北アフリカ・中東地域で、男性の育児休暇への高い支持が明らかに

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2023年11月2日

2023年9月27日

UN Womenの新たな調査から、中東・北アフリカ全域で、男性の育児休暇の拡充や父親の積極的な育児参加への支持が高いことがわかりました。

UN Womenは、ヨルダン、レバノン、モロッコ、パレスチナ、チュニジアの5か国で、政府、民間部門、市民社会組織で働く1,154人を対象とした調査を実施しました。この5か国の中で、現在16日以上の育児休暇を取得できる国はありません。

その結果、回答者の86%が、男性の育児休暇期間の延長を支持していることがわかりました。この支持の高さは、子どもと過ごす時間が少なすぎると回答した男性が76%に上ることからも裏付けられます。

ただこの調査は、この地域の多くの人々が新しい政策を求めていることを示すと同時に、複雑な状況も伝えています。

2020年、レバノンのティール。授乳する男性。UN Womenの新たな調査で中東・北アフリカ地域において男性の育児休暇延長に対する高い支持が明らかに。写真:UN Women/マルワン・タータ

より進んでいる現実に追いつかない認識

調査の結果、回答者の68%が、女性の育児休暇の取得は職場で理解が得られやすい、と考えていることがわかりました。しかし、数字の上では男性の育児休暇延長に対する支持が高いものの、男性の場合も同様の理解が得られると考える人は、わずか23%でした。

チュニジアでは、回答者の65%が、父親と母親に平等の育児休暇を認めるべきだと答えましたが、職場の同僚も同じ意見だと考えている人は、16%に過ぎませんでした。

チュニジアほど大きな差はありませんが、他の4か国でも同様の傾向が見られました。回答者の多くが、男女平等の育児休暇を支持しているものの、同僚も同じように支持するかどうかには疑問を感じているのです。

つまり、男性は同僚がより伝統的な考え方を持っていると誤解し、育児休暇を利用すると職場で反感を買うと思い込んでいる可能性が考えられます。

女性の負担と男性の負担

今回の調査で、家庭内で主に自分が子どもの世話をしていると答えた男性は、1人もいませんでした。また、既婚女性の62%が自分が主たる育児者であると回答したのに対し、既婚男性でそう回答したのは、わずか1%でした。

UN Womenがアラブ諸国で実施した前回の調査では、子どもの世話や介護に費やす時間の男女比は、女性の4.7時間に対して男性はわずか1時間で、世界的にみても最も差が大きいことがわかりました。

今回の調査報告書は、子育てに関する社会規範や社会構造が、「育児における男性の役割として男らしさを重視する」風潮を助長していると指摘しています。社会全体が、女性の賃金労働や社会参加を支持する方向へと変化する一方で、男性の役割や男性らしさに対する考え方は、ほとんど変わっていません。

また、報告書には、「生まれた時から、男の子も女の子も、男らしさとはお金を稼ぐこと、というイメージを植え付けられて育つ」という、モロッコ人女性の言葉が引用されていますが、この地域の物価上昇を考えると、それ自体が男性の負担になりつつあります。

UN Womenの過去の調査によれば、アラブ諸国の男性は強い不安感やうつに悩まされており、その主な原因は、自分の家族と親せき縁者を養うために非現実的な収入を期待されることにあります。

子育て政策を最優先に

回答者の過半数(62%)が、育児における男性の役割を政策課題に位置づけるべきだと考えています。

現在、男性が取得できる育児休暇は、モロッコで5か国中最長の15日間、レバノンでは4日間(対象は軍関係者のみ)、ヨルダンとパレスチナではそれぞれ3日間、チュニジアでは2日間です。

これに対し、各国の回答者が理想とする男性の育児休暇は、パレスチナ、レバノン、ヨルダンでは30日間、チュニジアでは2か月間、モロッコでは3か月間でした。

また、報告書では、男性の育児休暇拡大に反対する人の大半が、この政策に反対というよりも「政府予算や企業の経費」への影響を懸念しているのではないか、と指摘されています。

しかし、スザンヌ・ミカイール・エルドハーゲンUN Womenアラブ地域事務所長の言葉を借りれば、育児休暇の拡大は、「男性が子どもとより多くの時間を過ごせるようにすることで、女性も賃金労働に就くことが可能になり、その結果、子どもたちの全体的な幸福度が高まるだけでなく、家庭の収入も増加し、最終的に国の経済的・社会的発展につなげる」ことを目指すものです。

今回の調査では、男性が育児に参加するメリットに対する国民の意識向上から、職場における保育サービスや家族にやさしい制度の拡充まで、さまざまな提言を行っています。

中東・北アフリカ地域における男性の育児休暇と育児における男性の役割に関する意思決定機関関係者の知識、考え方、慣行」の調査は、UN Womenがアラブ世界研究開発機関と協力し、スウェーデン国際開発協力庁の支援を受けて実施しました。

                                                     (翻訳者:祖父江 美穂)

Survey shows high support for paternity leave across North Africa and Middle East | UN Women – Headquartershttps://www.unwomen.org/en/news-stories/feature-story/2023/09/survey-shows-high-support-for-paternity-leave-across-north-africa-and-middle-east

カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会

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