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活動現場から

ジェンダー平等チェックリスト: フレックスワーク、同一賃金、公正な技術

― 無償のケア労働や賃金の公平性からAIバイアスまで– 平等性を高めるための3つの行動―

2025年6月30日付

 

初めてジェンダー平等が、医療や気候変動と並んで世界的な最重要課題として位置付けられるようになりました。職場、政治、オンライン空間を形作っているZ世代とミレニアル世代の人たちが、警鐘を鳴らし、ジェンダー平等にスポットライトをあてているのです。  

しかし、Z世代で29%、ミレニアル世代で28%と、若者の約3分の1がジェンダー平等を差し迫った課題ととらえているのに対し、大多数(58%)はどのように支援をしたらよいか分からないと言っています。支援を始めるための方法を家庭、職場、デジタル空間の3つについて提示します。

これらの提案は、UN Womenによるジェンダー平等のための連帯運動 HeForSheへの支援としてチームルイス財団が収集した最新のデータに基づいています。

 

 

1. 柔軟な働き方はジェンダー平等のために譲れない条件です

 

多くの女性にとって、働く時間は午前9時から午後5時の勤務時間内だけではありません。一日中働いている人が大半で、中には無償で働く人もおり、勤務時間後の午後5時から午前9時までは家事や育児に追われています。日の出とともに朝食の準備、子どもたちの身支度から始まり、夜には夕食の準備、宿題の手伝い、入浴の世話、寝かしつけまで毎日休みなく働きます。

UN Womenの生活時間調査によると、女性は無償のケア労働、家事労働を男性より3倍多く行っています。女性が一日平均4.2時間担っているのに対して男性は1.7時間です。この不公平な負担と、融通の利かない制度に柔軟に対応せざるを得ない状況が、職場での不平等の最大の要因のひとつです。それはまた、最も簡単に修正できる問題でもあります。 

急に子どもが病気になったり、学校が休みになったりしたとき、代償を払うのはたいてい女性で、会議の時間を調整し直したり、無給休暇を使ったり、業務から下りたりします。米国では、女性が病気の子どもの世話をするために仕事を休むケースは男性の10倍に上ります。  

柔軟な働き方を取り入れることで、すべてを変えられるかもしれません。チームルイスが調査対象とした女性の約半数強(52%)が、フレックスワークが可能ならもっと仕事を続けやすくなると言っています。報告書によると、 2025年に転職を考えている女性の45%が柔軟に働けないことをその理由とし、 40%がワークライフバランスの貧弱さを挙げています。  

労働文化の変化は女性にとって良いだけでなく、経済にも大きな変革をもたらします。プラグマティックスアドバイザリーの報告書Flexonomicsによると、フレックスワークの導入によって、英国に557億ポンドの経済効果がもたらされる可能性があります。こうした利益は、人材の維持、生産性の向上、そして時代遅れの働き方によって押し殺されている女性の潜在力を最大限に活用することからもたらされます。

女性のための柔軟性を加速させるためにできることは? 

企業: 平等なケア労働の責任と柔軟な働き方を当たり前にする
生活に合わせて働ける仕事を作る: 柔軟な勤務時間やリモートワークの選択を優先し、休暇に関する方 針を見直して、平等なケア労働の責任を奨励し認める。 

家族: 家事を分担する 
平等は家庭から始まる。食べるならば料理をする。服を着るならば洗濯する。住むならば掃除をする。ケアはみんなで担うもの。 

 

 

2. 職場でジェンダー平等を無視することによる損失

 

多くの女性がキャリアにおけるさまざまな場面で不平等や不当な扱いに直面します。女性は給料が低く、昇進の機会が少なく、リーダーの役割に就けず、会議では発言を遮られ、重要なプロジェクトから外され、ハラスメントや自覚なき差別(マイクロアグレッション)にあい、燃え尽きてしまうことが多いです。

世界全体で女性の収入は依然として男性より20%も下回り管理職に占める女性の割合はわずか28%です。多様性の目標は支持されることが多いものの、意義ある変化はなかなか見られていません。

チームルイスの報告によると、企業で働く人の40%以上が、自分の会社の女性を支える取り組みはもっと進めることができると考えており、47%が給与の透明化を優先すべきとしています。

職場文化も抜本的に改革する必要があります。女性は過小評価され、発言を遮られ、意思決定から締め出されていると訴えています。ある女性の回答者は「職場で自分の意見が尊重されない状況がよくある」と書いていました。 

米国では、すべての女性が企業で平等を達成するにはあと50年、白人女性は22年、有色人種の女性は48年かかるとされています。こうしたデータにもかかわらず、世界の多くの政府は最も必要とされているときに平等を推進する政策を放棄しています。  

マッキンゼー・アンド・カンパニーの調査は、一貫してジェンダー多様性を備えたリーダーがいる企業はいない企業より業績を上げていることを示しています。職場の公平を無視することは、ただ女性を押さえつけるだけでなく、進歩を阻み、イノベーションを制限し、成長の原動力となる新奇なアイディア、新たな視点、リーダーシップを企業から奪うのです。簡潔に言うと、包摂的な職場はより公平で、賢く、強く、持続可能であるということです。

職場を平等な場にするためにできることは? 

企業: 進歩だけを見ずに方針を見直す 
同一労働同一賃金、昇進の透明化を優先し、差別やハラスメントを許さない。

個人: ジェンダー平等を日常に取り入れる  
積極的に聞き、偏見を指摘し、どんな場所にいても女性の声を擁護する。

男性: 同志になる 
女性の同僚を支援するために影響力を行使する

 

 

3. 設計による進歩: AIに関するジェンダーバイアスに立ち向かう

 

人工知能(AI)は人間にとって非常に大きな可能性を持っており、働き方、学び方、暮らし方を猛スピードで作りかえています。しかし、AIは何もない環境で動作するわけではなく、私たちが築いてきた世界から「学習」します。AIのツールやシステムが何十年にもわたる不平等によって形作られた偏ったデータ、固定観念や見解を用いて学習したら、AIを活用した製品に影響が及びます。 

現在、 AIにおけるジェンダーバイアスを認識している人は28%しかいません。ただこの問題を知ったことで、特にZ世代とミレニアル世代の半数以上がこのことを心配していると回答しました。当然の反応です。AIシステムは、既に何回も失敗しています。顔認証のソフトは誤認逮捕につながり、AIの採用システムは、女性よりも男性の志望者を優遇し、そして医療アルゴリズムは、特に少数の人種や民族の患者を正確に診断できず、命を救うための適切な治療を受ける機会を失わせました。

問題は誰がAIを使うかだけでなく、誰がAIを作るかにもあります。現在、米国のテック企業の女性従業員の割合は35%ですが、チームルイスの調査対象者のうち、AIに関する女性のリーダーが不足していることを問題視しているのは40%にすぎません。さらに、AIは女性を蔑視するような方法で描写すると思っている人は24%だけです。このことは、より深刻な問題を示しています。AIが不平等によって形作られた世界から学ぶなら、こうした不平等を将来にわたって組み込んでしまう危険があります。

しかし、変化への要求は高まっており、ジェンダーバイアスを減らすために66%の人が政府はAIを規制するべきだと考えています。つまり、ステレオタイプ的なビジュアルを創り出す画像生成ツールから、女性であることを示唆する履歴書を不当に扱うアルゴリズムまで、あらゆる問題に取り組むということです。多くの人が、企業に対して包摂的な設計チーム、倫理基準、よりよい学習データに投資するよう要求しています。

技術におけるジェンダー不平等に立ち向かうためにできることは? 

技術部門のリーダー: 女性のニーズに合ったシステムを構築する 
多様な技術チームに投資する。自分のツールにジェンダーバイアスがないかを点検する。AI開発の核に倫理とジェンダー平等を据える。

ネチズン: 問題を素通りしない 
ジェンダーバイアスを見かけたら声を上げる。女性嫌悪(ミソジニー)や性差別主義のコンテンツを報告する。すべての女性と少女のために機能する技術を求める。 

 

ジェンダー平等にもっと貢献するには? 

ジェンダー平等に関してこれまでで最も先見性がある計画である北京行動綱領の採択から30年を迎えました。今こそ約束を実行に移す時です。すべての女性と少女のために、より平等な世界を築くために踏み出せる大胆な一歩を探りましょう。

今日からできる行動を探りましょう。

 

原文:
Your gender equality checklist: Flex work, equal pay, fair tech | UN Women – Headquarters

 

(翻訳者:早乙女由紀)

※ 翻訳者の方々が、ボランティアでUN Womenの記事を翻訳してくださっています。
 長年のご協力に感謝申し上げます。