専門家の目:ジェンダー平等は、アフガニスタンの未来、長期的な発展、平和の定着に不可欠

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2021年11月7日

2021/10/12

筆者について

UN Womenアフガニスタン事務所のアリソン・ダビディアン副代表

写真:UN Women/ザリナ・ファイジ

アリソン・ダビディアン氏は、UN Womenアフガニスタン事務所の副代表です。それまではUN Womenアジア太平洋地域事務所でガバナンス、平和、安全に関するプログラム専門官を務め、暴力的過激主義の防止、人身売買禁止、司法制度へのアクセスに重点をおいた、ガバナンス、平和、安全に関するプログラムの実施を管理していました。 2013年から2017年までは、UN Womenの平和と安全保障部門の政策スペシャリストとして移行期正義のポートフォリオを管理し、UN Womenの暴力的過激主義防止ポートフォリオの作成を主導しました。UN Womenで働く前は、コンゴ民主共和国の国際移行期正義センター、ソマリアのUNDP、オーストラリアの難民アドバイスおよびケースワークサービスなどの組織で働いていました。

2021年8月15日、タリバンがカブールに侵攻して街を占領しました。そのとき、これでアフガニスタンの女性と少女の生活が大きく変わるだろうと思いました。そしてこの1か月間、実際に女性と少女の生活にどのように影響があったかを日々目の当たりにしてきました。

アフガニスタンの女性と少女は今、恐怖におびえています。1990年代、タリバンの支配下での生活がどのようなものであったかを覚えているからです。タリバンが女性の権利に関する態度を明らかにしていないために、その恐怖はいっそう強まっています。タリバンは「女性の権利はイスラム教の枠組みの中で尊重される」という漠然とした声明を出しましたが、実際の行動を見るとそれを信頼できそうにありません。

タリバンが政権を握り閣僚が発表されましたが、女性は1人もいません。副大臣も任命されましたが、やはり女性は1人も選ばれず、これまであった女性問題省は廃止されました。

一部の州では、女性は職場に来るな、男性親族の同伴なしで家を出るな、などと言われています。女性保護センターが攻撃を受け、そこで働く人々が嫌がらせを受けています。活動家やジャーナリストなど、女性人権擁護家のためのシェルターは既に満杯です。

アフガニスタン国内の女性と少女がおかれている状況は厳しいですが、女性たちは平等を求め自分たちの権利のために闘い続けています。この流れは変わっておらず、今後も変わることはありません。アフガニスタンの女性は何世紀にもわたって自分たちの権利のために最前線で闘ってきました。米国で女性にまだ選挙権がなかった1919年に、アフガニスタンでは女性が既に選挙権を持ち、1921年には少女のための最初の学校が設立されています。2004年憲法には、ジェンダー平等が明記されています。何十年もの間、平和と発展の両面において、女性のアドボカシーがアフガニスタンの前進に大きな役割を果たしてきました。

アフガニスタンのUN Womenは、アフガニスタンの女性と少女のために国内にとどまり、職務を遂行しています。第一に、アドボカシーに従事して、女性の権利が確実に守られ促進されるようにすること、そしてアフガニスタンの女性について話し合いが行われるようにするだけでなく、直接女性の声を届けることがUN Womenの職務です。今は世界中の目がアフガニスタンに向けられていますが、それが永遠に続くわけではありません。カメラが止まったあとも、女性と少女の状況にスポットライトを当て続けることが国際社会の重要な役割です。アドボカシーとはまた、女性の権利擁護者がリソースと保護を確保できるようにすることでもあります。これは、どの国においても平和と安全の重要な指標です。

UN Womenのもう1つ重要な活動は、アフガニスタンにおける女性の市民社会と女性の運動を支援することです。女性団体は進歩と説明責任の原動力であることはわかっていますが、海外からの開発援助費のうち、女性の権利団体が受け取っているのは全体の1パーセントにも達していません[1]。私たちは、女性の市民社会団体に戦略的かつ意図的に投資して、その流れに対抗する必要があります。

UN Womenは、女性と少女に対する暴力への対応を含め、女性が命を守るために不可欠なサービスを利用できるよう全力を傾けています。アフガニスタンは、暴力を経験した女性の割合が世界でも最も多い国の1つで、その暴力のほとんどが家庭で起こっていることがわかっています[2]。アフガニスタンの女性の10人に9人が、生涯に少なくとも1つの形態の近親者による暴力を経験していますが、これは新型コロナウイルス感染症の発生以前のことです[3]。コロナ禍によって、アフガニスタンを含む世界中で女性に対する暴力の発生率が増加しています。UN Womenは今後も引き続きパートナーと協力して、女性に対する暴力の防止と対応に向けたサービスが利用できるよう、全力を尽くします。

最後に、UN Womenはアフガニスタンの人道システムと協力して、紛争、新型コロナウイルス感染症、異常気象というアフガニスタンの3つの危機に対して、ジェンダーの視点にたった人道的対応を行っています。具体的には、このような危機から最も影響を受けている女性と少女のニーズを満たし、人道的対応の設計と実施に女性が十分に参加できるようにし、データに基づく証拠と分析を用いて、女性と少女にとって効果的な対応が行われるようにします。また、女性の市民社会組織や女性リーダーと協力して、タリバンの支配が女性と少女に与える影響、社会やジェンダー規範に与える影響、女性が人道的なサービスを利用できるか否かに与える影響を調べて月次調査結果を発表し、アフガニスタン国内で活動する国内外の関係者がデータに基づいた分析を利用できるようにします。

アフガニスタンは、これまでにない規模の危機に直面しています。人口の約半分が何らかの人道支援を必要としています[4]。人口の3分の1は、次にいつ食事ができるのかわかりません[5]。保健インフラが崩壊しているため、新型コロナウイルス感染症の第4波発生のリスクがあります。

アフガニスタンがこれらの課題を乗り越える唯一の方法は、男女を問わず、すべての人々が、この危機と試練を乗り越える方法を見つける取り組みに参加することです。公的な場と政治の場に女性が全面的に参加してリーダーシップをとることが、アフガニスタンの未来と長期的な発展、平和の定着、そしていかなる危機からも立ち直ることのできる活気のある経済の創出に不可欠です。

注:

[1] https://www.awid.org/news-and-analysis/new-brief-where-money-feminist-organizing

[2] https://evaw-global-database.unwomen.org/en/countries/asia/afghanistan

[3] https://www.awid.org/news-and-analysis/new-brief-where-money-feminist-organizing

[4] https://gho.unocha.org/afghanistan

[5] https://www.wfp.org/countries/afghanistan

翻訳者:松本香代子・実務翻訳スクール

カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会

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