紛争下の性暴力根絶のための国際デーによせて(6月19日)

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2023年6月8日

ただ女であるという理由だけで性暴力に苦しむ女性たちをご支援ください

紛争下の性暴力とは

紛争下の性暴力とは、武装集団や政府軍、法執行機関によるレイプや性奴隷、売春の強制、強制妊娠、強制不妊手術、強制中絶、性器切除、性的虐待、性的拷問を指します。性暴力は、子どもを含む民間人を恐怖に陥れたり、政治的軍事的利益のために恐怖や脅迫を広めたり、民族を浄化したり、特定の民族に屈辱を与えたり、反対勢力への支援を疑われた民間人を罰するために、戦争の武器として使われることが多くあります。

2018年ノーベル平和賞受賞者でありコンゴ民主共和国にあるパンジ病院の設立者であるデニ・ムクウェゲ医師は、次のように話しています。「私は1999年にコンゴ民主共和国に妊産婦のための中核的な病院をつくるつもりでパンジ病院を開院しました。まさか最初の患者の中に、陣痛に苦しむ母親や新生児ではなく、レイプされた乳幼児がいるとは想像もしていませんでした。私が治療した最年少の子どもは、暴行を受けたとき、わずか生後6カ月でした。いま、世界で7,200万人以上の子どもたちが、未成年者に対して性暴力をふるう武装勢力の近くで生活していることは、絶対に容認できません。国際社会は、これまで以上に行動を起こさなければなりません。」

シマ・バフースUN Women事務局長の見解

アフガニスタンでは、2021年、首都カブールがタリバンに陥落したときを含め、女性と少女に対して行われた紛争下の性暴力の事件が数多く見られました。ウクライナでの戦争により、約710万人が国内避難民となり、国外では690万人の難民が記録されています。これらの難民の6%は女性と子どもであると推定されており、彼らに対する紛争下の性暴力の申し立てが増えています。

UN Womenは、戦争、テロリズム、政治的弾圧の戦術として性暴力が引き続き使用されていることを深く懸念し、紛争のすべての当事者に対し、特に避難時には、そのような行為をやめるよう呼びかけています。紛争下の性暴力の報告についてはすぐに調査し、犯人を訴追しなければなりません。さまざまな形態の暴力の被害者・サバイバーには、質の高い、被害当事者の目線にたったサービスや支援を提供し、司法へのアクセスを支援しなければなりません。また、男性や少年を巻き込んで、差別的な社会規範や有害な慣行の変革を促進する予防戦略をたて、虐待の主な根本原因としてのジェンダーの不平等に取り組むことも忘れてはなりません。

女性の人権擁護アクティビストおよび国内避難民女性や少女を支援する市民社会組織との強力なパートナーシップを構築し、そのリーダーシップを促進することが不可欠です。女性が参加すると和平合意がより効果的で永続的であることが経験から分かっているのに、平和構築の場に女性が十分参加できていません。女性が和平プロセスに加わってリーダーシップをとれるようにすることがぜひ必要です。

ウクライナの状況

2023年2月24日は、ロシアがウクライナへの本格的な侵攻を開始してから1年になります。過去12か月間、紛争はウクライナの人々に計り知れない苦しみを与え、その中で数千人の命が奪われ、数百万人が避難し、重要な民間インフラが破壊されました。

人身取引やジェンダーに基づく暴力の増加から、重要な生計手段の喪失や貧困レベルの上昇まで、ウクライナの女性と少女は紛争による深刻な影響を直接的に受けています。インフラの大規模な破壊により、被害者へのサービス、医療、その他の支援が多くの人にとって手の届かないものになってしまいました。急増している性暴力などの人権侵害を調査し、被害当事者が正義を手に入れられるよう支援することが大切です。

女性は紛争によって男性とは異なる影響を受けており、その負担はさらに増しています。女性が紛争予防のすべてのプロセスに参加し、ウクライナの人々の平和と安全を追求することを目指せるようにすることが欠かせません。

UN Womenはどのような人道支援をしているのでしょうか

ウクライナ:安全なスペースを確保するためのパイロットイニシャティブ

UN Womenはウクライナで「女性と少女のための安全なスペースパイロットイニシアチブ」を立ち上げ、性暴力の被害者や紛争による様々な問題を抱えた女性たちが、集い、問題を共有し、癒される場を作りました。

侵略によって故郷のスカドフスクから避難したオクサナさんは何よりも癒しの場所を求めていました。「すべての国内避難民女性にとって、まず心が回復にむかえるような安全な場所を見つけ、自分たちの問題や不安について話しあい、必要に応じてアドバイスを得ることがとても重要だと思います」と彼女は言っています。

今日、オクサナさんは女性と少女のための安全なスペースパイロットイニシアチブを通じてその場所を見つけました。2022年10月にUN Womenによって立ち上げられたこのイニシアチブは、「安全な都市と安全な公共空間のためのグローバルイニシアチブ」に基づいています。これらの安全スペースには、衛生キット、教育リソースを配布し、大人と子どもの両方のための心理カウンセリング、法的アドバイス、地元の雇用と住宅のリソース、被害当事者に対するサービス情報など多面的な形態のサポートを提供しています。

また、このスペースは保育も提供しており、各場所に子ども向けの専用スペースがあります。これは、息子のダニーロと一緒にザポリージャに避難したオレナさんにとって非常に重要でした。「息子をここに残しても、大事に世話されていることが分かっているので、彼のことを心配することはありません」とオレナさんは言います。「だから私は様々なサポートを受けることに集中できます。」

女性と少女のための安全なスペースパイロットイニシアチブによる子ども向けの専用スペース
写真: Mykola Kolodiazhnyi, NGO UkrProstir/Zaporizhzhia

子どもたちが遊んでいる間、女性たちは充電し、癒され、いろいろな学ぶ機会を利用することができます。彼女たちは、ヨガや瞑想のクラスに参加したり、差別の防止や女性に対するさまざまな形態の暴力へ対処するための学習セッションに参加したり、雇用やその他のスキル習得に役立つワークショップにも参加できます。「私にとってザポリージャのこの安全なスペースは、救命ボートのようなものでした。私はここでリラックスして、肉体的にも感情的にも回復できるのです」とオレナさんは言います。オクサナさんは、「ようやく自信がつき、仕事さえ見つけました」と付け加えました。

南スーダン:人道的状況における性暴力の防止

南スーダンは、2011年に自治権を獲得しましたが、その後も続く武力紛争により、依然として政情不安に悩まされています。長引く紛争により、南スーダンには推定1万人の国内避難民(IDP)がおり、その多くは民間人保護のためのキャンプで暮らしています。キャンプでは、女性と少女に対する性暴力およびジェンダーに基づく暴力のリスクが高くなっています。

UN Womenが運営を担っている「国連女性に対する暴力撤廃信託基金(国連信託基金)」が資金提供する「アフリカの角の女性のための戦略的イニシアチブ(SIHA)」は、北部の町ワウの国内避難民のための大規模なキャンプで女性と少女に対する暴力を防ぐための学校ベースのプロジェクトを実施しています。

SIHAの調査によると、教員と学校管理者には、性暴力とハラスメントについての情報と理解がほとんどありませんでした。ある参加者は「レイプは犯罪ではないと考える人もいます。特に男性は、女性はセックスのためだけにそこにいて、やりたいことは何でもできると思っている人もいます」と述べています。

この調査は、キャンプの外で水を汲む女性と少女へのリスクを含む、キャンプで蔓延する性暴力の要因を明らかにしました。これには、強制的かつ早期の結婚、女性教員の不在、そして学校で少女がモノとしてしか見られないこと、などが含まれます。この調査の終了後、SIHAは、性暴力がコミュニティにどのような悪影響を与えるかについて、国内避難民キャンプの教員と管理者の意識を高めるためのトレーニングセッションを開発し、実施しています。

アフリカの角の女性のための戦略的イニシアチブ(SIHA)が実施する女性と少女に対する暴力を防ぐためのワークショップ  写真:SIHA提供

ナイジェリア:ボゴハラムの人質になった女性のストーリー

これはボゴハラム(ナイジェリア北東部及び北部を拠点に活動するスンニ派過激組織)の人質として3年を過ごしたバゲジッダさんのストーリーです。

「私は、ナイジェリアのマイドゥグリで夫を亡くしました。彼らは私の目の前で夫を斬首したのです。ショックで一時的に視力を失いました。20日後、彼らは戻ってきて私にお金を要求しました。彼らにお金を出せないとわかると私を人質にしました。私は4歳の息子ひとりだけつれて村を離れました。

彼らは、女性たちにブルカで身を隠させ、コーランを読ませました。彼らは、男性のグループを並べ、そこから結婚する男性を選ぶよう強制しました。私たちは選択をするのに3回のチャンスを与えられました。女性が3回目までに男性を選ばなかった場合、彼らは女性を虐殺するのです。私は二度拒否しましたが、3回目は受け入れました。

3年間人質として恐怖の中で暮らしましたが、3年目に軍のヘリコプターの音が聞こえました。ボゴハラムの過激派は逃げ出し、私たちは助かりました。初めは難民キャンプに住んでいましたが、服飾縫製の研修を受けて自立し、今ではキャンプを出て家を借り、子どもたちと一緒に住めるようになっています。」

さらに、国連中央緊急対応基金がUN Womenに資金提供し、地元のパートナーである女性に対する暴力と闘う協会(AVLF)が実施するプログラムでは、モコロ、モラ、コロファタ、モゾゴ、マカリなどのコミュニティにおいて、女性のエンパワーメントセンターを支援しており、そこでは女性は新しい職業のためのスキルを学び、中小企業向けのスタートアップキットを入手し、心理社会的サポートを受けることもできます。

ボゴハラムの人質から解放されて子どもたちとも再会し、服飾縫製の訓練を受けて自立したバゲジッダさん  写真:UN Women/Ryan Brown

UN Womenは「誰も取り残さない」をモットーに、紛争下で性暴力を受けて苦しむ女性に手を差し伸べています。あなたのご支援が、このような女性たちの人生を変える一助になります。ぜひお力をお貸しください。

■インターネットでクレジット決済を利用される方

 以下のURLから1口500円からでもお申込みいただけます。
http://www.unwomen-nc.jp/donation/#kifu
「団体へのメッセージ」に”紛争下の性暴力”とご支援先がわかるようにご記入ください。

■インターネットを利用されない方

以下の、郵便局からの振り込みのご利用をお願いいたします。
郵便局 振替口座番号:00240-7-43928
口座名義:NPO法人国連ウィメン日本協会    
通信欄:「紛争下の性暴力」

カテゴリ: ニュース , 寄付・キャンペーン

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