国連安保理決議1325号の概要とミャンマーにおける女性・平和・安全保障アジェンダ

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2024年1月12日

2023年10月31日

2020年、ミャンマーでの国際女性デーイベントにて 写真: 国連ミャンマー事務所より提供

2023年10月31日、世界各地の人道団体、開発組織、人権団体が女性・平和・安全保障に関する安保理決議1325号の23周年を祝いました。では、この決議とはどのようなものでしょうか。また、この決議はミャンマーの何百万人もの女性と少女に影響を及ぼしている多重の危機と、どのように関連しているのでしょうか。

国連安保理決議1325号とは

2000年10月31日、国連安全保障理事会は女性・平和・安全保障に関する決議1325号(UNSCR 1325)を採択しました。紛争が及ぼす影響がジェンダーによって異なることを認めた初めての決議で、以下の2つの重要な問題を提起しています。

1. 女性は紛争を防ぎ、平和な社会を構築するために重要な役割を果たします UNSCR 1325は、平和と安全保障への対策は女性が和平プロセスに平等に参画している場合にのみ、持続可能であるいうことを認識しています。そして、各国の紛争防止と平和構築のあらゆる段階において女性の完全かつ平等で、意義ある参画を呼びかけています。


2. 女性と少女は暴力的な紛争や戦争によって不均衡に影響を受けています UNSCR 1325は、レイプ、性的奴隷、強制売春、強制妊娠、強制中絶、強制不妊手術、強制結婚、その他直接的または間接的に紛争と関連しているあらゆる形態の性暴力など、紛争に伴う性暴力から女性と少女を守るために特別な対策を要請しています。

女性・平和・安全保障アジェンダとは

UNSCR 1325の採択以前から、世界各国の女性の権利団体が団結して女性・平和・安全保障(WPS)アジェンダの原則を訴えていました。

現在、WPSアジェンダはUNSCR 1325から始まる10の国連安保理決議に基づいた枠組みで、以下の4つの柱を中心に行動することを要請しています。

  • 参画: 紛争の予防、管理、転換についての意思決定過程における国家、地方、地域、国際レベルでの完全かつ平等で意義ある女性と少女の参画
  • 保護: 女性と少女の安全と権利の保護
  • 予防: 紛争の予防と、女性と少女に対するあらゆる形の構造的、身体的暴力の予防。国際法違反の責任者の訴追、国内法の下での女性の権利の強化、地域の女性の和平への取り組みと紛争解決プロセスの支援などを含む。
  • 復興支援: 紛争、紛争後、災害後の各状況において、女性と少女に特有のニーズを満たす支援と、復興支援に主体者として携わる女性の能力の強化
安保理決議1325号が採択されてほぼ4半世紀。平和構築における女性の完全かつ平等で意義ある参画は、願うものでも付属的なものでもなく当たり前であるべきものです。
国連事務総長 アントニオ・グテーレス

WPSアジェンダがミャンマーの女性と少女にとって重要である理由

ミャンマーで生じている多重の危機によって、女性と少女に以前から存在していた不平等、排除、脆弱性が増大しています。負担が大きく時間のかかるケア労働がさらに増えた上、食料不安の増大やジェンダーに基づく暴力(GBV)に直面しています。

2022年のミャンマーにおけるUN WomenとUNDPによる共同調査によると、女性の約3人に1人が日中自分の近所や村内にいても安全だと感じられなくなっています。日中でも安全でないと感じる女性がわずか3.5%だった2019年と大きく変わっています。新型コロナウイルスの感染拡大が始まって以降、女性の5人に1人が女性と少女に対する暴力行為を目にしていることも報告されています。

紛争に関連する性暴力についての国連事務総長の報告書と、ミャンマーに関する独立調査機構国連人権高等弁務官事務所による最新の報告書は、2021年2月以降、国内各地で紛争に関連する性暴力が増加していると指摘しています。また、ミャンマーの女性の権利団体も、家庭内暴力や親密なパートナーによる暴力が、ミャンマーを襲っている多重の危機に伴って増加していると報告しています。

ミャンマーと東南アジアでWPSアジェンダはどのように実行されているか

2005年以降、国連加盟国は政府主導の国別行動計画(NAP)や他の国家レベルの戦略を策定することによって、UNSCR 1325とWPSアジェンダを実行に移してきました。

ミャンマーではWPS NAPは策定されていませんが、女性の地位向上のための10ヵ年国家戦略計画 (NSPAW) が2013年に採択され、「女性と武力紛争」がその項目の1つになっています。さらに、州レベルの行動計画がカイン州、モン州、カヤー州などで策定され、州政府と女性の市民社会組織をはじめとするさまざまな利害関係者がWPSアジェンダを推進しています。

地域レベルでは、ASEANが加盟国のWPS政策の調整と強化の支援を目指し、WPSに関する地域行動計画に着手しました。インドネシアとフィリピンは明確なWPS国別行動計画(NAP)を策定し、ベトナムは現在策定中です。タイなど一部の加盟国には、WPS NAPの原則に沿った政策の枠組みがあります。

UN WomenはミャンマーでWPSアジェンダをどのように実行しているか

UN Womenは2013年からミャンマーで活動し、脆弱な女性と少女を支援するために女性が主導する女性の権利団体の幅広いネットワークと協力しています。

UN Womenは世界中のWPSアジェンダの状況を監督する立場にあります。アジェンダは、以下に示すミャンマーにおけるUN Womenのあらゆる活動の根幹にあります。

  • 人道支援、開発、平和構築の各分野において、証拠に基づく対応を実施する上で不可欠なジェンダーのデータと専門知識を提供し、ミャンマーでWPSアジェンダを実行できる環境を創る
  • 制度的、技術的な能力向上を通して女性リーダーや女性主導の市民社会組織の能力を高めることで、女性が意思決定の場に参画し、リーダーシップを発揮できるよう支援する。能力向上の項目には、組織的統治、リーダーシップ、調停、ジェンダーなどが含まれる
  •  GBVの予防と対応の統合、現金の提供、女性の権利の向上とジェンダーに基づく暴力の予防への意識を高めるための住民教育を通して、脆弱な女性と少女の保護を改善し、女性と少女の人権の尊重を促す
  • ミャンマーの女性主導の市民社会組織(WCSO)への資金提供などを行うことで、人道的活動における女性のリーダーシップと参加を高める。このことが、国内各地での人道的支援の提供、能力開発や助成金を通じた他のWCSOや女性の権利団体の強化支援につながる

ミャンマー、そして世界全体でWPSアジェンダを推進するのに必要なこととは

世界的にみて、平和と安全保障に対する援助においてジェンダー平等は軽視され続けており、女性が主導する団体の貢献は過小評価され、資金も不足しています。2021年のOECDのデータによると、ミャンマーの政府開発援助(ODA)のうち、0.68%しか女性権利団体にわたっていません。

2023年の女性・平和・安全保障に関する国連事務総長の報告によると、2021年の紛争の影響を受けた地域を対象にした二国間援助のうち、ジェンダー平等を主目的とするものは、国連が15%という目標を掲げ、さらにそれを上回ることを要請しているにもかかわらず、わずか6%でした。

UNSCR 1325の採択から23年を迎えるにあたり、UN Womenミャンマーは、WPSアジェンダ推進に向けて世界各地で以下のような緊急の行動を要請する国連事務総長の呼びかけに賛同します。

  • ODAのうち最低でも15%をジェンダー平等に割り当て、そのうち最低1%を特に平和のために活動している草の根の女性団体に届ける
  • 危機的状況において女性と少女の保護を強化するための説明責任の機会を増やす
  • 平和と地域社会の開発に取り組んでいる女性主導の市民社会組織を支援する

追加情報

(翻訳者:早乙女由紀)

https://asiapacific.unwomen.org/en/stories/news/2023/10/the-women-peace-and-security-agenda-in-myanmar

カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会

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