性的搾取・虐待およびセクシュアル・ハラスメントからの保護に関する 機関間常設委員会(IASC)の声明
2024年8月13日
2024年7月30日 機関間常設委員会(IASC)
この声明は、人道支援ワーカーによる性的搾取や虐待、セクシュアル・ハラスメントを積極的に防止し、対応するという IASCプリンシパル(IASCを構成する各機関の長)たちの取組みと、すべての対応活動において PSEA(性的搾取・虐待の防止)の取組みを実施するという人道問題調整官と人道支援カントリーチームの役割を確認するものです [1[i]]。
IASCプリンシパル(IASCを構成する各機関の長)は、以下のような人道的な環境を整えるというビジョン達成に向けた決意を新たにします。その環境とは、危機に巻き込まれた人々が安全に過ごせ、尊重され、いかなる援助ワーカーによる性的搾取や虐待(SEA)も恐れることなく、必要な保護と援助にアクセスできる環境であり、また、援助ワーカー自身も支援され、尊重され、セクシュアル・ハラスメントとは無縁の援助を提供することができると感じられる環境を指します[2[ii]]。
私たちは、性的搾取・虐待およびセクシュアル・ハラスメント(SEAH)はあらゆる場所で発生するものであること、また、人道的な問題のある状況において特に深刻で、組織的に疎外されている人々にとってはさらに深刻な、力の不均衡の表れであることを認識しています。性的搾取や虐待(SEA)とセクシュアル・ハラスメントのジェンダー的側面を考慮し、私たちは、女性、少女、危険にさらされている人々の重要なパートナーとしての役割を強化し、影響を受けている人々に対する援助コミュニティのアカウンタビリティ(説明責任)を高めるための活動を加速させます。私たちは、SEAとセクシャル・ハラスメントを報告する人たちを保護します。差別、搾取、ハラスメント、虐待のない職場を維持するための権利と責任を、すべてのスタッフと関係者が認識し、遵守するよう、一層の努力を重ねます。私たちは、すべての組織において、特にプログラム提供の最前線と最高幹部レベルにおいて、多様性とジェンダー平等の改善にさらに積極的に取り組みます [3[iii]]。
私たちは、SEAとセクシュアル・ハラスメントから人道支援団体を守る決意を強化し、集団的な説明責任を果たすシステムを構築することが、私たちの指導者としての責任であると認識し、このような間違った行いを防止し、それに対処するために必要なリソースを提供することを約束します。
そのために、我々は:
性的搾取と性的虐待からの保護のための特別措置に関する事務総長告示[4[iv]](SEAに対する非難を含む)と、性的搾取と虐待からの保護に関するIASCの6つの基本原則[5[v]]を想起します
国連職員および非国連職員による性的搾取と虐待の撤廃に関する決意声明[6[vi]]、我々職員による性的搾取と虐待からの保護(PSEA)に関する最低運営基準(MOS)、実施パートナーが関与するSEAの申し立てに関する国連議定書[7[vii]]、性的搾取と虐待およびセクシュアル・ハラスメントからの保護に関するIASCのビジョンと戦略2022-2026[8[viii]]、被害者・バイバー中心のアプローチ[10[ix]]に関するIASCの定義と原則[9[x]]など、これまでの取り組みおよび現在の取り組みを想起します
性的搾取や虐待、セクシャル・ハラスメントを防止する職場風土を作り、維持することは、個人と組織の両方の責任であることを再確認します
いかなる形態の性的不法行為に対する怠慢(無行動)を許さないことを再確認します [11[xi]].
性的搾取・虐待およびセクシュアル・ハラスメントを効果的に防止し対応するためには、関係機関間の協力が不可欠であることを認識します
照会や調査における適正手続きの重要性と、すべての被害者および関係者の権利の尊重を想起します
IASCおよびその他の国際的なフォーラムが実施した、世界レベルで取り組むべきPSEAおよびセクシュアル・ハラスメントの問題を特定する数多くの研究および取り組みから得られたベスト・プラクティスおよび教訓に留意します[12[xii]];
PSEAHの取り組みは普遍的に実践されているわけではなく、真の変化をもたらすためにはこれらの取り組みについてさらなる行動を起こすことを優先しなければならないと認めます
SEAおよびセクシュアル・ハラスメントから保護するために、これまでの、そして、現在継続中の取り決めを完遂し、すべての対応が適正手続きの尊重と被害者・サバイバー中心のアプローチとのバランスを考慮した方法で進められるようにするために、以下の活動ポイントに取り組みます。
1. 最低運用基準を完全に実施すること。これには、各機関レベルおよび全体レベルの両方において、各機関の決意と活動に関する運用ツールと現場向けの明確なガイダンスを開発することが含まれます。そのためには、職員が各機関のPSEAの取り組みと行動規範の義務、そして、性的不正行為の根本原因に対処するための予防措置を確実に理解するための効果的かつ継続的な研修が必要です。また、被害者とサバイバーが、適切な医療、心理、社会経済、法律などのサービスを提供、或いは、照会することも必要です。
2. PSEA に関する人道問題調整官の責任を強化し、PSEA が人道支援の基本構造の中で人員と資金を確保できるようにし、各国のPSEA行動計画が制度化されるようIASCのシステム全体としての責任も強化すること [13[xiii]]。そのためには、各国内のPSEAネットワーク [14[xiv]]が、機関間のPSEAコーディネーター [15[xv]]によって統率され、安全で利用しやすいコミュニティからのフィードバックのメカニズムがあり、すべての人道支援において、機関間のSEA照会手順が採用されていることが必要です [16[xvi]]。常駐調整官として既存のPSEAの責務と整合性を持たせるため[17[xvii]]、上記には、被害者・サバイバーが緊急かつ長期的な支援を適切に受けられるようにすること、人道支援活動に関連するPSEAについて緊急援助調整官に定期的に報告すること、毎年の人権擁護委員会の常設の議題としてPSEAに積極的に貢献することなどが含まれます。
3. 被害者・サバイバーの権利、希望、ニーズ、安全、尊厳、健康をすべての予防・対応措置の中心に据えることにより、被害者・サバイバー中心のアプローチを強化します。これには、被害者・サバイバーの安全と安心がすべての過程において第一に考慮されること、とられるすべての行動が十分な情報に基づく選択によって導かれていること、十分な情報に基づく同意に基づいた援助や支援を利用できることを確保することが含まれます[18[xviii]]。
4. 個人および集団の説明責任を強化すること。これには、安全に行うことが可能な場合には、迅速かつ適切な行政処分の実施、行動規範の実施に関するベストプラクティスの開発と共有、犯罪行為に発展する可能性のあるケースを、被害者・サバイバーの同意のもと管轄当局に照会することが含まれます。また、クリアチェックや不正行為情報開示制度[19[xix]]を活用することによってSEAやセクハラに関与したことが判明した人物の再雇用を防止するため、また、パートナーとのPSEA契約条項の徹底のために、総力を結集した努力も必要です。
備考
* アラビア語、フランス語、スペイン語版は近日公開予定
[i] この声明は、PSEAとセクシュアル・ハラスメントに関するこれまでのIASC声明、特に「性的搾取と虐待からの保護に関するIASCプリンシパルの声明」(2015年)、「人道支援部門内のセクシュアル・ハラスメントと虐待に関するゼロ・トレランスに関するIASCプリンシパルの声明」(2017年)、「性的搾取と虐待およびセクシュアル・ハラスメントと虐待の防止に関するIASCの声明」(2018年)に取って代わるものである。
[ii] 「IASCのビジョンと戦略: 性的搾取と虐待、セクシュアル・ハラスメントからの保護(PSEAH)2022-2026」
[iii] 「性的搾取と虐待およびセクシャル・ハラスメントと虐待の防止に関するIASCの声明」(2018年)
[iv] SGB ST/SGB/2003/13 (2003年10月9日)
[v] 性的搾取と虐待に関するIASC6つの基本原則(2019年)
[vi] 国連職員および非国連職員による性的搾取と虐待の撤廃に関する決意声明(2008年)
[vii] 実施パートナーが関与する性的搾取と虐待の申し立てに関する国連議定書(2018年)
[viii] IASCのビジョンと戦略 性的搾取と虐待、セクシュアル・ハラスメントからの保護(PSEAH)2022-2026年
[ix] 被害者・サバイバー中心のアプローチに関するIASKの定義と原則(2023年)
[x] その他、関連した取り組みには、「人道支援セクターにおける人種主義および人種差別への対処に関するIASC原則声明」(2019年)、「人道支援活動における障がい者の包摂に関するIASCガイドライン」(2019年)などがある。
[xi] 性的不正行為には、性的搾取や虐待、セクシャル・ハラスメントが含まれる
[xii] 性的搾取と性的虐待からの保護のための特別措置A/77/748事務総長報告書(2023年2月16日)、PSEA/SHの2021年IASC外部レビューを参照。
[xiii] 「人道支援活動におけるリーダーシップ: 国連常駐調整官・人道問題調整官ハンドブック」および「人道支援カントリーチームのTOR」(2017年)、「人道問題調整官のTOR」(2024年)を参照。
[xiv] PSEAネットワークに関するISACの一般的TORを参照。
[xv] IASC PSEA調整官の一般的TORと PSEA調整官の配置パッケージを参照。
[xvi] 性的搾取と虐待の機関間照会手続き(IA SEARP)に関するIASCガイダンス・ノート(2023年)
[xvii] 「国連開発・常駐調整官システムの管理および説明責任の枠組み(MAF)」(2021 年)、国連総会報告(2022 年)のA/77/748、パラ8 で規定されているとおり、MAF は、性的不正行為の禁止、抑止、それに対応する環境の整備における常駐調整官と国連カントリーチームの役割を定めている。「国連常駐調整官の一般職務記述書」(2022 年)も参照。
[xviii] 被害者・サバイバー中心のアプローチについてのIASC定義と原則(2023年)、SEA被害者への支援提供に関する国連議定書(2019年)、「国連議定書の実施に関するテクニカル・ノート」(2021年)、国連犠牲者の権利声明(2023年)、CHSアライアンスによる「援助セクターにおける性的虐待、搾取、ハラスメントからの保護に対する被害者・サバイバー中心のアプローチ」(2023年)。被害者支援に関する適用基準には、人権諸条約に含まれる基準(例:身体的高潔性の保護、拷問からの自由、効果的救済を受ける権利)、子どもの権利条約およびその選択議定書に含まれる基準、条約機関によって提供される厳然たるガイダンス(例:CEDAW GR 33におけるSGBV被害女性の司法へのアクセス)、ならびに政策やプログラムに従ったガイダンスが含まれるが、これらに限定されるものではない。
[xix] スクリーニング・データベース「クリア・チェック」(unsceb.org/screening-database-clearcheck)および不正行為開示スキーム(misconduct-disclosure-scheme.org)を参照
カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会