解説:女性が気候変動対策の中心に必要なのはなぜか

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2022年5月12日

2022年3月1日

2019年9月に行われた若者主導のグローバル気候マーチに向けて抗議のプラカードを作るニューヨークの若い女性。写真:UN Women/アマンダ・ヴォワサード

平等な利益の分配を実現するためには、現在気候変動の影響を最も受けている人々、すなわち女性や少女、社会から取り残されたコミュニティの人々が、気候変動対策の設計と実施に関与する必要があります。

女性は、特に地域レベルにおいて女性ならではの知識と経験を持っているので、意思決定プロセスへの女性の参加は、効果的な気候変動対策にとって極めて重要です。2019年のある調査から、女性の国会議員が増えると、より厳しい気候変動政策が採択され、結果として温室効果ガスの排出量が減少することがわかりました。地域レベルでは、自然資源管理への女性の参加が、資源のより良い管理と保全につながっています。

生産資源への女性のアクセスを拡大することで、農業生産と食料安全保障を向上させ、二酸化炭素排出量を削減することができます。すべての女性小規模農家が生産資源を平等に利用できれば、その農作物の収穫量は20%から30%増加し、1億から1億5000万人を飢えから救うことになります。また、収穫量の増加は、さらなる森林伐採を迫る状況を改善し、温室効果ガス排出量の増加を抑制することにつながります。

企業における女性のリーダーシップは、気候変動に関する透明性の向上と関連があります。役員に占める女性の割合の高さと炭素排出量の情報開示には、正の相関が見られます。

気候変動に対して共同で効果的な行動を起こすには、経済的価値の創出と測定の方法を大きく変える必要があります。資源採掘を中心とした化石燃料経済からの移行は、新しい雇用を創出し、女性労働者に新しいスキルを身につける機会をもたらします。また、ケア部門への投資を増やすことは、社会全体の幸福へと重点を移し、温室効果ガスの排出量を増やすことなく経済を強化するのに効果的です。

最後に、性と生殖に関する健康と権利は、気候対策におけるジェンダー平等の実現に不可欠です。各国は、性と生殖に関する保健サービスに対する現在の需要を満たすべく医療体制を強化することで、環境と生物多様性の保護、気候変動による変化への適応、そして健康、教育、ジェンダー平等分野での気候変動緩和において近年得られた成果を守ることができるでしょう。

ボスニア・ヘルツェゴビナのサラエボ大学理学部で生態学を教えるセンカ・バルダノビッチ教授。写真:UN Women/レナ・エフェンディ

ジェンダー平等を気候変動対策の中心に据えることの意味は何か?

ジェンダー平等を気候変動対策の中心に据えることは、気候、環境、防災に関する包括的で永続的な政策やプログラムに、多様なジェンダーの視点を統合することを意味します。

意思決定プロセスへの女性と少女の完全で平等な参加は、気候変動と闘う上での最優先事項です。今、ジェンダー平等が実現できなければ、持続可能でより平等な未来は永遠に手に入らないでしょう。

また、気候変動対策として、ジェンダーと気候の関係を明確にするためにジェンダー別の統計やデータに投資をして改善し、土地の権利を強化・行使し、女性に焦点を当てた女性主導の持続可能な対策、なかでもその土地に古くから暮らす人々による草の根レベルでの自然に基づいた対策、資源管理、食料生産活動を促進する必要があります。

エクアドルにあるアンデス山脈のパラモ生態系では、長年にわたる砂漠化と過剰放牧により、広大な土地が痩せて作物が育たなくなってしまいました。そこで、先住民女性たちが、持続可能な農業生産と景観管理を通して、この脆弱な生態系を健全な状態に回復させようとしています。また、この女性主導の取り組みは、ジェンダー・ステレオタイプをなくし、女性がコミュニティの意思決定プロセスに貢献できるよう後押ししています。「パラモ生態系のプロジェクトから、気候変動と持続可能な開発への対策は女性抜きでは語れないことがわかります」と、UN Women エクアドル代表のビビアン・アイドさんは話します。

自身が立ち上げたDrop Accessが地元の材料で製造した、太陽光発電を利用したコロナワクチン低温輸送・保管用のVacciboxとポーズをとるノラ・マゼロさん。写真:英国王立工学アカデミー/GGImages/アリサ・エヴェレット

最後に、気候変動対策においては、ジェンダーの視点に立った資金提供が必要です。「公正で環境に配慮した持続可能な社会への移行を実現するためには、女性主導の活動に対して十分かつ公平に資金を提供する必要があります」と、ケニア出身の機械技師で再生可能エネルギー技術の専門家でもあり、オフグリッドエネルギー(電力会社などの送電網につながっていない 太陽光発電システムやご当地電力)技術の設計と管理の経験を持つノラ・マゼロさんは話します。 より持続可能な明日を築くには、再生可能でクリーンなエネルギー資源の利用を拡大する技術に投資して促進させるとともに、その開発と利用に女性が参加できるようサポートしなければなりません。「ジェンダーに焦点を当てた、平等で公平な気候変動対策を提唱し推進し続けてきた勇敢な女性たちを認め、称賛し、広く紹介して応援しましょう」とマゼロさんは話します

80年前から続く自宅の農場で作物の手入れをするレバノンのリマ・チャバン・マスードさん。写真:UN Women/ジョー・サード

女性による女性のための気候変動対策を支援するために何ができるか?

気候変動がもたらす影響の範囲と規模は計りしれませんが、あなたの言動によってコミュニティに真の変化を起こすことができます。

気候変動に対して行動を起こしている地元の女性主導の組織、企業、協同組合の活動への支援を検討してください。また、あなたの声と一票で、リーダーに責任を自覚させ、公平で永続的な未来を築くための取り組みを強く要求しましょう。

気候変動の最前線に立つ女性と少女たちの話や活動を広く紹介することで、地球環境改善を図る次世代のリーダーたちに、パワーとプラットフォームを提供しましょう。#IWD2022を使ってソーシャルメディアでの会話に参加し、ジェンダー平等を考慮した気候変動対策をどのように支援するかを共有しましょう。

                                              翻訳者:祖父江 美穂

カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会

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