若かりし自分への手紙:あるトランスジェンダー女性の振り返り

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2023年7月7日

2023年6月14日(水)

Kへ 

学校が今、きついんだよね。スポーツをしてたって、「友だち」にチームに入れてもらえず、寂しい思いをしているんだよね。カバンを放り投げられたり、頭突きを食らわせられたり、嫌がらせをされたりしてるんだよね。授業で質問に答えて座ろうとしたら、さっと椅子にペンを置かれてゾっとしたんだよね。何より堪えるのは、先生たちが同級生たちに対してするほどは、自分のことを気にしてくれないことだよね。みんながみんなそんなことをするわけではなくて、何人かは味方になってくれるんだけれど、それでも独りぼっちだって感じるんだよね。

「友だち」は、”chhakka”とか”hijada”( ヒンディー語でLGBTQI+の人々に対して使用する、侮蔑的な呼び名) とか、悪い言葉を使ってくるけど、これからだって何度も聞くことになる。この先、もっとたくさんの経験をするようになる。通りを歩いていて、違法行為に関与しているって、警官にひどく殴られたりする。とか、二人の人に、力づくで、有無を言わさずに連れ去られそうになる。警官に助けを求めても、聞く耳を持たず、言われるのは「誰が行くって?我々の仕事は、まともな人を助けることさ。Chakkaだのhijadaだのは知ったこっちゃない。」

暴力を受けた経験は初めてではないよね。最初は第8学年(日本の中学2年生)の時だった。男の子と出会い、声を掛けられた。彼はバイセクシュアルであると言い、家でそれがどういうことかを知ることになる。だって学校では決して習わないから。自分のアイデンティティーを探ることとなり、男子に心惹かれる自分を知ることになる。話を進めると、第10学年(日本の高校1年生)の時、同じ男の子に、「愛してるんだったら行こう」という一言に引かれて、ホステル(寮)に行く。彼は一瞬で支配し、身体的暴行をふるう。そのうち、私の性的指向を暴露すると脅すようになる。

でも、自分の性的指向を家族に明らかにすることについては、全く心配しなくていい。彼らは認めてくれるようになるし、そのうち性自認を受け容れてくれるようになる。第1段階では拒絶されるが、次に我慢してくれるようになり、最終的には受け容れてくれる。自分の性的指向について、ソーシャルメディアを含めてどこでもオープンにするようになる。隠す必要性を感じなくなるし、進んで明らかしようとすらなる。オープンにすることが自分たちの資質であり、力であり、強みであると信じている。弱点ではない。K、私はトランスジェンダー女性として今、誇りをもって自ら名乗ることができるし、そのことについて満足している。

私のおじもトランスジェンダーだ。多分、性自認を公表したくなかったんだろう。私たちが子どもの頃、多くの時間を男性の格好でいたし、でも時たま女性のような格好もしていた。そんなおじさんを見て、実は自分たちも女性になりたかったんだということを子どもながらに気づかされたものだ。近頃では、私たちの家族はとても協力的だ。私たちのアイデンティーについて尋ねられても、よい対応をしてくれるし、必要ならいつでも助けてくれる。兄弟、姉妹、家族、隣人みんながそうだ。

K、これから先、たくさんの経験をするだろう。大好きなことをしながら、メークアップアーティストの大御所になるだろう。子どもの頃、誰の重荷にもなりたくなかったことを覚えているだろうか。そうだ、自立し、人をサポートするようになる。PrEP(HIV感染を防ぐピル)チャンピオンになって、仲の良い友達に認識を広めるようになる。HIV予防プログラムのお陰で、安心して、勇気をもって、安全に過ごせるようになる。テレビのショー番組に出演したりするなど、いろいろなやり方でみんなを元気づけるようになる。たくさんの人たちがメッセージを送ってくるし、支持してくれるようになる。

K、自分がどこから来たか、性自認が何であるか、何を職業とするかは問題ではない。大事なのは自信を持つことだ。それは他の人たちをも元気づける。あなたを見て、言うだろう“あなたにできるなら、どうして私にできないの?

ではまた

Kより

https://asiapacific.unwomen.org/en/stories/feature-story/2023/06/letter-to-k

カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会

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