「女性と子どもたちのために働くことが、私の未来への希望です」(スリランカ警察)

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2022年6月9日

2022年5月6日

L.D. W サンジーワニさんの肖像画。イラスト:UN Womenスリランカ/アキラ・ウィーラシンゲ

性的暴力とジェンダーに基づく暴力に対処することは、「女性・平和・安全保障のアジェンダ」の不可欠な側面です。L.D. Wサンジーワニさん(46歳)は、スリランカの北中部州にある、ポロンナルワ警察署の主任警部です。これまで25年以上にわたって暴力の被害者を支援してきました。

なぜこの仕事に就いたのかと尋ねられるたびに、はっきりと思い出す場面があります。それは私が小学校の2年生か3年生の時のことです。自宅で起きたある事件のために、母とともに警察署を訪れました。そして、母と話をしていた女性警察官の姿に心を奪われました。その威厳ある態度、そして彼女が身に着けていたバッジ。その時、大きくなったら彼女のような警察官になりたいと思ったのです。

その後、1997年に巡査部長になり、国民の安全と治安を守る道に入りましたが、女性が権威ある役職に就くためには多くの障害があり、決して容易な道のりではありませんでした。内戦(1983年~2009年まで続いた民族紛争)中は特別機動部隊に所属して厳しい訓練を受け、紛争が女性と子どもに壊滅的な影響を与えている状況を目の当たりにしました。警察官として働くことは、決して楽なことではありませんでした。

内戦終結後は、ドメスティックバイオレンスの被害者を助ける仕事をしています。ここ数年は新型コロナウイルス感染症の蔓延によって、夫婦が長期間、一つ屋根の下にいることを余儀なくされ、夫に殴られたという妻からの訴えが増えています。通報を受けると、多くの場合、加害者(夫)を逮捕します。妻が怪我を負っている場合は、入院させるか安全な場所に避難させます。その後、法廷闘争が始まります。

加害者が警官に連行される傍らでドメスティックバイオレンスを受けた女性を慰めるサンジーワニさん。イラスト:UN Womenスリランカ/アキラ・ウィーラシンゲ

このようなプロセスは、特に子どもたちに深い心の傷を負わせます。なぜなら、誰が子どもの面倒をみるかという問題が生じるからです。多くの場合、母親は身体的にも精神的にも傷ついているので子どもの面倒をみることができず、父親は刑務所にいます。これからどうすればいいのかという難しい状況によく直面します。父親を刑務所に入れながら、一方で子どもたちを別の刑務所に入れることになるのでしょうか?このような矛盾を解決するためには、制度を改革し、被害がさらに拡大しないようにしなければなりません。見逃されがちで適切なケアの妨げとなっているもう一つの問題は、被害者の精神的影響を顧みず、放置することです。適切な対処を怠ると、のちに心的外傷後ストレス障害(PTSD)や依存症など、他の問題につながる恐れがあります。それを防ぐには、心理社会的な支援を提供し、被害者と加害者の双方を対象にした社会復帰のためのリハビリセンターを設立する必要があります。

構造改革も重要ですが、この問題はより深刻な社会的問題も反映しています。他人を傷つける傾向がある人は、感染症の拡大や夜間外出禁止令の有無に関係なく、いずれ何らかの形で問題を起こすでしょう。長年の経験からわかったのは、女性に対する暴力の根本的な原因は、女性が果たすことを期待されている役割と、その期待に基づいて社会が女性を下に見たり、尊重したりすることにある、ということです。このような態度は、根本的に改めるべきです。

警察官として、被害者の安全と保護を確保する最もわかりやすい方法は、加害者と被害者の接触を制限することです。しかし、UN Womenの多者間対話*に出席して、女性の経済的なエンパワーメントを保証することも、同じくらい重要であることがわかりました。女性が自立するためのビジネストレーニングやプログラムが有効なのはそのためです。戦争や紛争など、多様な状況下での安全と安全保障の問題を学び、特に、各国がどのようにこれらの問題に取り組んでいるかを知りました。それによって、女性たちの意見を届け、彼女たちを守り、女性が必要とする援助を提供することがいかに重要であるかということが理解できました。私はこれからもずっとこの分野で働き続けます。私たちが女性の権利のために立ち上がらなければ、誰が女性を守るのでしょうか。

* UN Womenが主催する多者間対話(MPD)は、女性指導者、政府関係者、CSO、宗教指導者、メディアなど、さまざまな利害関係者を共通のプラットフォームを通じて結び付けることを目的としています。L.D.Wサンジーワニさんは、2021年10月開催の一連の対話に参加しましたが、その対話には全国からさまざまな利害関係者が集まりました。MPDは、女性の福祉に影響を与える地区レベルの問題を特定し、「女性・平和・安全保障」に関連する政策の実施に取り組むためのソリューションを共同でみつける機会を提供しました。

MPDは、日本政府が資金提供する「スリランカにおける女性・平和・安全保障アジェンダの実施計画」というプロジェクトの一部です。

(翻訳:松本香代子)

カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会

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