ミャンマーの危機対応の最前線で奮闘する女性団体
2023年10月5日
2023年8月16日
ミャンマーのラカイン州では、豊かな大地に実った作物が収穫されずに放置されたままになっています。いつもであれば地元の村の女性や少女などの労働者で賑わっているはずの肥沃な土地が、今や命がけの戦場になりました。
2021年の軍事クーデター後に埋められた地雷によって、民間の犠牲者が急増しています。危険を承知で、1人で畑に入る女性や少女たちは、性暴力の脅威にも直面しています。UN Womenがミャンマーで暮らす2,200人の女性を対象に行った調査によると、約半数の人が、自分が住んでいる場所から離れることを怖いと感じています。
ラカイン州とカチン州では、性暴力の脅威のために女性と少女たちの移動範囲が制限されています。しかし、家に留まることには別のリスクがあります。飢餓と貧困が深刻さを増す中、家庭内でのジェンダーに基づく暴力（GBV）の割合が増加しているからです。「働く機会も収入も失った男性たちが、女性と少女を殴るのです」とミャンマーの女性団体の代表であるウィンさん（仮名）（注）は言います。
ライフライン：GBVの被害から女性と少女を守れるのは現地パートナーだけ
女性と少女が人道的支援を最も必要としているときに、国際的な人道支援活動家に対し、国境は閉ざされたままです。その代わりに、時には大きな個人的リスクを負いながらも、危機に見舞われた人たちに不可欠なサービスを届ける役目を担おうと立ちあがったのは、現地の女性が主導する組織や女性の権利団体などでした。
2021年以降、UN Womenはミャンマーにある91の女性団体を支援してきました。リーダーシップ、組織の発言力、アドボカシースキル、人道的意思決定メカニズムやプロセスに対する意識向上などに関する研修などを通じて、人道支援計画、対応プロセスやメカニズムにおいて利用できるツールやリソースへのアクセス向上に貢献しています。
この活動は国連中央緊急対応基金（CERF）から助成金を受け、国連人口基金（UNFPA）との協力によって実施されています。資金の30％以上が、現地の女性主導の団体や女性の権利保護団体に直接支給されます。UN Womenミャンマーのプログラムスペシャリストであるロウェナ・ダクシグさんは、「こうした団体がなければ、ミャンマーの女性と少女たちは、残された最後の命綱を失っていたかもしれません」と言います。
現地の女性主導の団体や女性の権利団体は、カチン州やラカイン州の軍事検問所を越えて、GBVの被害者やその脅威にさらされている女性と少女たちに、心理社会的カウンセリング、生理用品や衛生用品を含むディグニティーキットのような人道支援物資など、重要なサービスを届けてきました。
また現地の団体は、UN Womenの支援を受け、金融に関するスキル開発研修や農業活動などを含めた生計に関するサービスも提供しています。これまでに4,094人のGBVの被害者やその脅威にさらされている女性たちがこのサービスを受けましたが、その多くは、夫や息子が武装グループに徴兵されために今や家計を担う立場になっています。
「現地にパートナーがいる組織だけが、支援活動を続けることができます。現地パートナーがいなかったら、GBVの被害者やその脅威にさらされている女性たちへのサービスは、国内の難民キャンプを含め、完全に止まっていたでしょう。地域の情報はほとんど入手できないため、現地パートナーがいなければ、ミャンマーの女性と少女たちのニーズはまったくわからなかったでしょう」と、ダグシグさんは言います。
その返礼としてUN WomenとUNFPAは、性的虐待や搾取からの保護に関する研修、被害を受けた人々への説明責任の遂行、保護や生活に関する重要なサービスを提供するためのリスク評価やジェンダー分析などを通じて、現地の女性組織を支援してきました。
（注）プライバシー保護のために仮名を使っています。
ジェンダーに基づく暴力の予防と対応策のためのCERFグローバル助成金
国連中央緊急対応基金（CERF）は、危機が発生すればいつでもどこでも人道対応要員が人命救助の支援ができるようにと、2005年に設立された国連の緊急基金です。2021年、UN Womenと国連人口基金（UNFPA）は、緊急事態におけるジェンダーに基づく暴力の予防と対応策を強化するために、CERFグローバル助成金から2500万米ドルを受け取りました。
（翻訳者：松本香代子）
カテゴリ： ニュース , 国連ウィメン日本協会