固定観念を打ち破りイラクの寡婦を支援する

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2023年9月12日

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32歳のサクナ・マフムードさんは、イラクのモスル市に近いハッサニア村で幼少期を過ごしましたが、13歳のときに家族が9歳上の男性との結婚を決めたため、学校に通うことができなくなりました。

女性が地域社会に溶け込みやすくすることを目的としてイラクで実施された「紛争防止と対応戦略」プログラム。写真提供:JINDA

何十年にもわたる戦争がイラクの女性と少女にもたらしたのは、世代を超えた貧困、教育の中断、児童婚という現実でした。戦争は膨大な数の死者だけでなく、数え切れないほどの寡婦を生み出しました。マフムードさんもその1人です。

世界には2億5800万人以上の寡婦がいますが、彼女たちの存在は歴史的に見過ごされ、支援もされず、状況の把握ができていませんでした。寡婦になった女性は、家族や社会的構造から閉め出されることが多く、孤立や暴力、貧困に対して極めて脆弱な状態に置かれます。 2009年から2013年のデータによると、寡婦の10人に1人は極度の貧困の中で暮らしていました。

イラクではマフムードさんのような女性たちが、現在も進行中の紛争によってさらに脆弱な立場へと追いやられています。2017年、マフムードさんの暮らす地域で部族紛争が勃発したとき、マフムードさんには収入も仕事も資格もなく、安全や頼れるリソースもありませんでした。身を守るためにハザールキャンプに逃げ、今もそこで母親、妹、そして5人の子どもと一緒に暮らしていますが、夫のいないマフムードさんは孤独で、キャンプでも疎外感を感じていました。

「人付き合いがむずかしく、どうやって問題を解決すればよいのか、まったくわかりませんでした。キャンプで暮らしていることが恥ずかしくて、精神的に追い詰められていました。不安で落ち着きがなく、いつもイライラしていました」と、マフムードさんは語ります。

UN Womenは、ハザールキャンプで暮らす女性と少女の緊急の社会的ニーズに応えるために、地元のNGOであるJINDAと協力して、脆弱な立場にある女性を対象としたエンパワーメント講座を実施しました。JINDAは、UN Womenから資金援助を受け、「紛争防止と対応戦略のための女性のエンパワーメント」プログラムを推進しています。その目的は、女性と少女に自信をつけさせ、自分の人生には限界があると感じさせている家父長的規範に立ち向かえるようにすることです。

マフムードさんは口コミでこの講座のことを知り、参加してすぐに、日常生活にも受講の効果が現れていることに気がつきました。

「この講座に参加するまで、私はいつもイライラして怒っていました。講座を通じて人との関わり方を学び、気難しい人との付き合い方を学ぶロールプレイも経験したことで自信がつきました」。

マフムードさんは、講座を受講することによって内向的な性格を克服し、キャンプの環境にうまく溶け込んで、それまで苦しんできた孤立から抜け出すことができました。また、制度上の課題に適切に対処するツールも手に入れました。「ここで学び始めてから、私を含め皆本当に成長したと思います。私たちの多くは教育水準がとても低く、それが社会の障壁になっています」とマフムードさんは言います。

一緒に講座を受講した他の仲間たち、例えば24歳のロジャン・ハリド・イブラヒムさんは、この講座を「個人的な成長と発展への道」と考えています。イブラヒムさんも寡婦の娘で、父親が亡くなってからこれまでずっと母親と兄弟を支えてきましたが、もっと自立について学び地域の女性の手本になりたいと思い、この講座に参加しました。

「講座のタイトルをみて、すぐに参加しようと思いました。自分を磨き、人々に私の本当の価値を知ってもらうよい機会だと思ったからです。私は、父親のいない家庭で育ったから頼りないとよく言われましたが、それが間違っていることを証明したかったのです」とイブラヒムさん。

「私たちの社会では、父親のいない子どもが生きるのはとてもむずかしいです。それでも、女性はたくましく、困難にも打ち勝つしなやかさがあるということを世界に示したかったのです」。

マフムードさんは、自分のような寡婦が学ぶ機会が今後も提供され続けることを願っています。 「ライフスキルの向上に役立つような講座も必要です。なぜなら今、女性たちは、母親、父親、それに兄弟を合わせたような複雑な役割を担っているからです。講師にはとても感謝しています。今後、また同じような講座があったらぜひ受講したいです」。

行動を起こす

寡婦の権利を守り前進させるために、政府、政策立案者、そして私たち一人ひとりにもできることがあります。

  1.  相続、土地、年金、その他の社会的保護への寡婦のアクセス状況を改善するための社会的・経済的改革を行う。新型コロナウイルス感染症対策のための財政政策、経済的救済措置の対象に寡婦を含める。
  2.  長い間女性を不利な立場に置いてきた、差別的な法律や家父長制度に終止符を打つ。世界には、女性が男性と同じように相続ができない国が36か国、世帯主や家族の長になることのできない国が31か国、働いたりキャリアを追求したりすることのできない国が17か国ある。世界全体で女性の権利を促進するために、寡婦から財産、住む場所、収入、社会的便益、機会などを奪う差別的な法律を廃止する。
  3.  教育や訓練の機会、ディーセントワーク(働きがいのある仕事)、同一賃金へのアクセスを確保し、寡婦を排除や差別したり、危険で暴力的な慣行につながったりする社会的烙印を覆すことによって寡婦が自分自身と家族を支え、尊厳を持って生活できるよう支援する。
  4.  ジェンダー別データ、すなわち年齢と性別で分類した質の高い人口統計情報を収集し、将来にわたって寡婦が集計に含まれ支援されるようにする。国連は、国勢調査のデータ収集をする際には、「寡婦で再婚していない人」を含めた、最低でも5つの婚姻状況カテゴリー(ハイパーリンクにアクセスできないのでリンクをとりました)に分けることを提案している。
  5.  国際法や国際条約にも明記されているとおり、寡婦の権利を守り拡大するための国際的な取り組みとアドボカシー活動を支援する。
  6.  「国際寡婦デー」には、寡婦の体験談や意見、経験を学び、寡婦の権利を支援する。ソーシャルメディアで#WidowsDayをフォローする。

(翻訳者:松本香代子)

Breaking stereotypes and empowering widows in Iraq | UN Women – Headquarters

カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会

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