生殖の権利における平等と個人の自律:インドが示す道筋

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2022年11月9日

2022年10月4日

ネットを手に魚を捕るカップル。女性は妊婦。写真:UN Women/ベッツィ・デイビス
 

著者: スーザン・ファーガソン、アンドレア・ヴォイナール

女性の同意が重要。これは、国際安全な中絶の日に行われた、中絶に関するインド最高裁判所(SC)の判決から得られた、すべての女性にとって最大の成果です。9月29日に出されたこの大胆で画期的な判決で、インドの最高裁判所は、医学的妊娠終了法(MTP)および規則について、安全で合法的な中絶サービスへのアクセスを必要とする女性や多様な性自認を持つ人の生殖に関する権利を再確認するという解釈を示しました。

この判決は、これ単独で見るものではなく、1971年のMTP法の下での中絶の合法化以来、インド人女性の身体と生殖の自律を認めるための50年間にわたるインド政府の進歩的な取り組みの上に築かれたものです。昨年、同法に歴史的な改正がなされ、中絶の制限期間が20週から24週へと拡大されました。また、この改正により、レイプ被害者、障害者女性など、中絶の対象となる女性のカテゴリーがいくつか追加されました。

9月29日の判決がタイムリーで注目すべきものである理由は3つあります。第一に、75ページに及ぶこの文書は、選択、身体と生殖の自律、つまり女性が自分の妊娠のことを自分で決める権利について、かなりのページを割いて記載していることです。国連人口基金(UNFPA)の2022年版「世界人口白書」によると、世界の全妊娠のうち約半数は意図しない妊娠であるとされています。これは目に見えない危機です。2019年から21年のインドの全国家庭健康調査によると、インドにおける家族計画について満たされていないニーズは9.4%です。したがって、妊娠するかどうかの選択肢が、こうした女性にはありません。しかし、今回のインドの判決は、望まない妊娠は生命に関わる生殖の選択(危険な中絶や妊産婦の死亡につながる健康上の問題)であり、かつジェンダーの差別や不平等の原因であり結果でもある人権問題だと認めています。

第二に、この判決はまた、「許容される性交とは何かについての家父長的な原則」はいかなる法律の根拠にもなり得ないと強調しています。そして最後に、この判決は、MTP法の範囲内において「レイプの意味には夫婦間レイプも含まれなければならない」と述べているため、おそらくインドで初めて夫婦間レイプを公式に認めたものとして歴史に残ることになるでしょう。現在、インドの最高裁が夫婦間レイプを犯罪とする請願を審議中であることから、これは重要な意味を持ちます。

一方で、この判決はインドの女性の集団的勝利というだけでなく、中絶に関する世界的な議論、特に世界最大の民主主義国であるアメリカでの同様の議論を考えても重要です。2022年6月、米国連邦最高裁判所は、中絶を米国女性の憲法上の権利と認めたロー対ウェイド裁判の判決を覆す判断を下し、議論を呼びました。今回のインドの判決は、他の国々にとっても、女性の権利と福利を保護し強化するための進歩的な法律の整備と判決に向かう道標になる可能性があります。

インドでは、女性が安全で合法的な中絶を受けることについて長い間議論されてきました。ランセットの調査によると、2015年にインドで行われた中絶は1,560万件で、そのうち81%は自宅や医療施設外で行われました。安全でない中絶は、依然としてインドにおける妊産婦死亡の原因の3位になっています。

今回の判決は、1994年に開催された国際人口開発会議において、女性のエンパワーメントと性と生殖に関する健康と権利の基本的役割が、持続可能な開発にとって重要であると強調した、世界的な公約を具体化するものです。インド政府はこれまで、特に出生前診断法(PC&PNDT法)により、男児優先の傾向がいまだ根強いインドにおいて、女児の胎児の選別的な中絶を抑制するために慎重な姿勢で取り組んできました。

さらに、未成年者やその保護者が医師に中絶を依頼する際、2012年の子どもを性犯罪から保護する法律(POCSO)により、登録医は中絶事案を警察に報告することが義務付けられているため、刑事手続きになることを恐れています。そのため、密かに無資格の医師に中絶を依頼することが往々にしてあります。しかし、今回の判決は、POCSO法とMTP法の間のこのギャップを埋めようとするもので、中絶を希望する未成年者の身元を警察に開示することを医師は免除されることになりました。

女性の権利を認めた今回の画期的な判断について、インド政府と最高裁に敬意を表します。今回の判断は、生殖の権利は女性の権利の不可分な部分であるとする国連の中心的な考え方に沿ったものです。インドにおける女性の生殖の自律に向けた次のステップは、家族計画/避妊具に対する依然として満たされていないニーズに対処し、医学的方法を含む安全な中絶サービスへのアクセスを改善することです。

国連は、すべての人が性と生殖に関する健康情報とサービスにアクセスすることができ、相互に尊重し合う関係に責任を持って関わり、身体の自律を行使することができるように、今後も引き続きインド政府を支援します。

この新しい判決は、女性が自分の権利を認識し、妊娠は必然ではなく選択であることをすべての人が理解すれば、状況を大きく変えるものになるでしょう。

(翻訳者:結城直美)

Equality and individual autonomy in reproductive rights: India shows the way | UN Women – Asia-Pacific

カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会

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