マブーバ・セラジさんの言葉「私たちは希望であり、アフガニスタンをひとつにまとめる力です」

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2022年9月12日

2022年8月12日

私はマブーバ・セラジ。74歳です。アフガニスタン在住で、女性の権利擁護のために活動しています。歴史を専攻した者としてアフガニスタンにとどまることを選んだ私は、この12か月間、この国と国民に起きていることを目の当たりにし、アフガニスタンをより良い国に、私たち皆のアフガニスタンにするために活動してきました。

世界的に有名な女性の権利活動家の一人であるマブーバ・セラジさん。女性を中心に据えた人道危機対応の実施に関するUN Womenとの会合で語る。2022年1月、アフガニスタン、カブールにて。写真: UN Women/オルグタ・アンゲル

2021年8月15日、私はアフガニスタンの自分の事務所にいました。タリバンによる侵攻が始まった瞬間からすべてを目にしてきましたが、初めの数日は特に恐ろしい思いをしました。アフガニスタンは混乱に陥り、人々はあちこちに逃げまどい、事務所は閉鎖していきました。私たちが20年間かけて築いてきた民主主義が、たった24時間で崩れ落ちました。私の目の前で。その時、真っ先に頭に浮かんだのは、アフガニスタンの女性はこれからどうなってしまうのだろう、私たちはどうすればいいのだろうということでした。8月15日を境に、アフガニスタンの女性は人間として認められなくなり、女性の権利の居場所はどこにもなくなってしまいました。

私は1978年に一度だけ、自分の国を離れるのを余儀なくされたことがあります。まだ若く、エネルギーがあった私はアフガニスタンにとどまりたかったのですが、政権を奪った勢力のために国を離れざるを得ませんでした。でも今回は違います。現在私はアメリカの市民権を持っています。今は、姉妹を残し、私が愛し、大切に思っている人たちを置き去りにしてアフガニスタンを離れる時ではないと考えました。他に頼るもののない人たち。自分の存在がそういう人たちの力になるかもしれないと考えました。ですから、ここにとどまることにしたのです。そして、二度と難民にはならないと決意しました。

人生において、私はいつも歴史の目撃者でありたいと思ってきました。実際多くのアフガニスタンの歴史的な出来事が、私の目の前で起こりました。74歳なので、美しいものと災害、栄光と破滅、そしてその間のすべてを見てきました。私はここにとどまって、歴史上の他のあらゆる出来事と同じように、今の状況も過ぎ去っていくということを皆に伝えたいと思いました。

アフガンの女性の生活は180度転換しました。私たちが20年間懸命に取り組んできた民主主義がなくなっていくのと同時に、アフガンの女性が自国のために取り組んできた仕事もなくなっていきました。アフガニスタンの女性は、医師、裁判官、看護師、エンジニア、会社の経営者などの社会の一員として働き、生活のあらゆる面に携わっていた存在から、まったく無になってしまいました。女性が持っていたあらゆるもの、高校に通うという最も基本的な権利までもが奪われてしまいました。このことは、女性の存在を望まないと言っているように私には思えます。兄弟は私たちを助けてくれず、取り残された私たちは死に絶えていくしかありません。

アフガンの女性は世界の中でも最も賢くて強い女性で、そのレジリエンスを壊すことはできません。ただ、これまで多くの取り組みが行われてきましたが、その都度、ゼロからやり直す必要があり、そのせいでとても疲弊してきています。しかし、やるべきことはやらなくてはならず、やるしかありません。政権が私たちの存在を望まないからといって、私たちは止まるわけにはいきません。私たちは確かに存在し、ここにいるのですから。私たちは自分たちの力でどんなことでもできます。そして、世界は私たちの味方であり、私たちを見捨ててはいないのです。世界から支援を受けています。たとえばUN Womenは、カブールでの私のセンター運営を支援してくれています。また、アフガン女性のディアスポラ(各地に四散した女性達)や世界中にいる女性の友人も支援してくれています。

1つだけ、はっきりと申し上げたいことがあります。アフガニスタンの女性に起きていることは、世界のどこでも起こりうるということです。ロー対ウェイド判決の破棄によって長年の進歩が台無しになり、自分たちの身体に関する女性の権利が奪われました。各地で女性の権利が奪われており、気をつけなければ、世界のすべての女性が同じ運命をたどるでしょう。

アフガニスタンの女性はみな立派です。ただ生き続けているだけで、家族を養っているだけで、そして、いつかきっと事態はよくなるだろうという希望を持ち続けているだけで。私は、すべてのアフガン女性から感銘を受けています。国内にいる女性、そして心を痛めながら国外にいる女性のいずれからもです。国外にいる女性たちもまた、仕事、これまで築いてきたもの、守ろうとしてきたものが日々崩れていく中で悲しみに暮れています。

世界は私たちを、どこかの国の二流市民としてではなく、アフガニスタンの女性として見なくてはなりません。私たちは、多くの過ちを犯してきた国の女性です。世界は私たちのことを知っています。ここ20年の間、私たちは自分たちが何者であるか世界に示してきました。私たちが再び立ち上がるのに力を貸してください。アフガニスタン国内で立ち上がろうとする人たちには、ここで立ち上がれるように。もうアフガニスタンでは暮らすことができない人たちには、出国して国外で立ち上がれるように。私たちを導くのではなく、私たちの後ろ、私たちの隣に立って、私たちができることを見守ってください。

私たちは希望であり、アフガニスタンをひとつにまとめる力です。さあ動き出しましょう、今こそ全身全霊をかけてやりましょう。世界は、私たちが受けてしかるべき敬意を払うべきです。私たちは両手を伸ばして助けを求めています。

かつて世界が暗黒になり、二度と日が昇ることはないと思えるような時代がありました。しかし、永遠に続くものなど何もありません。これは私が心から信じる人生観です。私には希望があります。希望を持たなければなりません。アフガニスタンがより良い国になり、その住民、私たち皆のアフガニスタンになるという大きな希望を持っています。

いつか私はこの世を去ります。でも、今後何世紀にもわたって世界各地の勇敢な若い女性が私のストーリーを語り、私のように声を上げる女性を何世代も育ててくれること。これが私の希望です。

UN Womenは、アフガニスタンの現地で日々女性と少女の支援を行っています。私たちの国内戦略は、暴力を経験した女性への支援をまだ届いていない州に拡大することから、エッセンシャルサービスを届ける女性人道活動家の支援や女性主導のビジネスへの創業資金提供といった女性への投資を軸にしています。ただ、アフガニスタンの女性運動の再建という目標が、私たちの活動の中心であることに変わりはありません。

(翻訳者:早乙女由紀)

In the words of Mahbouba Seraj: “We are the hope, we are the power keeping Afghanistan together”. | UN Women – Headquarters

カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会

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