ウクライナの女性と少女の状況に関するUN Women(国連女性機関)の記者会見
戦火の長引くウクライナで女性と少女のために活動を続けるUN Womenへの皆さまからの日頃の温かいご支援に、心より感謝申し上げます。
最新の状況に関するUN Womenウクライナ事務所代表からの報告です。
ジュネーブ国連欧州本部におけるサビーネ・フライザー・ギュネスUN Womenウクライナ事務所代表の記者会見における発言
2025年10月10日付
本日はこのような機会をいただき、誠にありがとうございます。ウクライナの女性と少女の状況について、戦争の影響を大きく受けている東部の2地域、ドニプロとザポリージャへの最近の現地ミッションを踏まえた最新情報をお伝えしたいと思います。
ロシアによる大規模侵攻の開始から3年半以上、また、敵対行為が始まってから11年が経過した今も、戦争は激化の一途をたどっています。さらなる命が奪われ、甚大な破壊が引き起こされ、何百万人もの人々が避難を余儀なくされています。経済は壊滅的な打撃を受け、広大な土地は死の地雷原と化しています。
キーウは今朝新たな攻撃を受け、深刻な停電と断水に見舞われています。エネルギー施設への大規模な攻撃は激化を続けており、さらなる犠牲者を生み、大規模な破壊をもたらし、人々は暗闇と寒さの中で、全面戦争が始まってから4度目の冬を迎えようとしています。一方、鉄道への攻撃は生命線を遮断し、ウクライナ北部と東部の最も深刻な被害を受けた地域からの避難を阻んでいます。
安全な場所はどこにもありません。女性や少女を含む民間人を殺傷する容赦ない攻撃により、人的被害は深刻さを増しています。
2025年を通じて、民間人への被害は急激に増加し、死傷者の総数は2024年と比べて40%増加しました。2022年2月以降、少なくとも4,403人の女性が殺害され、313人の少女が命を落としています。
数字の背後には、この国に住む女性や少女たちの物語があります。
ここで、前線から30kmも離れていない約100万人が暮らす都市、ザポリージャでのいくつかのストーリーを共有させてください。2日前、UN Womenは、女性権利団体「ウクルプロスティール」と協力し、女性退役軍人、女性起業家、女性権利団体のリーダーらから成る3つの異なる女性グループとの対話の場を設けました。彼女たちの話は非常に力強く、人道支援と復興において女性が抱える特有のニーズが明らかになりました。私たちは、計画策定と資金調達において、こうしたニーズを考慮する必要があります。
これらの女性たちは、被害者や英雄といった単純なカテゴリーには収まりません。例えば、60歳前後の女性、オルハ・ビエルースさんは、戦争退役軍人であり、戦死した兵士の妻であり、現役兵士の母親でもあります。彼女は特にメンタルヘルスに関して大きなニーズを抱えていますが、それと同時に活動を続けてもいます。特にザポリージャやその周辺地域における女性退役軍人の権利のために組織化を進めています。
私が出会ったもう一人の女性、ナタリア・ヴォロノフスカさんはマリウポリからの国内避難民です。かつてはインテリア装飾の事業を営んでいましたが、それは破壊されてしまいました。ザポリージャでの避難生活の中で、彼女はアロマキャンドルを製作する会社を立ち上げました。彼女は、ザポリージャで続く攻撃の中において、キャンドルを温もり・平和・光を象徴する美しいものとして捉えています。
この二人の女性、そして、ザポリージャのような地域で暮らす女性たちは、一方で人道支援を切実に必要としていますが、他方では復興を主導し始めています。
明日10月11日は国際ガールズデーでもあります。しかしウクライナでは、子どもたちの世代全体が教育の機会を奪われています。
460万人の子どもたちが依然として深刻な学習の障壁に直面しています。例えばザポリージャでは地下学校の建設を進めていますが、需要を満たすには不十分です。
ウクライナで繰り返されている犯罪は、サバイバーだけでなく、その家族やコミュニティにも深く長く残る傷を残しています。
今週、私たちは「女性・平和・安全保障に関する国連安保理決議1325」を祝し、「女性・平和・安全保障(WPS)アジェンダ」の25周年を記念しました。
国連安全保障理事会でアントニオ・グテーレス事務総長は次のように述べました。「私たちは保護を必要としています。女性、平和構築者、人権擁護者に対する暴力を一切容認しない姿勢を徹底し、紛争関連の性暴力を含む、あらゆるジェンダーに基づく暴力の加害者に対して責任を問う必要があります。」
現在ウクライナでは、女性たちは攻撃による苦難を今も受け続けている一方で、人道支援や復興対応においてリーダーシップを発揮しています。
しかし、彼女たちは依然として大きな障壁に直面していて、特に資金面での障壁は深刻です。ウクライナに届く復興支援のうち、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントを優先しているものは1%未満に過ぎません。それでも、ザポリージャ(女性が代理市長を務めている)のような都市では、女性たちは組織的に活動しており、彼女たちが現在の取組みを継続していくためには追加的な支援が強く求められています。
今こそウクライナの女性と少女たちと共に立ち上がり、これまで以上に強い決意をもって支援すべき時です。私たちが力を合わせれば、彼女たちはこの戦争を力強く耐え抜き、ウクライナのジェンダーに配慮した復興と公正で平等な未来を形作る力強いリーダーとして立ち上がることができるはずです。
ありがとうございました。
