数学オリンピックメダリスト アデリーナ・アンドレイさん:前例となって女性や少女のエンパワーメントに貢献することが重要

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2021年11月16日

2021/10/7

モルドバ共和国では、自然科学や情報技術(IT)を専攻しようとする少女や女性はほとんどいません。文化、社会、教育のさまざまな段階において壁に直面し、一般に女性の割合が少ない分野でキャリアを形成して専門家になることを諦めてしまうからです。

UN Womenヨーロッパ・中央アジア地域事務所ウェブサイトから転載

アデリーナ・アンドレイさん 写真:アデリーナ・アンドレイさん提供

UN Womenがモルドバ共和国で行った調査によると、調査対象の少女たちのほとんどが、物理学と電子工学に関心がない(81%)、また、数学、生物学、化学、ITに関心がない(65%)と回答しました。しかしながら、機会に恵まれ、これらの分野で意欲的にキャリアを積もうとする少女たちは、ジェンダーステレオタイプに果敢に挑んでいます。

アデリーナ・アンドレイさんはこのような少女のひとりです。アンドレイさんは、国内外で催された数々の数学コンテストに参加してきました。彼女が受賞した賞のひとつに、ヨーロッパ女子数学オリンピック(EGMO)での金メダルがあります。ロシア連邦で先日開催された国際数学オリンピックでは、各地の教育機関で学ぶ8人の学生グループが銅メダルに輝きましたが、キシナウ出身で18歳のアンドレイさんは、その中で唯一の女子学生でした。最も大切なのは、ステレオタイプにとらわれずに自分の好きなことをすることだ、とアンドレイさんは言います。

「私は小学生の頃から数学が大好きでした。面白くて数学の難問を解くのに何時間かかっても苦にならないと気づいた時、また、あらゆる場面で多くの人に『女の子は男の子ほど数学ができるようにはならない』と言われても自分は決して諦めないと思った時、数学は私にとって、とても大切なものだと気づきました」。

アンドレイさんは、両親と学校から受けた影響が大きい、と言います。「両親と学校の先生方のおかげで、数学を勉強したいという気持ちになりました。子どもの頃に、私もあんな風になりたいと思える人物がいて、自分もきっと同じようになれると信じられることが、とても大切です。ご存じのとおり、STEM(科学・技術・工学・数学)の分野で活躍する女性は少ないため、目標となる人がいることは、とりわけ少女たちにとって重要です。そのため、自分が前例となって人生の出発点にいる少女たちに助言や支援を行い、少女たちのエンパワーメントに貢献することが、少なくとも私にとっては重要です」。

STEM分野のコンテストに参加する少女の数は少年に比べてかなり少ないため、ジェンダーに根ざした差別に臆することなく、積極的に参加するよう少女たちに働きかけることが重要です。アンドレイさんは、少女たちの関心を高めるためには、女子オリンピックを開催することが有効だと言います。

「国際数学オリンピックの参加者プロフィールを見ると、女子の数が少ないことに気づきます。数学やその他の自然科学は男子の方が得意と決めつけるジェンダーのステレオタイプを考えると、この少なさに説明がつくでしょう。社会全体として男性に自然科学を学ぶよう奨励する仕組みになっているので、STEM分野に男性が多いのは当然です。「問題」といっていいかわかりませんが、それは私たちの先入観の中にあり、おそらくSTEM分野で結果を出して成功を収めた女性についてほとんど知られていないことにあるのでしょう。そういう成功した女性たちは、少女たちに夢や希望を与え、『あなたにもできる!』と間接的に伝えてくれる前例になるからです。したがって、ヨーロッパ女子数学オリンピックは、女の子は文学と歴史だけできればいいという今の固定概念を覆し、少女たちが数学コンテストに参加して経験と自信を得られるようにする手段なのです」。

アデリーナ・アンドレイさん 写真:アデリーナ・アンドレイさん提供

能力に男女の差があるとは思えませんし、ジェンダー平等を推進していく上で、自分と同年代をはじめ、私達みんなにできることがもっとあるはずです、とアンドレイさんは言います。

「男性と同じように、女性も大統領や研究者、CEOになれます。どんな分野にでも進出していけます。また、男の子と女の子で育て方を変える必要はないと思います。例えば、男の子に対して感情を出してはいけないとか、めそめそしてはいけないと言う必要はないですし、女の子に対して優しくしなさいとか、おとなしくしなさいと言う必要もありません。ジェンダー平等を達成するためにやるべきことが、まだたくさんあります」。

今なお女性たちが高等教育を受ける道がなかったり、指導的立場になれなかったり、暴力を受けて自宅ですら安全に過ごせなかったりする国が多い、とアンドレイさんは話します。「女性の権利獲得とジェンダー平等を目指して闘い続けること。小さな、あるいは表面的な成功だけでジェンダー平等を成し遂げたと満足しないこと。前例となって女性や少女のエンパワーメントに貢献すること。女性が直面する問題と困難だけでなく、成功談についても遠慮なく話し、できるだけ多くの人に伝えていくこと。こうしたことができると思います」。

ジェンダー平等とは、少年たちを教育し、参加させることでもあるので、ジェンダー平等を信じ、ジェンダーのステレオタイプに対抗する男性に積極的に参加してもらうことが重要です、とアンドレイさんは付け加えます。「みなさんに、特に女の子に自分自身を信じてと伝えたいです。芸術であれ数学であれ工学であれ他の何であれ、ためらわずに自分の好きなことをやって、そしてあきらめないでと。たとえ他の人が何と言おうとも」。

スウェーデン政府およびUN Womenとモルドバの全国情報通信技術企業協会(ATIC)とのパートナーシップによる資金援助のもと、過去3年間で2,000名以上の少女と女性たちがITを専門的に学ぶ機会を得て、IT業界で働くことのできる知識と技術を習得しました。そして、ゆっくりと変化の兆しがあらわれています。2015年から2017年の調査では、男性が経営するICT系企業の数が24%増加したのに対し、女性が経営するICT系企業の数は28%増えたことが明らかになりました。

翻訳者:本多千代美・実務翻訳スクール

カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会

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