2021年に起こった16のジェンダー平等決定的瞬間(抄訳)
2022年1月11日
2021年12月22日
2021年も終わろうとしている今、この1年に起こったジェンダー平等・女性の権利にとって見逃せない瞬間を振り返ってみましょう。COVID-19と最前線で戦う女性から、ジェンダーに根差す暴力のサバイバーを支援する法律の制定まで、またトップのポストに就く女性政治家から広告業界のジェンダーステレオタイプ(固定観念)除去まで、2021年に起こった、ジェンダー平等を達成する上での、小さな一歩、大きな一歩を一緒に祝おうではありませんか。
権力と政治:
1.女性は最高レベルの意思決定に達しました
2021年には、8カ国がはじめて女性の国家元首や政府長官を選出・任命し、バルバドス、エストニア及びモルドバでは、女性を大統領と首相に迎えました。
今年は、1月にエストニア初の女性首相として就任したカジャ・カラスから始まりました。3月には、サミア・スールー・ハッサンがタンザニア初の女性大統領に就任しました。5月には、フィアメー・ナオミ・マタアファが、サモアの首相に選出されました。6月には、ロビナ・ナバニャがウガンダの首相に任命されました。
ナジュラ・ブーデン・ラマダーネは、9月にチュニジアの首相に任命され、アラブ地域で国を統率した最初の女性となりました。バルバドスは、2020年に共和国になると決定し、2021年10月に行われた最初の大統領選挙では、サンドラ・メイソンが同国初の女性大統領となりました。
スウェーデン議会は、11月に投票によりマグダレーナ・アンダーソンを首相に指名しました。12月には、シオマラ・カストロがホンジュラスの大統領に選出され、2022年に正式に就任します。
全体として、2021年は政治における女性の活躍にとって良い年でした。アルバニアでは、記録的に内閣の70%が女性になり、ドイツでは最初のジェンダー平等内閣になり、イラクとコソボは議会のジェンダークォータを超えました。1月にカマラ・ハリスは、米国の最初の女性副大統領として就任しました。ハリスはまた、最初の黒人系アメリカ人でもありアジア系アメリカ人でもあります。
2.ンゴジ・オコンジョ・イウェラは、世界貿易機関(WTO)を率いる最初の女性、最初のアフリカ人になる
3月、ンゴジ・オコンジョ・イウェラは、世界貿易機関(WTO)の事務局長に就任しました。WTOの26年の歴史の中で初めての女性及びアフリカ人としてこの地位に就きました。ンゴジ・オコンジョ・イウェラは、ナイジェリアの財務大臣と外務大臣になった最初の女性であり、ガラスの天井を粉々にしたことで広く知られています。
法律と政策
3.スペインは、強姦法を強化します
スペインは、サバイバー中心主義、加害者に対する罰則を強化することを目指し、合意のない性行為をすべて強姦と定義するという法案を可決しました。
新しい法律は、全国的な怒りを引き起こした2016年の「オオカミパック」ギャング強姦事件をきっかけに作られました。「同意に基づく性犯罪法」は、性的行為に対する明示的な同意を求めています。その結果、スペインは、このように強姦の法的定義を拡大した他の11のヨーロッパ諸国に仲間入りすることになります。
この法案は、さらにストリートハラスメント(道で突然女性に声をかける「ナンパ」行為など)と女性性器切除を刑事犯罪とし、職場におけるセクハラに対しては禁固刑を課しています。
4.レバノンは児童婚の廃絶に向けて前進
レバノンの高等イスラム評議会は、未成年者の結婚に関する新しい章を含む 家族法の改正を承認しました。新しい法律は、15歳未満の子どもの結婚を禁止し、女の子自身が結婚に同意しなければならない、もしそうでなければ結婚を取り消すことができると規定しています。
COVID-19パンデミック以前には 1億人以上の女の子が次の10年間で18歳の誕生日を迎える前に結婚すると予想されていました。今、世界中の国々が社会変化を促進するための緊急の行動を取らない限り、経済的ショック、治安の悪化、学校閉鎖により、最大1,000万人以上の女の子が「子どもの花嫁」になる危険性があります。
18歳未満の子どもの結婚や非公式の同棲、つまり児童婚を廃絶することは、国連の持続可能な開発目標の一部です
5.世界中で結婚の平等が進む
スイスは、64.1%が同性婚を支持した9月の国民投票の後、同性カップルの結婚、及び登録されたパートナーシップを(正式の)結婚に変換できると発表しました。12月、チリ議会は、同性婚を合法化する法律を可決し、世界で同性婚が合法である31番目の国になりました。
世界では 69ヵ国に、同性愛を犯罪とする法律があり、「愛は愛である」という普遍的な認識が持たれていません。しかし、2021年には、同性パートナーシップを非犯罪化する有望な動きが見られました。2月、アンゴラは、同性関係を認め、性的指向に基づく差別を禁止する改正刑法に署名しました。3月には、日本の裁判所は政府による同性愛者の結婚禁止は違憲であるという画期的な判決を下し、結婚の平等への道を開きました。
6.チリ政府が憲法草案に新しいジェンダー平等基準を設定
5月、チリは世界初の男女平等憲法議会を選出し、これに対して女性運動家は世界の新しい基準を作ると評価しています。
ピノチェト独裁政権時代の1980年に起草されたチリの現在の憲法は、性に基づく非差別を保証していますが、結婚における女性の権利を保証せず、性と生殖の権利を制限しています。また、同憲法は、医療、教育、その他の社会的保護を明記していないことでも批判されています。
2019年10月の大衆蜂起の間に新憲法への要請が増幅され、チリ人の79%がジェンダー平等の憲法議会に賛成票を投じました。
科学技術
7.女性はコロナ研究及び対応について引き続きリード
新型コロナウイルス感染症がパンデミックであると宣言されてから約2年、女性は世界中の隅から隅までコロナウイルスの壊滅的な影響を感じ続けています。女性と少女は医療従事者として、コロナ対応の最前線にいましたが、研究とイノベーションのリーダーでもあり続けています。
2021年中に、多くの女性科学者や専門家のおかげで、世界中でワクチンの本格展開が広がりました。10代のアミカ・チェブロルのリード分子に関する研究により、SARS-CoV-2がスパイクタンパク質に選択的に結合し、ウイルスを阻害することが明らかにされました。更に、キズメキア・コルベット、カタリン・カリコ、オズレム・テレチなどの女性研究者によって開拓された重要な研究成果が、世界中にワクチンとして配布され、コロナと戦う上で、重要な手段となっています。
8. ナスダック新政策は、会社の取締役会の多様性を要求している
米国の新政策によると、米国所有の電子証券取引所であるナスダックを通じて上場する約3.000社は、取締役会に少なくとも1人の女性を置く必要があります。最近の評価では、ナスダック上場企業の約75%(主にハイテク関連および成長企業)が基準を満たしていないことがわかりました。
新政策は、民間における女性のリーダーシップを保証するための大きな一歩であり、人種的多様性並びに、LGBTIQ+として性自認している少なくとも1人の理事を含めることも必要としています。
9. 10月に世界保健機関(WHO)が、ヘンリエッタ・ラックスの貢献を評価
WHOは、黒人アメリカ人の女性ヘンリエッタ・ラックス、と彼女の母親の遺産を称賛しました。
ラックスは1951年に子宮頸癌で死去しましたが、彼女の死後、彼女から採取された細胞は、世界中で商品化され、配布されました。HeLa (Henrietta Lacks)細胞は約75,000件の研究に貢献し、ポリオワクチン、HIV/エイズ薬、体外受精や重要なCOVID-18研究の突破口になるなど、医学全体の進歩に道を開いています。ヘンリエッタ・ラックスの生涯と遺産を認識することで、WHOはグローバルヘルスにおける不平等と不当な格差を是正し、排除するための集団行動を求めています。
スポーツ
10. 最もジェンダー平等なオリンピック
コロナ禍により、1年遅れで、東京2020オリンピックが、2021年7月23日に開会しました。参加選手の約49% が女性で、オリンピック史上、もっともジェンダーバランスのある大会となりました。
各チームとも男女一人ずつは選手として参加すること、並びにゴールデンタイムに男性だけと女性だけの競技を同じように報道できるようにスケジュールしました。ちなみに1896年にアテネで開催された第1回オリンピックには女性選手は一人も参加していません。
アートとエンターテインメント
11. 女性監督やっと評価される
今年、クロエ・ジャオが「ノマドランド」でオスカーを受賞して歴史を塗り替えました。彼女は アカデミー監督賞を受賞した初の有色女性、アジア系女性となりました。女性監督の受賞は「ハート・ロッカー」(2010)のキャスリン・ビグロー以来、2人目となります。93年のオスカーの歴史の中で、監督賞を受賞したのはたった7人です。これには今年初めて監督賞を受賞した2人、ジャオとフェネルが含まれています。
ゴールデングローブ賞でも3人の女性が監督賞を受賞し、女性監督の業績がたたえられました。同じ年に一人以上の女性がショートリストされるのは始めてで、77年の歴史の中でも女性は5人しかノミネートされていません。
12.オランダの美術館が女性アーティスト作品を常設展示
200年の歴史の中で初めて、アムステルダムにあるライクス・ミュージアムは、女性アーティストによる17世紀の絵画3点を常設展に加えると発表しました。ユディト・レイステルによる「セレナーデ」、ゲーシア・テル・ボルフによる「モーゼスの遺影」、ラッヘル・ライスによる静物画「ガラスの花瓶にいけた花」が現在は名誉ギャラリーに並んで展示されています。
13.レゴ、おもちゃのジェンダー差別を廃止
レゴは、「ジーナ・デイビス・ メディアにおけるジェンダー研究所」に委託した調査に基づき、おもちゃのジェンダー差別を廃止し、「少女向け」「少年向け」のラベルをやめるなどの新しいマーケティングに移行することを発表しました。またどの子どももおもちゃのキャラクターに自分を結び付けることができるようキャラクターの多様性を拡大します
女性がアクションをリード
14.「平等を目指す全ての世代のためのフォーラム」、アクションを加速するための道筋をつける
3月にメキシコで開幕し、7月にパリで閉幕した平等を目指す全ての世代のためのフォーラムは、政府、市民社会、慈善団体、民間部門、若者アクティビストを一堂に集め、ジェンダー平等を加速するための5年計画を立てました。UN Women主催、フランスとメキシコが共催するフォーラムではUSD400億にも及ぶ投資や野心的な政策・プログラムへのコミットメントが約束され、特に世界がCOVID-19の影響を査定する中で、女性の権利や平等運動の決定的瞬間を記しました。
15.マリア・レッサ、ノーベル平和賞受賞
マリア・レッサは、言論の自由を守ったことで、ドミトリー・ムラトフとともに2021年のノーベル平和賞を受賞しました。調査報道ジャーナリズムに特化したデジタルメディア会社を創設したレッサは、フィリピンの権利濫用を暴くジャーナリストとして長く活躍しました。彼女は1901年創設以来、18番目の女性ノーベル平和賞受賞者で、フィリピンでは最初です。
16.アフガニスタン女性、権力者に対して真実を訴える
2021年8月15日、カブールはタリバンの手に落ち、アフガニスタン人、特に女性・少女の人生に大きな影響を及ぼしました。少女は中学に通うことを禁止され、女性は仕事を続けられなくなり、女性に対する暴力は増加しています。それでも女性達は抗議デモに繰り出しました。人権を守るために他のやり方で声をあげ続けた人たちもいました。アフガニスタンの女性国会議員、女性人権擁護活動家、ジャーナリスト、市民団体リーダー及び研究者から成るグループは、ニューヨークの国連安保理が開催した女性・平和・安全保障に関する公開討論に出席し、人道支援、平和構築、ガバナンスに女性の完全かつ平等な参加を求めました。
詳しくはこちら:Sixteen defining moments for gender equality in 2021 | UN Women
カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会