インタビュー: 「ウクライナの戦争が女性たちの活動を変えることはあっても、止めることはありません」

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2022年6月15日

2022年5月17日

国連女性に対する暴力撤廃信託基金のブログ投稿より

ウクライナ女性基金(UWF)のオレシア・ボンダル事務長が、今の危機がウクライナの女性と少女に及ぼしている影響と、人道的危機にあり、様々な問題が絡み合う状況下で市民社会団体や女性の権利団体が果たす重要な役割について国連信託基金に語ってくれました。

UN Womenが運営する国連女性に対する暴力撤廃信託基金は、危機にさらされている市民社会団体と女性の権利団体の安全を最優先としながらも支援に全力を挙げています。戦時下における対応の一環として、国連信託基金は現在の危機の中で暴力を受けた女性と少女のために活動を続け、これまでに助成金を提供した団体を支援しています。それらの団体のうちで、ウクライナ女性基金は、ウクライナ国内のフェミニストネットワークや連合のニーズを満たし、女性と少女に支援が行き届くようにその運営を変革しています。

ウクライナ女性基金の緊急対応助成金は、女性の権利団体やフェミニスト団体が戦闘の激しい地域から市民を避難させ、シェルターを提供し、砲撃から守るための住宅改修を援助することを支援しています。また市民社会団体、ボランティア団体、企業、政府の間で交流するシステムの構築にも活用されています。写真はウクライナ女性基金からの提供。

紛争の激化が女性と少女に及ぼしている影響とは。新たな現象として見えているものとは。

女性と少女は家を追われ、避難する中で殺害、レイプ、人身売買、負傷、感染症といった危険と隣り合わせでした。家やシェルターにとどまる決意をした女性と少女も、同様の試練に直面しました。

何とか生き延びた多くの女性と少女は、子どもや年老いた親族、障害のある家族の世話をしながら、住む場所や生計を立てる方法をずっと探しています。彼女たちの多くは働いてお金を稼ぐ機会を失いました。心や身体に負った傷のケアがまだ必要な人もたくさんいます。

仕事があるため自宅を離れられない親が、子どもだけでもより安全な場所で暮らせるようにと年老いた親族のもとへ避難させることが多くなっています。16歳のリザさんはイジュームから避難した後、言葉を発することができませんでした。やっと話せるようになると、自分の母がオデーサにいることを明かしました。リザさんは何週間も眠れませんでした。寝ているうちに死んでしまって、もう母親と抱き合うことができないのではと恐れていたからです。

この危機が進行する中、女性の権利団体が果たしている役割とは。

ウクライナの戦争は、女性やフェミニストの活動を変えることはあっても、止めることはありません。それどころか、活動を発展させる私たちの取り組みのほとんどを新しい形に変えています。


シングルマザーや子どもの多い母親を対象にしているUWFの支援団体は、負傷した人、障がいのある女性、移動手段が限られた女性と少女を救い出すためにドネツク州の戦闘地域にとどまっています。
この団体のリーダーは4人の子どもをもつ母親ですが、ボランティア団体の他のメンバーとともに人々を車で移送しているときに、砲撃の標的となって被弾しました。それでも、彼女は意識を失うまで運転を続けました。
彼女は「運転を続けることで、女性は恐怖に屈しない、すべての活動をそのまま継続することができるということを皆に示したかったのです。そうすることで、他の女性を元気づけ、男性に勇気を与えられるからです」と語りました。

現在、彼女は病院から団体の活動を調整しています。また、救助された母親の中には、寝る場所や食べるものを奪われた人たちを救出するために団体にとどまる決意した人もいると彼女は話してくれました。
加えて、女性の権利団体や人権擁護者が、戦争犯罪を確実に記録するようにしています。

ウクライナ女性基金から助成金を受けた団体は、ドネツク州とルハンスク州の戦闘地域から逃れた人々のためのシェルターに生活必需品を提供しています。写真はウクライナ女性基金からの提供。

UWFはどのように女性の権利団体を支援しているのでしょうか。また、いま団体が必要とするものとは。

UWFは現在、女性やフェミニストの団体が効果的で体系的な対策を進められるよう、以下のような支援を行っています。

  • * 人道援助を最も必要な場所に集めて分配し、女性軍人を派遣する
  • * 人々を避難させ、シェルターをつくる
  • * 家を追われた人々、ボランティア、当局の移動を調整する
  • * 犯罪を記録する
  • * 軍の侵略の被害者と目撃者に対する医学的、心理的なサポートの体制をつくる
  • * 命を守り、地域社会が避難民を受け入れるための情報を収集し伝達するシステムをつくる

2月28日、UWFはロシア軍のウクライナ侵攻による危機を受け、助成金の公募を発表しました。この助成金は、女性やフェミニストの非政府団体が、立場の弱い女性と少女のニーズに的を絞って緊急の人道問題に対応するのを支援するものです。

今後1か月にわたり、UWFは重大な人道的課題に対する緊急対応助成金の提供を続けます。また、女性やフェミニストの団体を対象とする制度的支援助成金だけでなく、団体同士のネットワーク強化や、他国の団体と連携するための助成金も用意しています。私たちは、女性と少女が戦争の試練を乗り越え、その未来への影響を緩和するための対策を日々模索し、実行しています。また、UWFは「女性と平和・安全保障の国家行動計画」を戦時下の状況に合わせて、実施することに取り組んでいます。

私たちは、支援をしたいと思っている個人や団体に対して、女性やフェミニストの団体にタイミングを逃さずリソースを提供し、危機に対する体系的な対策に投資するよう呼びかけます。

UN Womenは、非常に多くの死、破壊を目にし、居場所を奪われて苦しんでいるウクライナのすべての市民、なかでも、紛争によって女性であるがゆえにより大きな影響を受けてしまう女性と少女の安全と幸福に関する国連事務総長の懸念を共有しています。

UN Womenは、情報へのアクセス、安全と安心、生活必需品、住む場所、生計を立てる方法など、女性がまず必要とすることの支援に取り組んでいます。UN Womenは、緊急ジェンダー評価を通し、戦争とその影響に関するジェンダーダイナミクスの最新のデータと分析を生かせるようにしています。モルドバとウクライナにおいて、戦争の影響を受けた住民全体を支援し、避難民の女性と少女にエッセンシャルサービス(欠かすことのできないサービス)を提供する女性の市民社会団体を支援しています。

(翻訳者・早乙女由紀)

カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会

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