアクションをとる約束をしました。
 この約束には、差別的な法制・社会規範・ジェンダーステレオタイプの撤廃、ジェンダー平等の実現にみあう十分な投資、ジェンダー平等を促進するための制度強化、女性・少女の生活向上のためのテクノロジーとイノベーションの活用、ジェンダー統計の収集・活用・分析などが含まれます。
 皆、前を見据え、2021年にメキシコやフランスで開催される平等を目指す全ての世代のためのフォーラムや同フォーラムのアクション・コアリションを通してジェンダー平等を目指してどんなに強力なアクションがとられるのかを見つめています。

ブラジル、シェラレオーネでサッカー選手の男女平等賃金が実現

 ブラジルやシェラレオーネは、男女サッカー選手に平等の賃金を支払うと公表し、オーストラリア、イギリス、ノルウェー、ニュージーランドと並びました。世界的に見て、ジェンダーによる賃金格差は16%です。つまり女性労働者は男性労働者の84%の収入しか得ていないということです。有色人種の女性、移民女性、子どもを抱える女性にとってその差はもっと大きなものになっています。

クウェートのドメスティック・バイオレンス法、女性に希望の光をともす

 9月、クウェートは、クウェート女性の権利グループによる何年にもわたる運動の結果、ドメスティック・バイオレンスからの保護を定めた新法を制定しました。新法はドメスティック・バイオレンスから女性を守る政策を策定する国家委員会を立ち上げます。また被害者(サバイバー)を支援するシェルターやホットラインなども設置し、緊急保護命令で加害者が被害者(サバイバー)に連絡できないようにします。
 世界に目を向けると、COVID-19パンデミックが起こって女性に対する暴力が劇的に増加したことがわかります。コロナウイルス感染症が発生した初期の週で、ヘルプラインへの電話が5倍増えた国もあります。ロックダウンが始まると3か月ごとにさらに1,500万人の女性が暴力を経験すると推定されます。女性に対する暴力を削減し、COVID-19の社会的、経済的悪影響から立ち直るには、今こそ法律、政策の制定が必要です。

タイムズ紙初のキッズ・オブ・ザ・イヤー、少女の力と女性科学者を祝う

 15歳の科学者で発明家、ギタンジャリ・ラオさんは、タイムズ紙初のキッズ・オブ・ザ・イヤーに選ばれました。
ラオさんは、幼いころから自分の周りの世界に積極性、自信、連帯をもたらしたいと思い、社会変革を起こすには科学と技術をどのように利用していけばよいのかを考えていました。彼女は、アプリと人工知能に基づくChrome拡張機能であるKindlyを立ち上げました。これは、ネットいじめを初期のうちに発見することを可能にします。ラオさんは現在、水中の生物汚染物質を安価かつ正確に検出する方法を研究しています。

ニュージーランド、初の先住民女性の外務大臣を任命

 11月、ナナイア・マフタは、ニュージーランドでは初の先住民女性の外務大臣に任命されました。マフタさんはマオリの国会議員になったことで歴史を塗り替えました。
 ジャシンダ・アーダーン首相に率いられたニュージーランドの国会は、世界で最も多様化しており、議員のほとんど半分が女性、新規議員の10%がLGBTQコミュニティーのメンバーです。

2人の女性が化学分野でノーベル賞を受賞

 エマニュエル・シャルパンティエさんとジェニファー・ダウドナさんは、クリスパー・キャス9(CRISPR-Cas9)として知られている新たなDNAの編集方法(「ゲノム編集」)でノーベル化学賞を受賞しました。
 エマニュエル・シャルパンティエさんとジェニファー・ダウドナさんの共同受賞は、史上初めて女性2人がノーベル賞を受賞したことを表しています。2人はノーベル化学賞を受賞した6番目、7番目の女性です。 

(抄訳 本田敏江 理事)

カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会

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