ネパール:「女性はただの災害被害者にすぎないと考えるべきではありません。女性は主体的な変革の担い手でもあります。」

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2023年11月7日

2023年10月5日

取材:トリーシャ・アルバイ

リーナ・チョードリーさんは、ネパール内務省国家減災庁(NDRRMA)ジェンダー平等・障がい・社会的包摂部門(GEDSI)の代表です。チョードリーさんは、UN Women韓国で開いたジェンダートランスフォーマティブ災害リスク軽減に関する地域研修会に参加し、災害時に女性や社会的に弱い立場にある人々のレジリエンスを高めることを目的とした、ネパールの革新的な取り組みを紹介しました。

韓国ソウルにて、UN Womenが開いたジェンダートランスフォーマティブ災害リスク軽減に関する地域研修会で発表する、ネパール内務省国家減災庁代表リーナ・チョードリーさん 写真:UN Women/クアンジュ・キム

災害時にネパールの女性が直面する課題とは?

ネパールは洪水、地すべり、干ばつといったさまざまな災害に対して非常に脆弱です。実際、異常気象現象の影響を最も受けやすい国の10位になりました。

ネパールでは、多くの若者、特に男性が職を求めて国外に出ます。災害が発生すると、現地の女性たちが真っ先に子どもや高齢者など地域の災害時要援護者の救助対応にあたるのが常で、地元の関係者や治安部門、緊急救助隊との連絡もとります。このため、女性たちはけがを負う危険性が高まります。

電力の不足や適切な避難所の欠如、さらには避難所が遠いために、女性がハラスメントや暴力にあうリスクも高まります。また、災害時はさらなるケア労働が女性の身にのしかかり、休む時間や収入を得る時間が削られるばかりか、心身の健康にも影響を及ぼします。

けれども、女性はただの災害被害者にすぎないと考えるべきではありません。女性は主体的な変革の担い手でもあります。

災害リスク軽減において、ネパールはジェンダー平等や社会的包摂にどのように取り組んでいますか。

災害への備えがあれば、地域社会が災害時に適切に対応し、被災後に復旧を迅速にすすめる能力が高まります。ネパール政府はこれを認識し、ネパール国家減災庁(NDRRMA)を設立しました。国家減災庁は、防災準備、災害対応、復興分野で連邦政府、州政府、地方政府の支援にあたっています。

女性、LGBTQIA+の人々、障がい者など、社会的に弱い立場にある人々は、災害が起こるとより深刻な影響を受けるため、杓子定規的な対応ではいけません。このため、ネパール国家減災庁はこうした人々が取り残されないように、現在、災害リスク軽減管理 (DRRM)の戦略的行動計画においてジェンダー平等、障がい、社会的包摂 (GEDSI) に関わる草案を作っています。

DRRM 戦略的行動計画におけるGEDSIの取り組みで良い点をいくつか挙げてください。また、どのように実施していこうと考えていらっしゃいますか。

ネパールのDRRM戦略的行動計画におけるGEDSIの取り組みの良い点は、まず、仙台防災枠組の4つの優先行動に基づいていることです。

計画には交差性も採用しています。計画の活動においては、防災から災害対応、復興にいたるまで、女性、子ども、若者、高齢者、障がい者、LGBTQIA+の人々といった社会的弱者のニーズ、懸念、優先事項を考慮しています。

この計画は、まもなく最高執行委員会で承認される予定です。承認されれば、NDRRMAが内務省、財務省、女性・子ども・高齢者省などの関係省庁と調整を行い、支援を受けて計画を実施します。

DRRM政策、計画、実施において、この包括的な取り組みをどのように組み込んでいこうと考えていらっしゃいますか。

地元の女性、特にへき地や脆弱な地域に住んでいる女性は、災害が起きると真っ先に対応にあたります。過去の災害の経験から得られた女性たちの貴重な知識は、DRRM政策立案や計画策定に不可欠だと思います。その知識を災害リスクアセスメントに確実に活かすことが私たちの戦略の基盤です。この戦略を実行するには十分な資金を確保する必要があります。

さらに、女性の能力を高めること、ジェンダーに配慮した政策を推進すること、地域で行う防災活動への積極的な参加を奨励すること、女性たちの意見に耳を傾けて確実にDRRM計画に取り入れることに重点を置いています。

ネパールで包括的な災害リスク軽減を実現するためには、どのような課題が残っていると思われますか。

私たちは地域社会と協議を行っていますが、それでも他の社会的に弱い立場にある人々の声を把握できていない可能性があります。例えば、女性といってもシングルマザー、妊婦、先住民の女性、ダリット(カーストの最下位層)の女性、障がいのある女性、性暴力やジェンダーに基づく暴力の被害者、経済的に困窮している女性、へき地や脆弱な土地に暮らす女性など、立場はさまざまで、それぞれに特定のニーズや懸念があります。私たちはそうした人々の声に耳を傾けているでしょうか。コミュニティの中で私たちには見えていない障がいを持つ人々も、協議に参加できているでしょうか。山間部や遠隔地で働く人々は、早期警報のメッセージを受け取れるでしょうか。母国語が異なる人々は、データ収集の際に自分の考えを伝えることができるでしょうか。

課題は、確実に誰一人取り残さず、計画立案、モニタリング、資金調達、その他のプロセスにおいて、そのような人々が意思決定に参加できるようにすることです。

(翻訳者:本多千代美)

Take Five: “We should not see women just as victims of disasters. They are also active agents of change.” | UN Women – Asia-Pacifichttps://asiapacific.unwomen.org/en/stories/take-five/2023/10/reena-chaudhary


カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会

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