西アフリカの女性に対する暴力撤廃に、伝統的な指導者たちと連携して取り組む

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2022年2月13日

                                                                  2021/11/26

リベリアとナイジェリアでは、社会規範を変え、女性と少女に対する暴力撤廃に必要とされる重要な変化を促すには、伝統的な指導者の役割が鍵となります。

「私たち伝統的施術師は、年長者の前でどう振る舞うべきか、例えば髪を編んで控えめにするようにといったことを少女たちに教えていました」と、リベリアの北東に位置するニンバ郡のコミュニティーリーダーで、女性性器切除(FGM)の元施術師であるケマ・ダーンさんは説明します。「私たちは、もうFGMの施術は行っていません。その必要がないことに気付いたからです。現在は、農業とビジネスに専念しています」。

リベリア、グランドケープマウント郡ティエニーで、「代替生計手段プログラム」のワークショップに参加するFGMの伝統的施術師たち。写真:UN Women

リベリアの少女と女性(15歳から49歳)の50%が、有害な慣習であるFGMの施術を受けており、中には本人の承諾を得ていないケースも多くあります。ダーンさんは、「代替生計手段プログラム」の恩恵を受けた300人の伝統的施術師の一人です。このプログラムは、女性と少女に対する暴力をなくすためのEUと国連による複数年にわたる「スポットライト・イニシアチブ」の一環として、UN Womenが2019年に始めたものです。

FGMは、文化的な理由の他に、経済的な理由から行われることも多くあります。そこで、この生計手段プログラムでは、FGMの施術師に、気候変動に対応した農業と経営管理の研修を提供し、FGMに代わる収入源を確保できるようにしています。

「自分で仕事を始める力を付けることで、このような伝統的な慣習を放棄することができると思います」と、ダーンさんは話します。「これまで、農業についてよく知りませんでしたが、農業ビジネスの開発と管理に関する新しいスキルを学んだおかげで、別の収入源を得るすばらしい機会が得られました」。

FGMの元伝統的施術師のヤッタ・ファーンブレさん。リベリア、グランドケープマウント郡ティエニーにて。写真:UN Women

ヤッタ・ファーンブレさんは、リベリア北西部のティエニーに最大規模のブッシュスクールを所有し、そこでFGMを含む一連の儀式を通して少女たちを成人へと導く役割を担っていました。彼女がブッシュスクールを閉鎖した後、その場所には、生計手段プログラムの一環として、新しく職業訓練・遺産センターが建てられました。

「35年が経ち、私も変わる時がきました。これまで続けてきたいつもの生活の他に、学ぶ機会や定期的な収入を得る機会が得られ、嬉しく思います」と、ファーンブレさんは話します。「この新しいプロジェクトは、リベリア中のすべての伝統的施術師にとって、すばらしいチャンスだと思います」。

社会規範を変えていくには、伝統的な指導者の役割が重要

伝統的な指導者は、好ましくないジェンダー規範を永続させ、女性と少女の健康と安全を阻害する有害な文化的慣習に取り組むため、コミュニティに協力をする強い立場にあります。西アフリカで、女性や少女に対する暴力をなくし、女性のエンパワーメントを促進するためには、伝統的な指導者と対立するのではなく、連携することが極めて重要です。

2020年10月、ジェンダーに基づく暴力の根絶に焦点を当てた成文法の制定と強化が進んでいたにも関わらず、リベリアの大統領は、レイプを今後2年間(2020年から2022年まで)の国家非常事態と宣言しました。リベリアのジェンダーに焦点を当てた法律は、伝統的な指導者やコミュニティーリーダーが、その法律について正しく理解していないことが原因で、一部、適用や施行が妨げられてきました。

そのため、2020年には、生計手段プログラムに加えて、伝統的な指導者125人(女性51人、男性74人)に、家庭内暴力、相続、レイプに関するリベリアの法律についての講習が行われ、受講者たちは、女性に対する暴力の根絶には正式な法的枠組みを使うことを全面的に支持するという決意書に、署名しました。

現在この指導者たちは、スポットライト・イニシアチブの一環として、変化を推進する活動をしています。新型コロナウイルス感染症の拡大時には、このうちの10人にバイクが支給され、彼らはグランドケープマウント郡の遠隔地におけるFGM防止活動の監視と報告に協力しました。

2021年6月、近隣国のナイジェリアで、アフリカ伝統文化指導者評議会(COTLA)が、ナイジェリア国内における女性に対するあらゆる形態の暴力と有害な伝統的慣習の根絶に向けて、一層努力することを約束しました。

ナイジェリアで、女性に対するあらゆる形態の暴力や有害な伝統的慣習を根絶するための取り組みを強化する公約を示す、アフリカ伝統文化指導者評議会(COTLA)のメンバーたち。写真:UN Women、ファレマ・オランレワジュ

COTLAの設立と定期会合の開催は、スポットライト・イニシアチブの支援を受けています。COTLAの総議長であるアデダポ・アデレミ国王陛下は、最近行われたUN Womenとの会合で、悪しき社会規範や固定観念を変えるために伝統的な指導者が果たすべき役割について述べました。

「ロックダウンの影響で、女性と少女に対する暴力という影のパンデミックが著しく増えていることが報告されています。さらに、児童労働や性的搾取・性的虐待も増加しています。私たちCOTLAは、傍観者ではありません。地域における早婚や児童婚をなくし、安心できる場所を作るための法律や政策の制定を積極的に支持しています」。

 COTLAは、古くからの慣習の「マネーワイフマリッジ」(両親や祖父母の借金を清算するために少女を結婚させること)の撤廃に取り組むなど、好ましくない行動様式や有害な伝統的慣習を変えることに継続的に貢献しています。

リベリアとナイジェリアの両政府は、「ジェンダーに基づく暴力に取り組む、平等を目指すすべての世代の行動連合」に参画し、2026年までに防止戦略を前進させ、強化することを約束しました。この行動連合は、ジェンダーに基づく暴力の根絶に向けて、有効性のある政治的協定を作り、長期的な変化を促すことを目的とした、初めての世代を超えたマルチステークホルダーのプラットフォームです。

「FGMは、女性と少女から、自分の可能性を最大限に発揮する力を奪ってきました。私たちは、FGMを含む女性と少女に対するあらゆる形態の暴力を防止する努力を強め、平等を目指すすべての世代の行動連合の公約を自分たちの責務とするよう、リベリアの全国民に呼びかけます」と、UN Womenリベリア代表のマリー・ゴレス・ニジガマさんは話します。

この活動は、女性と少女に対するあらゆる形態の暴力をなくすための、EUと国連によるグローバルな複数年にわたるパートナーシップ「スポットライト・イニシアチブ」のもと、UN Womenが支援をしています。アフリカにおいて、スポットライト・イニシアチブは、有害な慣習を含む、性暴力およびジェンダーに基づく暴力の根絶をめざしており、現在、地域全体でFGMと児童婚に関する既存のイニシアチブを強化しています。

                                                                   (翻訳者:祖父江 美穂)

カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会

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