資金削減により、3団体に1つが「女性に対する暴力撤廃」プログラムを中断または終了
2025年10月27日付
UN Women(ニューヨーク)発 — 大規模な援助削減により、女性と少女に対する暴力の撤廃に欠かせない団体そのものが崩壊の危機に瀕しています。
UN Womenの最新報告書『危機にさらされ、資金不足の中で (“At Risk and Underfunded”) 』によると、世界の428の女性権利団体および市民社会組織を対象とした調査の結果、各国政府による資金削減を背景に、支援サービスが縮小し、アドボカシー活動も沈黙を余儀なくされ、さらに多くの女性が暴力の被害にさらされる危険に直面していることが明らかになりました。

調査対象団体の3分の1以上(34%)が、女性と少女に対する暴力撤廃のためのプログラムを中断または終了しており、40%以上が当面の資金不足によりシェルター、法的支援、心理社会的支援、医療支援などの、命を守る支援を縮小または中止しています。78%の団体はサバイバーにとって欠かすことのできない支援の利用機会が減少していると報告し、59%は暴力の不処罰と常態化の増加を認識していました。また、4分の1近くの団体は、暴力を未然に予防するための介入を中断または完全に停止せざるを得なかったと回答しています。
「女性権利団体は、女性に対する暴力対策の進展を支える中核的存在であるにもかかわらず、存続の危機に追い込まれています。数十年間にわたる努力の結果勝ち取った成果が資金削減によって失われることは、絶対にあってはなりません。各国政府とドナーに対し、資金の確保と拡充、そして資金活用の柔軟化を要請します。持続的な投資がなければ、女性と少女に対する暴力は増加の一途をたどるだけです」と、UN Women女性と少女に対する暴力撤廃(EVAW)部のカリオピ・ミンゲイロウ部長は述べました。
女性と少女に対する暴力は、依然として世界で最も広範に見られる人権侵害の一つです。推定7億3600万人の女性、すなわち、ほぼ女性3人に1人が身体的あるいは性的な暴力を経験しており、その大半は親密なパートナーによるものです。今年初め、UN Womenは、危機的状況下にある女性主導団体の大半が深刻な資金削減に直面し、ほぼ半数が閉鎖の危機にあると警告しました。この警告は、報告書『危機にさらされ、資金不足の中で』の調査結果でも裏付けられています。
報告書はさらに、今後2年以上にわたって活動を維持できると見込む団体はわずか5%にとどまることを明らかにしています。また、85%の団体は女性や少女に対する法律や保護措置の深刻な後退を予測し、57%は女性人権擁護者に対するリスクの高まりに深刻な懸念を表明しています。
こうした資金不足は、4カ国に1カ国で女性の権利に対する反発が強まる流れの中で進行しています。資金を失った団体の多くは、真の変化をもたらす長期的なアドボカシー活動ではなく、基礎的な支援サービスの提供に限定せざるを得ない状況に置かれています。
報告書『危機にさらされ、資金不足の中で』は、世界が「北京宣言と行動綱領」の採択から30周年を迎えるタイミングで発表されました。この進歩的なロードマップは、政府が合意したジェンダー平等と女性の権利達成のための指針であり、その核心には女性に対する暴力の撤廃が据えられています。
取材のお問い合わせは、UN Women メディアチームmedia.team@unwomen.orgまで。
本報告書について
UN Womenが発行した報告書『危機にさらされ、資金不足の中で:資金削減が女性と少女への暴力撤廃の取り組みをいかに脅かしているか』は、欧州連合(EU)からの資金提供と「女性に対する暴力撤廃国連信託基金」の支援のもと、UN Womenの「アドボカシー・連携構築・変革的フェミニスト行動(ACT)プログラム」の一環として作成されました。本報告書は、428団体を対象とした世界規模の調査、主要関係者へのインタビュー、文献調査に基づき、資金削減がどのように不可欠なサービスを崩壊させ、アドボカシー活動を沈黙させ、ジェンダー平等の進展を損なっているかについて、これまでで最も包括的な証拠を提示しています。
ACTについて
「アドボカシー・連携構築・変革的フェミニスト行動(ACT)プログラム」は、欧州委員会(EU)とUN Womenが「ジェンダーに基づく暴力対策行動連合」の共同リーダーとして、「女性に対する暴力撤廃国連信託基金」と連携して推進する画期的な取り組みです。ACTの共有アドボカシー・アジェンダは、フェミニスト女性権利運動の優先事項を重視し、その声を拡大するとともに、共通の優先事項、戦略、行動に焦点を当てた協力枠組みを提供します。
UN Women(国連女性機関)について
UN Womenは、女性の権利、ジェンダー平等、そしてすべての女性と少女のエンパワーメントを推進するために存在しています。ジェンダー平等に関する国連の主導機関として、ジェンダー格差を解消し、すべての女性と少女のための平等な世界を構築するために、法律、制度、社会的行動、支援のあり方を変革します。私たちは、常に、あらゆる場所で、女性と少女の権利を世界の前進の中心に据え続けます。なぜなら、ジェンダー平等はUN Womenの活動内容であるだけでなく、私たちの存在そのものだからです。
