ウクライナの法律専門家、ラリサ・デニセンコさん:「性的暴行は脅迫、拷問、屈辱の戦術の1つです」

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2022年10月6日

2022年6月17日

ジャーナリスト、弁護士、人権活動家として活躍するラニサ・デニセンコさん。キーウ(ウクライナ)のNGO女性弁護士会JurFem創設者のひとりです。写真:オルガ・ザクレフスカ

ラニサ・デニセンコさんはジャーナリスト、弁護士、人権活動家で、ウクライナの女性弁護士会JurFemの共同創設者です。戦争が始まる前、デニセンコさんをはじめJurFemは、おもに法曹界における女性のリーダーシップを提唱し、助言や指導を行ったり、ドメスティックバイオレンスやジェンダーに基づく差別に関する裁判を戦略的に行えるよう支援したりしていました。その活動は今、ウクライナでロシア軍が行ったとされる紛争関連の性的暴力の被害にあった人々の利益を代弁するまでに広がっています。

「侵攻が始まった当初は、難民や国内で行き場を失った人たちを対象に、手続きや必要書類などの法的なアドバイスをしていました。3月に入ると相談内容がガラリと変わりました。男性も女性も(ほとんど女性でしたが)相談窓口に電話をかけてきて、本人もしくは身近な人が戦禍で性的暴力を受けたと訴えてくるようになったのです。

紛争に関連して生ずる性的暴力(CRSV)はもちろん、あらゆる暴力は力関係と支配に関わるものです。加害者は自分の力を誇示して優位に立とうとします。戦時下や武力紛争の中で性的暴力が頻繁になされるのはそのためです。このような暴力、またその暴力が罪に問われないことの根源は、ドメスティックバイオレンスにあります。だからこそ、今のような状況下でイスタンブール条約を批准することが極めて重要です。女性の主体性を否定する女性と少女への暴力を、取りたてるほどのことではないと放っておくわけにはいきません。

CRSVを受けた人々に新たな苦しみを与えることのないよう、メディアや公務員、活動家たちがジェンダーに配慮した報告の基準を厳守することも大変重要です。これは、さらなるトラウマを防ぐという点から、また個人が特定できないようにするという点からも重要です。個人の特定は、戦時下においては命に関わるほど重大だからです。

戦争は押しなべて非常に男性的なものです。交渉を確実に進展させ継続させるためには、女性が交渉団に参加しなければなりません。一般市民に対する誠意ある行動の確約、男性・女性捕虜への性的暴力(およびその脅迫)の禁止を、関連文書に公式に記載する必要があります。避難中もしくは一時的に占領された地域にとどまる女性、男性、子供たちが性的暴力、脅迫、武力による脅しを受けることは断じて容認できません。

私は、ウクライナの大統領や国防大臣がしばしば自国の「女性兵士と男性兵士」について言及することを好ましく思います。これは男性も女性も等しく防衛活動に貢献していることを認める重大なメッセージです。今は女性の声が以前より大きくなったように感じますが、だからといって女性への支援をやめてはいけません。女性の有意義な参加を確かなものにするために、なすべきことはまだたくさんあります。

今日までに私たちがジェンダー平等で成し遂げたことを維持するのがとても大切です。バランスを保ち、誰も取り残さないようにしなければなりません。女性はボランティアや医師として働いています。ウクライナでも他の国でも、女性は地元のビジネスを支え、教育を行い、子供や年老いた家族の世話をしています。軍隊において、ウクライナの女性は男性と同じ条件で防衛に携わっています。また、外交努力に女性が貢献していること、情報、文化、その他の最前線で働く女性がいることを忘れてはなりません」。

UN WomenはウクライナのCRSV被害者の支援、さらにこのような犯罪を防ぐ重要な要素である司法と説明責任を確保することを目指し、NGO団体JurFemと提携して「JurFem:サポート」イニシアチブを立ち上げました。このイニシアチブでは、CRSV被害者が心理的援助だけでなく、無料の法律相談やさらなる法的支援を受けることができます。

本記事は、スウェーデン政府の資金提供によるUN Womenのウクライナプロジェクト「ウクライナのジェンダー平等達成を目指す変革的アプローチ」における一連の出版事業の一環として、Wonderzine Ukraineとのメディアパートナーシップのもとで作成されました。

(翻訳者:本多千代美)

In the words of Larysa Denysenko, a Ukrainian legal expert: “Sexual violence is a tactic of intimidation, torture and humiliation” | UN Women – Europe and Central Asia

カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会

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