気候災害に立ち向かうアジア太平洋地域の女性たちへの資金援助を拡大しましょう

記事をシェアする

2022年12月28日

2022/11/18

サラ・ニブス、デチェン・ツェリン、アンナ・マリア・オルトープ

原文:ジャカルタポスト

パキスタンで発生した大洪水は、気候危機によって女性たちが不等に影響を受けていることを改めて浮き彫りにしました。最新の国連フラッシュ・アピールによると、3,300万人の被災者のうち、70%近くが女性と子どもです。今回の洪水は、世界中で加速度的に進行し壊滅的な影響を引き起こしている気候変動の1例に過ぎません。


ベトナムのバックカン省で行われているエンパワープロジェクトの参加者。写真:UN Women/ホアン・サオ

女性は、社会的かつジェンダーによる規範により、普段から男性よりも家族の世話を担うよう求められていますが、気候災害の発生時やその後には、そのような要求がさらに高まります。家庭で使う燃料や水の確保に割く時間も男性より長く、また、災害への備えや対応、災害から回復するための情報やリソースを入手しようとするとより多くの障壁に直面します。

災害後には、ジェンダーに基づく暴力のリスクも高まります。しかし、女性は気候行動における重要なリーダーであり、よりよい未来の世界を共有するためには、女性の関与と参加が不可欠です。

パリ協定の目標に沿って、各国が化石燃料からグリーンエコノミーに移行するにあたっては、労働市場、経済、地域社会の生活に影響が出ないようにすることが重要です。そのためには、さらなる投資が必要です。

国連環境計画(UNEP)が発表した最新の適応ギャップ報告書によると、2020年の気候変動対策資金の流れは、途上国に約束した1,000億米ドルに少なくとも170億ドル足りません。

UNEPは、途上国は、気候変動への適応策をとるだけでも2050年までに年間3,150億から5,650億ドルが必要であると試算しています。これらの資金は、代替生計手段の構築や、人々の収入と食料安全保障を災害から守ることをサポートするものです。気候変動の緩和策をとることも考慮に入れると、必要な金額はさらに増えます。

再生可能エネルギーへの移行は、排出量の大幅な削減だけでなく、雇用機会の創出や気候変動に強い生活を支える可能性も秘めています。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は、2030年までに全世界で約2,700万人の雇用が再生可能エネルギー分野で創出されると予測しており、そのうち220万人は東南アジア全域で生まれるとしています。

しかし、エネルギー転換は人権や男女平等の上に成り立つ公正なものでなければなりません。人権、特に先住民族の権利や地域社会、環境人権擁護者の権利を尊重するには、環境や社会的保護措置が公正なエネルギー移行の中で実施される必要があります。そして、公正なエネルギー移行を実現するためには、より多くの女性や社会から疎外されたグループの人々が労働力として参加できるようにすることが重要です。

エネルギー分野の労働力を多様化することは、公平性の問題や公正な移行に向けて前進するだけでなく、再生可能エネルギー業界がより広くて深い人材のプールを活用することにも繋がります。

公正なエネルギー転換のメリットを示す気候適応に関するプロジェクトのひとつに、「エンパワー:気候変動に強い社会を目指す女性たち」があります。このプロジェクトはスウェーデン政府から資金提供を受け、UN WomenとUNEPが2018年から共同で実施しており、アジア太平洋地域、特にASEAN諸国、バングラデシュ、カンボジア、ベトナムにおいて、気候変動に対するレジリエンスを構築するものです。

これまでに2,000人以上の女性が支援を受け、400人以上の女性が気候変動に強い生活を築きました。規模の拡大が可能で、そこで得た教訓を地元、国、地域レベルの政策議論に生かすことのできるモデルを作りました。

ベトナム北部のバックカン省では、114人の先住民の女性が、食品製造に使うキノコや麺、竹を乾かすために太陽熱乾燥システムを導入しました。彼女たちの生活は天候の突然の変化や気候変動によって左右されがちで、突然の雨ですべてが台無しになることもありましたが、エンパワープロジェクトに参加することで質の高い農作物を生産できるようになり、生産量も1年で3倍になりました。また、木を切って薪を集めなければ使えない炭火オーブンの使用はやめました。

バングラデシュ南西部のチュアダンガ地区では、多数の女性ヤギ農家が、家畜や農業に使う水をくみ上げる動力をディーゼルから太陽エネルギーに変えました。これにより、農作業の状況をコントロールして、自分や家族の生活をより安定させることができるようになりました。

エンパワーは、脆弱なコミュニティのために代替的な生活を設計し、再生可能エネルギーによって排出量を削減し、アジア太平洋地域の政策に進歩的な変化をもたらしてきました。最近発表されたASEAN リ・ジェンダー・ロードマップは、インドネシアを含む各国が、あらゆる段階で男女共同参画を考慮した再生可能エネルギー政策を実現するための指針となるものです。

学んだ教訓を拡大するすばらしい機会と、公正なエネルギー転換のために開発されたアプローチはあります。しかし、課題は資金調達です。

第27回国連気候変動会議(COP27)が、11月6日から18日までエジプトで開催されます。政治的な意志さえあれば、女性や社会から疎外されたコミュニティのニーズを満たすことのできるエネルギー転換に、必要な資金調達を促すことができるでしょう。

(翻訳者:松本香代子)

Op-ed: Ramp up investment to support Asia-Pacific women to overcome climate disasters | UN Women – Headquarters

カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会

寄付する