【演説】私たちは、権力を分かち合う勇気、女性のリーダーシップに投資する決意、そして公約を行動に移す政治的意志を持っているでしょうか
国連事務次長であり、UN Womenのトップを務めるシマ・バフース氏が去る10月27日に国連安全保障理事会の公開討論会の場で行った演説をお届けします。
本演説は、国際政治の最高峰の場で、UN Womenがどのように女性たちの切実な声を代弁し、世界平和の実現に向けて粘り強く闘っているかを示すものです。
国連の第一線で発せられた力強いメッセージを、ぜひご一読ください。
― 国連ウィメン日本協会 ―
2026年10月27日 | 国連安全保障理事会公開討論会
UN Women事務局長シマ・バフース氏による演説
[以下、発言通り]
本公開討論会を招集してくださったギリシャのヨルゴス・ゲラペトリティス外務大臣、そして主催してくださる議長国ギリシャに感謝申し上げます。本日、『女性・平和・安全保障(WPS)に関する事務総長年次報告書』をご紹介できることを光栄に存じます。しかし、紹介の前に、過去10年間にわたってジェンダー平等と女性の権利の推進においてリーダーシップを発揮し、国連が女性と少女たちに確固として寄り添うよう尽力してこられた事務総長に深い感謝の意を表したいと思います。事務総長はまさに私たちの「フェミニスト・イン・チーフ(筆頭フェミニスト)」であり、私たちに対して、もっと大胆な志を持つよう、もっと強い決意をもって取り組むよう、そしてもっと現状に異議を唱える勇気を持つよう促してこられました。

事務総長報告書は、平和のために女性がリーダーシップを発揮することがまさに最も必要とされているこの時に、その活動が制約を受けていることをはっきりと示しています。軍事費が増加し、援助が減少する中、平和への投資の必要性はかつてないほど切実になっています。
昨年、私は、世界各地の和平交渉の場における交渉担当者に占める女性の割合がわずか7%にとどまっていることに懸念を表明しました。2025年には、調査対象となった57の和平交渉プロセス全体で、その割合は5%にまで低下しました。しかし、国連が主導または共同主導した3つの交渉プロセスでは、女性の参加率は22%に達しました。依然として最低目標である3分の1を下回ってはいるものの、この数字は国連が変化をもたらし得ることを明らかにしています。
国連安全保障理事会決議1325号の採択から26年が経過したにもかかわらず、昨年行われた和平交渉の80%近くにおいて交渉の席に女性が一人もいなかったという事実は、到底容認できるものではありません。こうした排除は偶然に起きているのではありません。それは、根強く残る制度的な障壁、不平等な力関係、そして平和構築において女性が本来果たすべき役割を今なお女性に認めようとしない根深いジェンダー規範があることを反映しているのです。
女性の参加は、単なる象徴的な代表性を確保するという問題にとどまりません。女性を排除することは、和平合意が何を対象とし、誰を保護するのかという点で現実的な影響を及ぼします。その影響は、女性や少女たち自身にとどまらず、はるかに広範囲に及びます。紛争が増加する中、包括的な和平合意はますます稀有なものとなっています。コンゴ民主共和国からガザ、イラン、中東全域、さらにはミャンマー、サヘル地域、スーダン、南スーダン、ソマリア、ウクライナ、そしてその他の地域に至るまで、女性たちは、自らの人生を左右する紛争を終結させる取り組みから依然としてほぼ排除されています。
たとえ停戦が成立したとしても、その数はあまりにも少なく、あまりにも脆弱であり、そして暴力や苦しみに終止符を打つことができないケースや、女性や少女の安全を確保できないケースがあまりにも多すぎます。2025年に締結された13の停戦合意のうち、女性や少女に実質的に言及したものは一つもありませんでした。国連が確認した紛争関連の性暴力事件がわずか1年で2倍に増加したにもかかわらず、性暴力を禁止する条項を盛り込んだ停戦合意は一つとしてありませんでした。こうした欠落は、甚大な人的犠牲をもたらしています。
現在、過去最多となる7億5,600万人の女性と少女が武力紛争の発生地から50キロメートル圏内に暮らしています。戦争の様相が変化する中、AIを活用した軍事技術は民間人の保護や説明責任の所在の明確化に新たなリスクをもたらしており、女性や少女がすでに直面している危険を一層深刻化させています。いくつかの地域では、殺害された民間人に占める女性と少女たちの割合が増加しています。その中には、病院、学校、市場、自宅など、彼女たちの日常生活の中心となる場所への攻撃による犠牲が含まれています。
こうした被害は戦場をはるかに超えたところにまで及んでいます。安定した状況下で暮らす女性たちと比較して、紛争の影響下にある地域では、本来防ぐことが可能な妊産婦関連死の確率は5倍に、そして少女が学校に通えない確率は2.5倍に達しています。
極度の貧困状態にある女性や少女のおよそ40パーセントが、紛争の影響を受けている地域で暮らしています。紛争によって公共のサービスが麻痺し、家族が住まいを追われると、女性や少女たちが最も重い負担を背負うことになります。彼女たちは、子どもや負傷者、高齢者の世話を担う一方で、ジェンダーに基づく暴力、性的搾取、人身取引の危険にさらされる度合いが高まります。同時に、愛する人を失った悲しみ、住む家を失った絶望、そして人生を引き裂かれたことによるトラウマを抱えているのです。アフガニスタンでは、この状況はさらに深刻です。女性と少女たちは公の場から組織的に排除され、自国の未来について発言する機会を奪われ続けています。
私たちの資源の投資先の選択には、私たちが何を重視しているかが如実に表れます。危機に直面している地域で活動する女性団体を対象にUN Womenが実施した調査で、61%の団体が1年前よりも財政状況が悪化していることが明らかになりました。45%の団体は、残っている資金が6カ月分にも満たない状況にあります。これらの団体は、まさに、権利を守り、地域社会を支え、平和を築くために私たちが頼りにしている団体です。
これほど多くの女性主導団体が存続の危機に瀕しているのは、単に戦争の結果というわけではありません。それは、私たちが「安全保障」をどのように定義し、そのためにはどこに投資するかという選択の結果なのです。
防衛は脅威を阻止することはできます。しかし、防衛だけで平和が保証されることは決してありません。安全保障は、一機目のドローンが飛び立つよりも前に、あるいは最初の攻撃が加えられるずっと前から築き上げられるべきものです。紛争の予防は、互いを信頼し、正義を信じる地域社会から始まります。それは、少女たちが安全に学校へ通えること、地域の揉め事があっても、そのあと家族が自宅に帰ってくること、そして紛争が戦争へと発展する前に解決されることなのです。
紛争によって引き裂かれた地域社会では、女性たちがこうした活動に毎日取り組み、その先頭に立ち続けています。彼女たちは、民間人が安全に通行できるよう、また、食料、水、医薬品を届けるための人道支援へのアクセスを確保できるよう交渉を行っています。また、地域での紛争が激化する前に仲介役を務め、人権侵害の事実を記録し、責任の追及に努めています。さらに、性暴力の被害者を支援し、尊厳と正義を取り戻す手助けをしています。また、警察官や平和維持要員として、民間人を保護し、緊張を和らげ、地域社会と治安を担う人たちとの間の信頼を再構築しています。
世界各地の多くの紛争において、女性たちは社会不安の最初の兆候を察知し、紛争当事者が互いに話し合いの場に着くことを拒む状況においてさえ対話の場を維持し、子どもや若者の過激化や武装集団への勧誘を防ぐ一助となっています。女性たちは、国際社会が関与しているか否か、またその活動が評価され資金提供を受けているか否かに関わらず、こうした取り組みを続けているのです。私たちがそうした女性たちを支援しないことは、単に不公正であるだけでなく、自滅的かつ近視眼的であり、多大な代償を伴うことになります。
昨年だけでも、「女性平和・人道基金(Women’s Peace and Humanitarian Fund)」は1万5,000人の女性平和構築者を支援しました。彼女たちは、コロンビアからブルンジに至るまで、資源不足や避難民問題、土地・相続・財産をめぐるトラブルの解決を助け、100万件近くの地域社会の紛争解決に貢献してきました。
こうした取り組みは、各国の公約に反映されるようになってきています。現在、「女性・平和・安全保障」に関する国家行動計画を採択した国は118カ国に上ります。これらの計画は、女性運動から生まれた力強い理念を国家政策へと具体化したものです。その理念は、本安全保障理事会が、その英知をもって、国連安全保障理事会決議1325号およびその後の関連決議を通じて、世界的な規範へと発展させたものです。しかし、依然として十分な資金が確保できていないために、安全保障、紛争予防、復興、あるいは外交政策に関する意思決定の場で、こうした計画が後回しにされているのが現状です。
最後に、事務総長が毎年、そして本日もこの安全保障理事会で提起している3つの主要な優先課題について、私も事務総長とともに行動を呼びかけます。
- 第一に、加盟国が支援するあらゆる和平プロセスにおいて、女性の参加率について最低でも3分の1という目標を達成すること。事務総長の「共通誓約(Common Pledge)」に署名したすべての国に対し、この最低基準を満たすとともに、男女同数の参加を目指すよう強く求めます。
- 第二に、紛争影響国に対する政府開発援助(ODA)の少なくとも15パーセントを、ジェンダー平等の推進に特化して割り当てること。そのうち、少なくとも1パーセントは女性団体に割り当てること。すでにこれを実践しているすべてのドナーに敬意を表するとともに、まだ実施していないすべてのドナーに対し、その例に倣うよう呼びかけます。
- 第三に、女性と少女に対する犯罪の不処罰を終わらせ、女性と少女たちに対する殺害、レイプ、性暴力およびジェンダーに基づく暴力、ジェンダーを理由とする迫害の責任者を処罰し、その責任を追及すること。女性の平和構築者、人権擁護者、そして人道支援従事者を、攻撃や報復から保護すること。国際法を遵守し、本理事会の「女性・平和・安全保障」に関する枠組みを適用してください。
私たちは、何をなすべきかはわかっています。今問われているのは、権力を分かち合う勇気があるのか、女性のリーダーシップに投資する決意があるのか、そして公約を行動に移す政治的意志があるのかということです。
ご清聴ありがとうございました。
