女性をエンパワーすることは、地球を守ること(抜粋)

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2023年6月15日

2023年4月19日

気候危機によって受ける影響は、ジェンダーニュートラル(男女の性差にとらわれない中立的な考え方)ではありません。

気候危機の影響が深刻さを増す中、女性と少女は、特有で不平等な影響を受けており、既存のジェンダー不平等がさらに悪化しています。一般的に、女性は男性に比べて天然資源への依存度が高く、家庭で使う食料や水、燃料の確保に過度の責任を負っているため、環境の変化に対して非常に脆弱な立場にあります。また、紛争や気候変動によって悪化した不安定な状況では、ジェンダーに基づく暴力にさらされるリスクが高まり、女性が生き延びる可能性は低くなります。さらに、命を守るためのリソースや重要な意思決定の場へのアクセスも依然として非常に限られています。

それでも女性は気候変動との闘いの最前線にとどまり、世界各地で気候変動の防止と緩和、変動への適応に取り組んでいます。例えば、女性の国会議員がいると、より厳しい気候政策が採択され、結果として温室効果ガス排出量が減少するという調査結果があります。また、女性がリーダーシップを持つ職場では、気候変動への影響に関する透明性が高くなり、地域の天然資源管理への女性の参加は、資源のガバナンスと保全の向上につながります。

UN Womenは、今年の国際マザーアース・デー(4/22)に、政策、ビジネス、農業などあらゆる分野におけるジェンダー平等が地球の持続可能性に深く関わっていることに焦点を当てます。女性のエンパワーメントがどのように環境保護につながるのか、また気候変動への適応がどのように女性のエンパワーメントにつながるのか、世界の国々の事例を紹介します。

パレスチナ:環境の持続可能性を確保し、差別的な慣習を打破する

ガラスをリサイクルして石を作る環境配慮型ビジネス「ブルーストーン」を立ち上げたラワン・ラジャブさん(22歳)写真:UN Women/サメ・カリーム

ラワン・ラジャブさんは、ヨルダン川西岸のカフル・アル・リバド村に住む22歳のパレスチナ人女性です。環境保護への強い気持ちと地域にポジティブな影響を与えたいという想いを結びつけ、ガラスをリサイクルして環境にやさしい石を作る環境配慮型ビジネス「ブルーストーン」を設立しました。

この持続可能なビジネスの起業に向けたラワンさんの取り組みは、2020年にスタートしました。「新型コロナウイルス感染症の拡大で、社会のデジタル化が進んだこともあり、オンラインで経営管理と起業の勉強を始めました。また、隔離政策実施の結果、人間の活動が地球に与える影響も明らかになりました。そこで、まず環境保護のために何かしたいと考えました」と、ラワンさんは話します。

国際的な団体から少額の資金援助を受け、自宅からわずか50メートルの場所にガラスをリサイクルする工房を作りました。 また、廃ガラスの処理に伴う環境負荷を軽減するため、カフル・アル・リバドにガラス分別センターを10か所作り、ガラスを分別する取り組みも始めました。この取り組みは、女性だけでなく男性も巻き込み、リサイクル活動への平等な参加を促進するとともに、伝統産業以外にも女性が活躍できる場があることを広く知ってもらう機会となっています。

ラワンさんは、スウェーデン政府から資金提供を受け、UN WomenとILO(国際労働機関)が共同で実施する「エジプト、ヨルダン、パレスチナの女性の生産的な雇用とディーセント・ワーク(やりがいのある仕事)の促進」プログラムの一環として、ジェンダー平等と女性の経済的エンパワーメントに関する地域ベースの対話を進めています。研修を実施して意識を高めることで、職業の固定観念を取り払い、もっと多くの女性に持続可能な開発のリーダーを目指して欲しいと考えています。

ラワンさんは、その実績が認められ、昨年ついに、エジプトのシャルム・エル・シェイクで開催された第27回国連気候変動会議(COP27)への出席が実現しました。また、2022年の1年間で3トンのガラスをリサイクルすることにも成功しました。ラワンさんのビジネスは、持続可能な開発のモデルであり、地域の人たちに自分たちも社会と環境に良い影響をもたらそう、という意欲を与えています。

                                                     (翻訳者:祖父江 美穂)

https://www.unwomen.org/en/news-stories/feature-story/2023/04/empowering-women-protecting-the-earth

カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会

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