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暴力と搾取のリスクにさらされる移住女性

〜ジェンダーに基づく暴力、人身取引、その他の搾取は、家事労働やケア労働に従事する女性を含め、移住のあらゆる段階で女性を危険にさらし続けている〜

2025年12月15日付

タイ北部のチェンマイで鉱物を探す移住女性労働者。写真UN Women/ポーンヴィット・ヴィジトラン

移住は新たな機会をもたらし、より良い生活を築くチャンスになります。ただ、世界の何百万人もの女性にとって、国境を越えることは暴力、労働搾取、差別、そしてルートによっては誘拐や身代金要求の恐れ、あるいは自分の意に反して働かされるなどの莫大な代償を伴うことがあります。

移動の道中や国境越えから移住先での生活、そして最終的な帰国に至るまで、暴力は移住のあらゆる段階で、あらゆる場所に存在しています。移住女性は、複数の加害者から何度も暴力を受けることがよくあります。女性が正式な書類を持たずに移動し、安全な移住に関する情報がほとんどなかったり、経済的資源が限られていたりする場合のリスクが特に深刻で、恐喝や搾取の危険が高まります。

女性の権利は、移住した場合に母国にそのまま留まるべきではありません。しかし、国境を越えて移住する女性は、当然受けるべき権利の保護や正義を奪われることがよくあります。世界の女性の3人に1人が身体的または性暴力を経験しており、移住女性はさらに高いリスクに直面しています。

以下に、移住女性が権利の侵害やジェンダーに基づく暴力のリスクの高まりに直面する一般的な状況を紹介します。

安全でない人員募集と非正規ルートでの移動

多くの女性にとって、危険は移住の旅が始まった瞬間から存在します。安全な移住に関する信頼できる情報や資金、あるいは正式な書類がない場合、移住女性は目的地に到着するかなり以前から、ジェンダーに基づく暴力、詐欺、搾取の危険にさらされます。

過剰な手数料を請求したり虚偽の約束をしたりするような、規制の外にいる仲介業者に頼る場合が多いため、こうしたリスクは人員募集時から始まります。自宅を出発するまでに、多くの女性はすでに莫大な借金を背負っているのです。そのため仲介業者に依存し、要求を拒否できず、人身取引にまで発展しかねない搾取を受けやすい状態に陥りやすいのです。

非正規ルートを利用する女性にとっては、リスクは雪だるま式に膨らみます。移住の過程で密輸業者、人身取引業者、腐敗した役人や他の移民から恐喝、嫌がらせ、暴行を受けたと女性たちは語っています。中でも、移民の密輸業者がジェンダーに基づく暴力の加害者として最も一般的です。

例えば、南アフリカとジンバブエを結ぶ回廊沿いでは、新たに到着した移住女性のほぼ全員が、国境を超える途中にレイプされたか、レイプを目撃したことがあることをヒューマン・ライツ・ウォッチが確認しました。インタビューに応じた男性の中には、移民女性が南アフリカに入国することを許める「代償」として彼女たちをレイプしたことを認める者もいました。

コロンビアとパナマの国境近くにあるダリエン・ギャップでは、性暴力の報告が2024年に7倍増加し、ラテンアメリカで最も危険な回廊を横断する何千人もの女性が危険に直面しているという恐ろしい事実が改めて確認されました。

人身取引の対象になった女性は、男性の3倍の頻度で身体的暴力を経験しています。

人身取引、強制労働、その他の形態の搾取

人身取引は最も恐ろしい人権侵害のひとつです。ジェンダーの不平等に根ざし、利益追求に突き動かされる人身取引業者は、女性の労働力と身体を売買、管理、暴力の対象になる商品として扱います。女性が強制労働のために人身取引される確率は男性の3倍です。

何百万人もの女性にとって、人身取引は、騙され、拘束され、性的虐待を受け、離れることができない仕事に売られることを意味します。多くが生きて帰ることもできません。人身取引は、女性を搾取対象の商品と見なしている場所ではびこっており、脆弱な保護体制と、安価で目に見えない労働力を求め続ける世界的な需要につけ込んで存続し続けています。農業や繊維産業から接客業や家事労働にいたるまで、特に規制が不十分な分野では、人身取引業者が処罰されることなく行動する余地を与えています。低賃金であることと移民としての在留資格を雇用主に依存していることから、虐待を報告したり雇用主の元から去ろうとしたりすれば、多くの女性が仕事や住む場所を失うリスクがあるため、容易に移住女性を支配して黙らせることができるのです。またテクノロジーによって、こうした犯罪の追跡がさらに困難になっています。人身取引業者はソーシャルメディア、メッセージングアプリ、暗号化されたプラットフォームを使って移住女性をプロファイリングして募集し、操る一方で、ディープフェイクに基づく恐喝やオンライン監視によって、国境や画面を越えて、そして帰国後も長期間に渡って女性たちを影のように追い続けます。人身取引ネットワークはまた、国境を越えて利益を移動させて資金洗浄を行うのに暗号通貨を利用しているため、その活動や資金の流れを追跡することが困難です。

世界で確認されている人身取引被害者の60%以上が女性や少女です。
多くは出身国以外で確認されています。人身取引が単なる犯罪ではなく、ジェンダーを理由に女性を標的とする、権力、暴力、支配の残酷なシステムであることを痛感させられます。

移住家事労働者に対する暴力と搾取のリスク増加

世界全体の海外移住者3億400万人の半数近くが女性で、そのほとんどが家事労働やケア労働に従事しています。これは、依然としてほとんど規制されていない業種です。また、世界の家事労働者7,560万人のうち76%が女性です

世界各地の家庭で何百万人もの移住女性が掃除、料理、ケア労働を担っています。個人の家で働くということは、往々にして可視性や保護に限りがあることを意味し、多くの女性が雇用主や家庭内のその他の人による搾取や虐待にさらされています。このような孤立のため、家事労働は、暴力が見えないまま野放しになりかねない空間になります。多くの移住労働者は国の労働法の適用からは除外され、休日や公正な賃金を与えられず、収入、住居、在留資格を雇用主に大きく依存しています。

レバノンの家事労働者ヘリナ・デスタさん。写真UN Women/ジョー・サード

クウェートのカファラのような保証人制度のもとでは、女性のビザは雇用主に紐づけられ、虐待的な状況から逃れる自由が制限され、司法へのアクセスも遮断されます。

移住家事労働者の権利強化を求める国際社会からの度重なる要請にもかかわらず、女性たちは今も長時間労働、賃金未払い、嫌がらせ、そして極端な場合には人身取引や強制労働に直面しています。

調査によれば、家事奴隷の被害者の87%が女性と少女であり、家事労働における人身取引被害者の15%が性的虐待を経験しています。タイでは、2023年の調査で、ミャンマーからの移住家事労働者の10人に6人が暴力を受けたことがあることが明らかになりました。

家事労働者の81%は非正規雇用で、基本的権利も保護もありません。

到着後の差別と権利の否定

目的地に到着したらそれで安全というわけではありません。多くの移住女性にとって、それは新たな闘いの始まりを意味します。ジェンダー、人種、国籍、移住資格に基づく差別が、与えられる仕事から、享受できるかどうかわからない保護まで、生活のあらゆる側面を形作るのです。

2019年、コロンビアでUN Womenは支援プログラム、国境移動カード、特別労働許可証についてコロンビア政府および他の国連機関と協力。それによって数千人の移民がコロンビアに合法的に滞在し、働くことができた。写真UN Women/ティコ・アングロ

強制送還を恐れて多くの人が沈黙しています。虐待を報告すると、職を失ったり帰国させられたりする可能性があるからです。そのようなリスクを負うことができる人はほとんどいません。雇用主は、女性を脅したり支配したりするために非正規雇用の立場を悪用することもあります。一方で、女性は言葉の壁やスティグマのためになかなか支援を受けることができません。

法的地位がない女性は、制度自体によって危険や暴力にさらされる可能性が高まりかねません。収容施設や強制送還のための施設は安全ではなく、劣悪な環境であることが多いのです。多くの女性が性的虐待、性と生殖に関する保健医療をほとんど受けることができないこと、衛生設備やシャワー施設でのプライバシーの欠如などを報告しています。

多くの国では、性差別、外国人嫌悪、人種差別がこうしたリスクに拍車をかけており、それによって移住女性が正義や支援を求める際に、どのように見られ、その話がどのように受け止められ、扱われるかが決まります。

収容中の移住女性は、男性の2倍以上の割合で性暴力に直面し、苦情申し立て制度を利用することがほとんどできない状態にあります。

再びスティグマと排除へ

多くの移住女性は、帰国した際に歓迎されるどころか、再びスティグマと排除を経験することになります。ジェンダーに基づく暴力や人身取引を経験した女性は、海外で直面したことについて、その苦しみが、安全でない虐待的な制度の結果ではなく、自分自身の選択の結果であったかのように責められます。あるいは、海外で家事労働やケア労働に従事することは恥ずべきことで、自国では地位の低い仕事と認識され、隣人や親戚が帰国した女性を敬遠するため社会復帰の障壁になる場合もあります。

エチオピアとバングラデシュの事例は、帰国した家事労働者は、ジェンダーの規範や、個別の状況に応じた社会復帰支援がないために、深刻な社会的排除に直面する可能性があるということを示しています。エチオピアでは、海外で虐待を受けた女性は「失敗した移住者」というレッテルを貼られ、バングラデシュでは、人身取引や家事労働で搾取されて帰国した人は、家族を「辱めている」と非難されたという報告があります。こうした評価によって孤立が深まり、回復と社会復帰が一層むずかしくなります。

一方で、より適切な対応をしている国もあります。フィリピンでは、地方自治体や女性団体が帰国した家事労働者にカウンセリングや技能訓練、支援を行っており、女性たちが自信を取り戻し、生活を再建できるよう支援しています。しかし、このような取り組みはまだ稀です。ほとんどの国では、帰国者は再出発するために必要な経済的・心理的支援を受けることなく、一人でスティグマに直面しています。

適切な支援を受けた帰国者は、帰国後の困難にうまく対処できる可能性が上がります。このことは、暴力を経験した移住女性に特に言えることです。

移住女性を支援するためにUN Womenが行っていること

すべての女性には安全に移住し、尊厳をもって扱われる権利があります。その権利は、どこにいても保障されなければなりません。

UN Womenは、ドイツ政府の資金援助を受けて「女性の安全な移住実現」プログラムを実施し、権利の保障の実現に取り組んでいます。エチオピアと南アフリカでは、同プログラムを通して両国の移住女性と帰国女性を支援し、研修、カウンセリング、小規模ビジネス支援を提供する一方、すべての移住女性にとって移住政策が安全で公正なものになるよう政府と協力しています。

女性にとってより安全な移住を支援するために私たちができること

  1. 移住女性に関する誤解について学び、それを打ち破り、信頼できる情報を共有する。安全な移住に関する信頼できる説明を共有し、移住女性が安全に移住できるように信頼できる情報を提供しましょう。移住女性が直面する誤解を否定するUN Womenの解説記事もお読みください。
  2. 人種差別に異議を唱える。移住女性が直面する人種差別、性差別、その他の差別について率直に話し、暴力や搾取を見かけたら反対の声を上げましょう。
  1. 公正で倫理的な人員募集を推進する。欺瞞的な雇用慣行に異議を唱え、特に移住女性が家事労働やケア労働に雇用される場合、変革は家庭からも始まることを覚えておきましょう。
  1. より良い労働条件を求めて立ち上がる。家事労働やケア労働に従事する移住労働者が、移民の地位に関係なく公正な賃金、医療、法的保護を受けられるように働きかけましょう。
  1. 法的リテラシーへのアクセスを改善する。移住前、移住中、移住後に移住女性の権利、利用可能なサービス、支援を求める先に関する明確な情報を提供する活動を支援しましょう。
  2. 女性が支援を受けられるようにする。安全な場所、カウンセリング、法的支援、その他の現実的な支援を提供する組織を支援しましょう。このような地域に根差したサービスは、特にジェンダーに基づく暴力を経験した移住女性が尊厳をもって生活を再建する上で重要な役割を果たします。
  1. 移住女性の権利を守り尊重し、人権を確約する政策を実施するよう、自分が住む地方自治体および政府に要請する。安全な正規移住ルート、倫理的な募集基準、労働保護、現場の職員に対する研修はすべて移住をより安全なものにします。これらは、政府が実施できる措置のほんの一部にすぎません。また、安全で秩序ある正規移住のためのグローバル・コンパクトや、ILOの家事労働者に関する条約(第189号)暴力とハラスメントに関する条約(第190号)などの国際協定に署名している政府もあります。

移住女性に関する誤解とは?

「彼女は言葉も学んでこなかった」、「あなたの夫を誘惑するかもしれないから気をつけて」、「福祉の不正受給者だ」。

このような固定観念に異議を唱えましょう。移住女性に関する誤解を打ち破りましょう。

(原文)
https://www.unwomen.org/en/articles/explainer/migrant-women-at-risk-of-violence-and-exploitation

(翻訳者:結城直美)

※ 翻訳者の方々が、ボランティアでUN Womenの記事を翻訳してくださっています。
 長年のご協力に感謝申し上げます。