ブログ: 戦時下におけるウクライナ人教師たちの知られざる最前線(抜粋)

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2023年6月30日

2023年2月17日

オレシア・ボジコ

ディボッシュメディアより提供

オレシア・ボジコさんは、子どもたちが無償で質の高い教育を受けられるよう救済し、戦争によって職を失った女性教師を支援するウクライナのNGO「知識の広場」の代表です。ボジコさんは、立場の弱い女性の団体と行動を共にしている17人の女性活動家および市民社会組織 (CSO)の代表のうちの1人で、メディアにおける女性の発言力を向上させることを目指すUN Womenの能力開発プロジェクト「Sheメディアスクール」に参加しました。ウクライナでの戦争が始まって1年が過ぎた今、女性の声、特に女性の権利を擁護するために行動している人たちの声に耳を傾ける必要があります。

ディボッシュメディア掲載記事原文 

「このところ、敵は国内の重要なインフラを破壊し、ウクライナ人を脅して混乱に陥れ、冬を前に戦意を喪失させようとしています。一方で、オデーサではスケートリンクがオープンしており、喫茶店が新設したコワーキングスペースへ若者を招待し、電気工事の作業員が数時間で電気を復旧させ、携帯電話会社が基地局の半数を再接続しています。そして、アメリカのスコット・ケリー宇宙飛行士が急きょ列車でキーウを訪問しました。

この驚くべきバイタリティは、ウクライナ人が生活し、行動し続けること、そして皆でともに勝利を引き寄せていることを敵に知らしめています。特筆すべきは、戦争が始まったその日から子どもたちを守り、「日常の生活」の雰囲気を作ってきたウクライナの教師たちです。

ウクライナの教育は存続しました。9月には、ウクライナの学校の多くが開校しました。教師はウクライナ国内そして国外にいる子どもたちに対して授業を続けています。休日のお祝いが学校で開かれ、子どもたちは絵を描いて軍やボランティアを応援し、教師は子どもたちが自由なウクライナでの将来を夢見るための支援をしています。

現在、教育は将来に向けて行われています。新しい世代が、勝利の後にウクライナを立て直す必要があります。教師は子どもたちが目撃する出来事を説明し、親たちの多くはウクライナ国軍の軍人、ボランティア、医者、ジャーナリストなどとして戦争に関与し活躍しているヒーローです。

教師はシェルターの中や占領地で照明や暖房のない中で授業をし、子どもたちが海外の学校に溶け込めるよう支援し、世界各地でインフォーマルな学校を作っています。何万ものストーリーの背景には教師がいて、その多くが女性です。教師自身の力で子どもたちの安全に関する問題を解決しなければならず、また世界各地に散らばった多くの子どもたちとウクライナの教育をつなぐ唯一の存在であり続けなくてはなりません。

ジャーナリストでライターのクリスティナ・コツィラさんは言います。「占領下のマリウポリの映像を見ました。ロシア人が都市の入り口にある地名標識の中の「I」という文字をロシア語表記の「Y」に書き換え、標識をロシアの国旗の色に塗りなおし、学校にロシアの本を持ち込んで、ウクライナの教科書を焼いていました」。

クリスティナさんは、ニーナとマイロンという2人の子どもと共にキーウで暮らし続けており、どこへも逃げるつもりはありません。子どもたちは学校へ通っていますが、戦争中に大きく変わってしまいました。特に、保護者のViberグループでは、ひとりの母親を除いて皆ウクライナ語に切り換えました。「敵はどんな本で子どもたちが勉強するか、どんな言語を話すかの重要性を理解しています。ロシアの攻撃によって、言語と教育は私たちの武器でもあるということがはっきり分かりました」とクリスティナさんは言います。

クリスティナ・コツィラさん 写真:ディボッシュメディアより提供

「戦争は2014年から続いています。2022年2月24日までは、学校では東部での出来事についてあまり語られませんでした。救急隊員をしている友人が、ウクライナ防衛者の日に子どもが通うキーウの学校で、自分の活動について話そうとしたのですが、保護者から一斉に反発の声が上がりました。子どもたちの平和な時間が奪われてしまうと強く憤り、子どもたちがトラウマを受けたり、戦争に巻き込まれたりするようなことはやるべきでないと言ったのです。しかし、状況は一変しました。戦争があるという事実から目を背けてウクライナで暮らすことはもうできません。アパートにいるときにサイレンが鳴れば、何が起こっているかを子どもに説明しなくてはなりません。ロシアのミサイルはとても恐ろしい音を立てるけれども、言語が重要であること、将来同じ過ちを繰り返さないように歴史的事実を知っておくべきだということを教えてくれます」。

キーウのアトランティカ・バイリンガルスクールで2年生の担任を務めるナタリヤ・カザチネルさんは、仕事は人生であり安定であると確信しています。将来を信じているナタリヤさんは、次のように話しました。「多くのウクライナの学校が破壊されました。子どもたちと一緒にウクライナの街、将来の街、夢の街の絵を描いています。ウクライナ軍、ボランティア、医師たちの勇敢さについてよく話しています。尊厳の革命の日には、「尊厳」があるからこそ皆がくじけることなく勝利を引き寄せ、そして世界が私たちを支援し賞賛してくれるということを話し合いました。

ナタリヤ・カザチネルさん 写真: ディボッシュメディアより提供

最近の授業では、すべてのウクライナ人にとって重要なことを話し合う活動を大切にしています。ウクライナ防衛者の日に、赤と黒(エストニア)、青と黄色(ウクライナ)といった国旗の意味と色について学びました。子どもたちは陽気さや新鮮な息吹を吹き込んでくれる存在です。子どもたちの学びたいという気持ち。それこそが、授業を休むことなく進める原動力になっています。授業は、対面とオンラインを同時に行っています。停電でインターネットの接続が切れたり、授業が急に中断したりするとみんな動揺します。心からの笑顔に再び会えたことを嬉しく思っています。電力不足を通して、私たちは一瞬一瞬を大切にすることをともに学びました。戦争は日常生活の中にあり、そこから逃れることはできません。

2年生の子どもたちには、戦争の話はあまりしません。その代わり、ボランティアセンターの活動、ボランティアの重要な使命、私たち一人ひとりができることについては、よく話し合います。子どもたちの応援の絵画や手紙が軍隊を力づけるのだと伝えています。私たちは皆で一緒に勝利へと近づいているのです。

ウクライナとのつながりは、国外からリモートで授業に参加している子どもたちにとって重要です。子どもたちの夢は、自宅や学校、友達のもとへ戻ること、そしてすべてが2月24日以前の状態になることです」。

ナタリヤさんは、戦争が続く何か月もの間、キーウにとどまっていました。キーウが10月10日に大規模なミサイル攻撃を受けたとき、ちょうどサクサガンスキー通りにある学校に向かう途中でした。彼女は、何かが起こったときではなく、起こる前に教師はどう行動すべきかを教えてほしいと考えています。「皆、空襲警報を軽く考えていました。空襲の間も、親は年長の子どもをひとりで学校に向かわせ、教師には通勤途中で空襲が起こったらどうすべきかという明確な指示がありませんでした。あの恐ろしい月曜日、子どもたちと教師が見聞きしたもの。それについてはっきりと理解してもらうことが必要でした。ですから、その翌日の火曜日に、学校は即座に保護者と教師に対して明確な指示を出しました。空襲警報が鳴ったら家から出てはいけない、子どもたちをシェルターから出してはいけない、街中を歩き回ってはいけないという指示です。その週の終わりになって、ようやく詳細な指示が州当局のホームページに掲載されました」。

この記事で表明された意見は著者のみに属し、必ずしもUN Womenの意見や立場を反映したものではありません。

(翻訳者:早乙女由紀)

https://eca.unwomen.org/en/stories/feature-story/2023/02/blog-the-hidden-front-of-ukrainian-educators-during-the-war

カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会

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