デジタル暴力も現実の暴力: ある活動家の安全と人権のための闘い
2025年11月18日付
「嫌がらせをする人から離れれば、少しは安心できるかもしれません。でも、デジタル暴力はあなたがどこへ行ってもついてきます」とリュビツァ・フエンテスさんは言います。
フエンテスさんは、すべてが変わってしまった瞬間を覚えています。
エクアドル最大の公立大学の法学部で学んでいたときのことでした。「女性は本物の法律家にはなれない、ただ男性を物色しに来ているだけだからだ」という教師の発言に、フエンテスさんは異議を唱えました。その日以来、彼女は、教室ではフェミニストを軽蔑し侮辱する言葉である「フェミナチ」と呼ばれるようになったのです。
教室での嫌がらせから始まったことが、すぐにデジタル上で悪夢のような状況にエスカレートしました。インスタグラムには、女性の権利を擁護するのをやめるよう警告するダイレクトメッセージが送られてきました。大学のフェイスブックの彼女のページには、匿名で脅しの投稿が殺到しました。レイプ予告のビラやうわさが大学中に広がりました。そしてある日、彼女を暴行するよう雇われた人がいることを耳にしました。
「正気を保ち、自分を信じ続けるにはキャンパスから離れる必要があると考えました」。フエンテスさんは海外留学をすることに決め、真夜中にそっと出発しました。現在、彼女は人権弁護士で、高等教育の場でのジェンダーに基づく暴力と闘う団体を創設しました。

デジタル虐待: 身近にありながら見過ごされている世界的な蔓延
フエンテスさんの経験は、珍しいことではありません。デジタル虐待は実際、世界中で問題になっています。女性の16~58%がテクノロジーによって助長されるジェンダーに基づく暴力(デジタル暴力)を経験しています。エコノミスト・インテリジェンス・ユニットの世界規模の調査によると、女性の38%がオンライン上で自分自身が虐待を受けたことがあり、また、85%が他の女性が被害に遭っているのを見たことがあるそうです。
新型コロナウイルス感染症が流行した期間、生活がオンラインに移行するにつれ、デジタル虐待やオンラインハラスメントが激増しました。
「男性中心社会は、家の中にいる人たちにまで影響を与えられるように姿を変える術をつかんだのです」とフエンテスさんは言います。「オンライン上では誰もがより大胆になります。画面の向こう側や偽のユーザーIDで、本当の自分を隠すことできるからです」。
デジタル暴力とは?
デジタル虐待またはデジタル暴力とは、情報通信技術やデジタルツールなどを使って行われ、助長され、深刻化され、拡大される行為で、身体的、性的、心理的、社会的、政治的、経済的な悪影響を与え、権利と自由の侵害などをもたらす、またはその恐れがあるものを指します。
また、「テクノロジーによって助長される女性に対する暴力」という、テクノロジーがオンライン、オフラインの両方で女性を傷つけることを可能にする仕組みをより適切に反映した用語としても知られています。
デジタル革命は、セクシュアルハラスメント、つきまとい、ヘイトスピーチ、誤情報、誹謗中傷、なりすましといったジェンダーに基づく暴力の従来の形を悪化させると同時に、ハッキング、アストロターフィング、ディープフェイクなどの動画や画像ベースの虐待、個人情報の暴露(ドキシング)、サイバーいじめ、オンライングルーミングなどの新たな形の虐待を作り出しました。
バーチャルの世界が恐ろしいまでに現実になるとき
デジタル暴力は単に画面上で発せられた言葉として片づけられる問題ではなく、現実の影響を伴う現実の暴力です。
フエンテスさんにとってのオンラインハラスメントは、ソーシャルメディア上でフエンテスさんが共有する投稿、意見、友人関係を常に監視されることでした。
「常に監視されていると心が不安定になります」と彼女は言います。「オンラインで意見を表明するにはいつも120%の準備をしなければなりません。フェミニストだったり、活動家だったりする場合、間違えることは許されません。過去があったということさえ許されません」。
若い女性と少女にとっての危険度は高まっており、ある世界的調査によると58%が何らかのオンラインハラスメントを経験しています。公的な場で活躍する女性の場合は、その割合がさらに上がります。最新の報告(2020年)で、UNESCOは、女性ジャーナリストの73%が仕事中にオンライン暴力を経験したことがあると述べています。
その影響はデジタルの世界だけにとどまりません。女性と少女は教育をあきらめ、オンライン上では目立たないようにし、精神的に病み、声を上げる自信を失います。デジタル虐待が現実世界にまでエスカレートした場合、身体的暴力やフェミサイドにまで至る場合があります。

司法ギャップを埋めること、フェミニスト団体を支援することが今どうして重要なのか
これほど大きな危機にもかかわらず、オンライン虐待を告訴する法律を制定している国は半数にも届きません。
「この問題について言及している法律がないのです」とフエンテスさんは言います。「公選弁護人に相談しても、『解決まで5年待たなければならないけれど、本当にやりたいのですか?』と言われるだけです」。
こうした司法制度の欠落が常態化して、サバイバーが虐待を報告したり、法の裁きを求めたりすることができません。一方、テック企業は自社のプラットフォーム上で起きている暴力に対する責任を遅々として果たそうとしていません。
フエンテスさんの団体は、現在、年間600人と一緒に早期の暴力防止に取り組み、大学が安全に関するガイドラインを策定する支援をしています。サバイバーに法的支援を提供し、毎年1,000人をアドボカシーキャンペーンに動員しています。
まさにこのようなフェミニストや女性団体による草の根活動にこそ、支援が必要です。フエンテスさんは、欧州委員会とUN Womenによる画期的な取り組みであるACTプログラムの市民社会運営委員会の一員として、現地の実情や女性と少女の優先事項について対応できるよう活動しています。
女性に対する暴力をなくすための政策変更を進めるには、独立した強いフェミニスト運動が最も重要な要素であることは明らかですが、近年、女性の権利団体に対して前例のないほど資金が削減され、サービスや支援が大幅に縮小されています。2025年6月から7月にかけてACTプログラムのもとでUN Womenが行った世界的な調査で、回答者の34%以上が資金の削減でプログラムが停止したと答え、さらに驚くことに89%が地域社会のサバイバー支援サービスへのアクセスが大幅に、または深刻に減少したと回答しました。
ACTプログラムは、500以上の女性権利団体と協力し、その能力、連帯、ネットワークの拡大に取り組んでいます。フエンテスさんのような若いリーダーを支援し、その声を広げていくことがこのプログラムの主要な目的です。
デジタル暴力をなくすには何を変えればよいのか、そして今できることとは?
政府、大学、テック企業、そして彼女のストーリーを読んでくれた女性と少女へ、フエンテスさんからの助言です。
- 政府と大学へ: デジタル暴力に対応する包括的な法律とガイドラインを策定すること。虐待が学内で目に見える形で起こっていなかったとしても、説明責任の仕組みを構築すること。
- テック企業へ: より安全なオンライン空間を創るために予防措置に投資し、ジェンダー活動家を雇用すること。自社のプラットフォーム上で起きた暴力に対して責任を取ること。
- 教育者へ: 教育現場でのデジタル暴力のパターンを認識し、そのパターンを断ち切る方法を学ぶこと。
デジタル暴力に直面している人へ。フエンテスさんからの言葉
- 携帯の電源を切ってひと息ついてください。「立ち止まることで、自分がすべきことをつかむ余裕ができます」とフエンテスさん。虐待的なコンテンツにかかわり続けると、デジタル暴力から逃れられないという悪循環に陥ります。
- 信用できる人に相談してください。あなたは一人ではないし、あなたのせいではありません。「自分の身体、写真、個人情報をどう使うかは、あなたが決めることができます。でもそれは、暴力を容認しているということではありません」。
- 自分が使用するものに注意してください。誰をフォローし、どんなコンテンツにかかわっているかを知ってください。「誰のどんなコンテンツを使用しているかを知ることが重要です」。
フエンテスさんはつらい経験を乗り越えて、女性は法律家にはなれないとフエンテスさんに最初に言ったあの教師に対する訴訟の法定代理人になりました。今も闘い続けています。自分自身のためだけでなく、次世代のために。
「私はどんなことにももう一度、耐え抜きます」と彼女は目に涙を浮かべて言います。「ただ、私と同じ経験をする人をなくすためなら」。
虐待の兆候に気づく方法、助けを求める方法の詳細は Online Safety 101をごらんください。
女性に対する暴力撤廃の16日間運動: #NoExcuse for online abuse(オンライン虐待に言い訳は通用しない)
オンラインとデジタルの空間は女性と少女をエンパワーする場でなければなりません。しかし毎日、何百万人もの女性と少女にとってデジタルの世界はハラスメント、虐待、支配の地雷原になっています。
11月25日から12月10日までのUNiTEキャンペーンに参加して、女性と少女に対するデジタル虐待について学び、それをなくすための行動を起こしましょう。
(翻訳者:早乙女由紀)
※ 翻訳者の方々が、ボランティアでUN Womenの記事を翻訳してくださっています。
長年のご協力に感謝申し上げます。
