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ジェンダーによるデジタルデバイド(情報格差)を解消すれば、世界のGDPを1.5兆米ドル押し上げ、3000万人の女性を貧困から救える可能性がある

2025年9月15日 ニューヨーク発– UN Women(国連女性機関)とUN DESA(国連経済社会局)が発表した最新の報告書『ジェンダー・スナップショット2025』によって、世界は岐路に立っていることが明らかになりました。投資を行えば、ジェンダー平等は手の届くところにあるのです。

女子の学校修了率は過去最高水準に達し、妊産婦死亡率は2000年から2023年にかけておよそ40%減少しています。包括的な暴力対策(法律、政策、制度的仕組み、研究とデータ、予防、サービス、予算)を実施している国では、保護体制が脆弱な国と比べて、親密なパートナーによる暴力発生率が2.5倍低くなっています。気候変動に関する交渉の場での女性のリーダーシップは倍増しました。また、過去5年間で99の新法・改正法が差別撤廃に貢献しました。

UN WomenとUN DESA(国連経済社会局)は15日、第80回国連総会(UNGA80)に際してニューヨークの国連本部で記者会見を開き、『ジェンダー・スナップショット2025』を発表。本報告書は、ジェンダー平等への投資を怠った場合の代償と、達成可能な成果の両方を示しています。写真:UN Women/ライアン・ブラウン

UN Womenのシマ・バフース事務局長は次のように述べています。「ジェンダー平等が優先されてきた場所では、そのジェンダー平等が社会と経済を前進させてきました。ジェンダー平等への的を絞った投資には、社会や経済を変革する力があります。ジェンダーによるデジタルデバイド(情報格差)を解消するだけで、世界中の3億4350万人の女性と少女が恩恵を受け、2050年までに3000万人が貧困から脱却、2030年までに世界のGDPを推定1.5兆米ドル押し上げることが可能です。」

一方で、女性の権利に対するこれまでにないほどの反発、市民活動の縮小、ジェンダー平等に関する取り組みへの資金削減の拡大が、これまでに苦労して勝ち取ってきた成果を脅かしています。この傾向が続けば、2030年になっても3億5100万人の女性と少女が依然として極度の貧困の中で生活していることになります。紛争は女性と少女にとってこれまで以上に命を脅かすものとなっています。現在、6億7600万人の女性と少女が死と隣り合わせの紛争の脅威の下で暮らしていますが、これは1990年代以降で最も高い数字です。2024年には、中程度または深刻な食料不安に直面している成人女性は、成人男性より6400万人多く存在しました。データは、世界がジェンダー平等の面で後退していることを示していますが、同時に、投資と政治的意思があれば、この流れを逆転させることが可能であることも示しています。

「すべての人にとってのジェンダー平等実現を目指す『持続可能な開発のための2030アジェンダ』の達成まで残り5年となりました。『ジェンダー・スナップショット2025』は、達成に失敗した場合の代償が計り知れないほど大きい一方で、ジェンダー平等によって得られる利益も同様に計り知れないことを示しています。ケア労働、教育、グリーン経済、労働市場、社会的保護に焦点を当てた加速的な行動と介入を行うことによって、2050年までに極度の貧困状態にある女性と少女を1億1000万人減らすことが可能であり、累積的な経済的利益として推定342兆米ドルを創出できます」と、国連経済社会局次長の李軍華(リー・ジュンファ)氏は述べました。

報告書『ジェンダー・スナップショット』は、ジェンダー平等と「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に関する世界有数のデータ情報源です。100以上のデータソースに基づき、SDGs17の目標すべてにおける女性と少女の進捗状況を追跡しています。2025年版の本報告書は、SDGs達成期限まで残り5年となった現在、世界がSDGsのジェンダー平等のあらゆる指標を達成できない見通しにあることを示しています。

第80回国連総会(UNGA80)開催のため世界の指導者がニューヨークに集う機会に、そして、9月22日で『北京宣言と行動綱領』の採択から30年になるのを記念して、『北京+30行動アジェンダ』は、すべての女性と少女の権利・平等・エンパワーメントに向けた明確な道筋を示しています。このアジェンダには、加速的な実施に向けた6つの重点分野(貧困からの解放、暴力の根絶、平等な権力とリーダーシップ、気候正義、平和と安全保障、デジタル革命への完全参加)が提示されています。これら6分野を横断する課題として、若い女性と少女たちの声を強化することが掲げられています。私はすべてのリーダーに対し、この取り組みに向けた確約と投資を行い、女性の権利が広く実現され、その成果がすべての人々と共有される世界を選択するよう強く呼びかけます」とバフースUN Women事務局長は締めくくりました。

ジェンダー・スナップショット報告書について

『ジェンダー・スナップショット』は、ジェンダー平等と「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に関する世界有数のデータ源です。100以上のデータソースを基に、SDGs17の目標すべてにおける女性と少女の進捗状況を追跡しています。「2030アジェンダ」の達成期限まで残り5年、『北京行動綱領』採択から30年を迎える今、本報告書は厳しい警告とならんで、向かうべき明確な道筋を示しています。「北京+30行動アジェンダ」の基盤となる本報告書は、2030年までにすべての女性と少女のジェンダー平等を達成するために、緊急かつ加速的な行動が求められる6つの重点分野を特定しています。

UN Women(国連女性機関)について

UN Womenは、女性の権利、ジェンダー平等、すべての女性と少女のエンパワーメントを推進するために存在しています。ジェンダー平等を担う国連の主導機関として、法律、制度、社会的行動、支援サービスを変革し、ジェンダー格差を解消し、すべての女性と少女にとって平等な世界を築いていきます。私たちは、常に、あらゆる場所で、女性と少女の権利を世界の進歩の中心に据え続けます。なぜなら、ジェンダー平等は私たちの活動内容であるだけでなく、私たちの存在意義そのものだからです。

UN DESA(国連経済社会局)について

国連憲章に根ざし、変革的な「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を指針とするUN DESA(国連経済社会局)は、国連の開発分野を支える柱です。UN DESAは国際社会を結集し、世界が直面する最も喫緊の課題への共通の解決策を模索し、各国が経済・社会・環境分野における国際的な約束を自国の行動計画へと具体化することを支援しています。

(原文)https://www.unwomen.org/en/news-stories/press-release/2025/09/closing-the-gender-digital-divide-boost-global-gdp

※『ジェンダー・スナップショット2025』のウェブサイト(英語)はこちらです。
 報告書全文だけでなく、各種データの要約もご覧いただけます。ご活用ください。
  https://www.unwomen.org/en/resources/gender-snapshot