2018年の世界を振り返って―女性の大きな前進  WUNRNより転載

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2019年3月31日

(WUNRNとは、女性と少女に関する国連の情報をレポートし配信するNGOです。) 
アレクサ・アンダーウッド、2018年12月4日

スペインの新閣僚、大臣の多くは女性

スペインの新政府、女性大臣の数が歴史上最高、女性11人、男性6人Pablo Blazquez Dominguez/Getty Images

6月スペインのペドロ・サンチェス首相は閣僚に過半数の女性を任命したことで歴史を塗り替えました。ほとんど3分の2の閣僚レベル任命が女性です。6月2日に就任したサンチェスはこの内閣を記者たちに以下のように表現しています。「ジェンダー平等、ジェネレーション横断、世界に開かれているがEU中心」と。数十年前のスペインでは女性大臣は皆無だったことを考えればこの動きは目を見張る変化と言えます。

これはスペインを際立たせました。ヨーロッパの女性閣僚の多さでスウェーデン、フランスを追い越したのです。アメリカはまだ道のりが険しいです。ザ・アトランティックによるとトランプ大統領は自分の内閣に女性の2倍の男性を任命し、その結果閣僚は19人の男性とたった5人の女性から成っています。女性は男性に比べ政府や政治のリーダーシップをとるポジションにつく数が少ないことはしばしば指摘されることです。でも多くの女性がこのような権力の座に就くと、あとに続く女性たちが成功する確率が高くなり、それがこれからの世代のための地ならしをすることに繋がります。

サウジアラビアの女性達、合法的に運転可能に

今年の夏サウジアラビアの女性はついに合法的に運転できる権利を得ました。一昨年9月にサルマン国王が長年の禁止令を廃止し、湾岸国女性はついに運転免許を登録することができるようになり、6月から運転できるようになりました。女性ドライバーはこのように言っています。道で男性ドライバーは警笛を鳴らしたり、親指を立てるしぐさで熱狂的に迎えてくれ、警察官は花束を差し出したりしてくれた、と。

「これで色々なことが変わるでしょう」とサウジの送迎会社で最初に合法的に運転をしたファドヤ・バスマは6月にガーディアン紙に述べています。「サウジはもう昔のサウジには戻りません」禁止令の廃止はサウジアラビアの女性達に今まで経験したことのない行動の自由を与えました。しかしながらまだたくさんの課題が残っています。

サラ・ウィルドマンがヴォックスVoxに書いているように、サウジ女性はまだ男性による抑圧的な保護者システムに従わなくてはなりません。これは女性が何をするにも―結婚から外で働くこと、国の内外で自由に動き回ることすべてに親族の男性(父親、兄弟、夫、息子)の許可を得ることを課しています。サウジ女性に参政権が認められたのは2015年12月になってからです。この新政策は重大な変化が起こったことを表していますが(といってもこれは経済的動機によるものなのですが)論争がなかったわけではありません。

サウジのモハメド・ビン・サルマン皇太子(MBS)は、鳴り物入りの国家改造計画の一環として禁止令を解くことに熱心だったのです。サウジの女性達は時には命がけで運転の権利を得るために戦ってきました。そしてMBSは国際メディアではサウジを解放する原動力として称賛されていますが、禁止令廃止を訴えて戦った数人の女性活動家はいまだに刑務所に留置されているのです。伝わるところによると何人かは拷問も受けたようです。したがって女性の自動車運転禁止令廃止は前に進む一歩ではあったものの、それだけでは十分ではありません。

アイルランドの有権者、厳しい中絶禁止令を打ち破る

「やったー!」2018年5月26日、ダブリン城で中絶を禁止する憲法修正第8条に関する国民投票の結果が発表されると、投票者が大いに喜び祝いました。Charles McQuillan/Getty Images

5月、アイルランド市民はアイルランド憲法修正第8条の撤廃に投票し、合法的な中絶に道をひらきました。同国の憲法による中絶禁止は、先進国では一番厳しいものと考えられてきました。レイプされた場合も、健康上のリスクがある時も手加減されませんでした。ただし、明らかに死亡のリスクがある、あるいは死が迫っている時は酌量を求めることができました。この結果、多くの女性は、その余裕があればですが、国外で中絶せざるを得ませんでした。中には非合法的に堕胎して、しばしば危険な状況に陥りました。2012年、サビタ・ハラパナバールと言う女性が、流産による敗血症で死亡し、調査の結果中絶法がこれにかかわっていたことが分かりました。この出来事によって、中絶の権利を訴える活動家の発言する土壌ができ、アイルランド首相が国民投票を実施し、国民がこの法律の撤廃に投票したのです。

ヴォックスVoxのザック・ボーシャンが言っているように、多くがこの投票を「1983年に憲法修正条項が施行されて以来、その撤廃に向けてずっとキャンペーンを続けてきたアイルランドのフェミニストの歴史的勝利」とみています。ボーシャンによれば、撤廃を求める感情は特に若者や都市の住民に強く、これは新左翼や世俗の大半が従来の古くて保守的なカトリック世代にとってかわったことを意味しています。アイルランド首相は9月に中絶国民投票法に署名し、政府は現在この新政策を実施していくための法整備を行っています。厚生大臣は、女性たちは2019年初めには国内のクリニックで合法的な中絶サービスを受けられるようになるだろうと予測しています。

女性―特に有色人女性―アメリカ合衆国中間選挙で記録を破る

ミネソタ2018年11月6日の選挙祝賀パーティーでのイルハン・オマールミネソタ民主党下院議員候補。オマールはミネソタの第5地区戦に勝利し、イスラム女性として初めて連邦議員に選出されました。Stephen Maturen/Getty Images

性的に女性を襲ったことを堂々と自慢するトランプ大統領が、ここ数年女性有権者を刺激してきたことがかえって彼女たちを政治の場でより活動しやすくしたのではないかと取りざたされてきました。この噂は11月に現実のものとなり、今までで一番多い女性が下院議員に当選し、国中の女性、特に有色人女性が歴史を塗り替えたのです。

ヴォックスVoxのキャロライン・フックが説明するように、カンサスでは初めてアメリカインディアンの女性で民主党のシャリス・デービッドが米国議会に当選しました。ニューメキシコのデブ・ハーランドも同様でした。議会では初めて二人のイスラム教徒女性が議席を得ることになるでしょう。ミネソタのイルハン・オマール、ミシガンのラシーダ・トライブは大差で勝利しました。民主党のアヤナ・プレスリーはマサチュセッツ代表として初めて議会に当選した黒人女性です。

女性達は他の障害も克服しました。サウスダコタのクリスティ・ノエムは最初の女性州知事になりました。バーモントではクリスティン・ハルクイストがUSA最初のトランスジェンダー女性候補として知事の座を競いました。民主党からジョージア知事に立候補したスターシ・アブラムスは主要党派から知事候補に指名された最初のアフリカ系アメリカ人です。(さらに詳しい2018年中間選挙の「最初の女性」リストはこちらhere.)このような成功は重要で、今回の選挙を超えて大きく広がっていくでしょう。

ワシントンにあるシンクタンク、ブルッキングス研究所の報告書によると、女性が法律策定にかかわる地位にもっとつけば、女性や家族に影響を及ぼす法律が増えるということです。立法職にある女性は政界でパートナーシップを組みがちで、ある研究によると女性は連立を組もうとする傾向が強く、男性より新しい政策を生み出す可能性が高いのです。もちろん女性が権力の座につけば、ロールモデル、メンターになって若い女性達を資することになるでしょう。アメリカ人女性は、政府や取締役会などで男性と同等の地位につけるよう闘っています。でも2018年の中間選挙の結果は、しっかり前進しているという重要な兆候です。

2018年に女性が達成した他の進歩

イランでは何十年の歴史上はじめて女性がスタジアムで男性と一緒にワールドカップを観戦できました。ただし、公式には禁止令が解かれてないので、これは前に進む一歩という象徴的な出来事ととらえることができます。

ニュージーランドではジャシンダ・アーダーン首相が現職中に出産した2番目の国家元首、育児休暇をとった最初のリーダーとなり、首相と母親が両立することを示しました。

2018年のノーベル賞は、レイプ被害者を治療したコンゴの外科医、デニス・ムクウェゲとヤジディ少数宗派のメンバーであるイラク人女性、ナディア・ムラドに授与されました。ムラドはISISにとらえられましたが、現在は性的人身売買被害者のための啓発活動をする活動家で、この賞を授賞した最初のイラク女性です。

 最後に、USA, 中国、インド、日本など様々な国で#MeTooが国を超えてハラスメントや性的暴行についての会話に火をつけ、何十年にもわたって自分の力を乱用してきた権力の座にある男性たちの責任を追及する重要なプロセスが始まりました。これはごく限られたリストに過ぎず、きっともっと多くの例が存在すると思われます。でもすべてをまとめてみると、この進歩すべてが2018年は悪くない年だったと―実際にはある点では非常によい年だったことを―示してくれています。このような進歩を見ると、来年はもっと良い年になりそうです。

(翻訳 理事 本田敏江)

カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会

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