UN Womenとは

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What is?

UN Women(ユーエヌ ウィメン)とは?

認定NPO法人 国連ウィメン日本協会 ロゴ

2010年7月の国連総会決議により設立された国連機関です。正式名称は、United Nations Entity for Gender Equality and the Empowerment of Women(ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国際連合機関)。

世界の女性の厳しい現実を前に、社会に求められていることは何でしょうか?
それがジェンダー平等と女性のエンパワーメントです。女性の権利を促進し、声を拡大して、もっと力を発揮できるようにすること。
これは女性優遇や逆差別ではありません。現実に長く存在してきた男性との格差を認識し、それを解消すること。その実現に向けた取り組みは、男性の権利を縮小するものではなく、むしろ男性も生きやすい社会を作ることなのです。

設立の背景

もともと国連には1976年設立の国連女性開発基金(UNIFEM ユニフェム)をはじめ、4つの女性関連機関がありました。でも長年、世界的に活動するには、資金調達や国連の全体的な統括が十分でないなど、深刻な課題に直面していました。そこで、より大きなインパクトをもたらすために資源と任務をひとつにまとめようと、国連改革の一環として4機関が統合して誕生したのが、UN Womenです。

本部はニューヨーク。最も若い国連機関のひとつです。

支援対象・支援地域は?

UN Womenは支援が必要な国々に拠点を構えて、女性と少女のために取り組みを進めています。現場で草の根の支援をする一方で、政府レベルでも条約の批准、法律や制度改正などの政策提言を行っています。

地域・各国オフィス
アフリカ
27
中南米
11
中東
6
アジア太平洋
13
欧州
7
連絡調整オフィス
7
合計
71
職員数
578名
内、日本人職員12名
(専門職以上、2021年現在)
アフリカ
アフリカには低所得国と中所得国がありますが、貧困率は依然として高いままです。女性の大半は不安定で低賃金の仕事に就いていて、昇進の機会はほとんどありません。民主的な選挙は増えており、過去最多の女性が議席を獲得しています。ただし選挙に関連した暴力が懸念されている状況です。
ほぼすべての国が女性差別撤廃条約を批准しています。また、アフリカ連合が2010年から2020年を「アフリカ女性の10年」と宣言しました。
南アメリカ・カリブ海諸国
ラテンアメリカのほぼすべての国が中所得国です。でも女性、先住民、アフリカ系住民、若者の間では、大きな不平等と社会的排除が続いています。この地域には、世界で最も不平等な15の国のうち10カ国があります。治安も悪化しており、女性に対する暴力や殺人が蔓延しています。
一方ですべての国が女性差別撤廃条約を批准しています。多くの国々が、法律の改正、女性問題省庁の設立、ジェンダーに基づく暴力の罰則化、政治におけるクオータ制の導入など、ジェンダー平等を推進するために努力してきました。
中東・北アフリカ
独立以来、中東・北アフリカ諸国はさまざまな困難に苦しんできました。それが政治、社会、経済の発展を遅らせてきました。教育や保健の分野では進歩が見られます。アラブの女性にとってジェンダー平等の追求とは、民主主義を機能させること、市民権を意味のあるものにすること、公平な開発、法の下の平等、自由の獲得、女性に対する人権侵害を是正することにほかなりません。
アジア・太平洋地域
アジア太平洋地域は、経済大国がある一方で、世界の最も貧しい人々の3分の2が暮らす地域でもあります。政治的、文化的には多様ですが、共通の課題に直面しています。ジェンダー問題を含む社会経済的な格差です。
ジェンダー平等を公式に約束している国が多いけれど、実行が伴っていません。資源が限られている、法律が一貫していない、自然災害が混乱をもたらすなど要因はさまざまです。女性の存在はアジアの経済成長に欠かせません。でも東アジアを除けば、女性の失業率は男性よりも高く、世界平均の約2倍です。大半の国では、出稼ぎが生計を立てる主な手段となっていて、女性の出稼ぎは男性と同数かそれ以上です。多くの女性が介護や家事労働など、保護もない低賃金の仕事に就くしかない状況です。
ヨーロッパ・中央アジア
中央・東ヨーロッパ諸国はEU加盟を目指しています。なのでその加盟基準に合わせた女性の権利とジェンダー平等が、UN Womenの活動の枠組みとなっています。一方の中央アジア諸国は、この地域の最貧国です。どちらも賃金格差や意思決定機関への参加率の低さなど、女性の不平等が根強く残っています。親密なパートナーからの暴力などジェンダーに基づく暴力の割合も高いままです。

Themes

取り組みテーマと解決策

人道支援
世界が紛争、災害、パンデミックなど頻発する人道危機に直面する中、もともと弱い立場に置かれていた女性と少女が一番の被害者となります。女性に特有のニーズを理解し、その対応を推進することが必要です。他方、危機にある女性は被害者であると同時に支援活動に欠かせないパートナーでもあります。現場のニーズを最もよく知っていて草の根レベルでの対応を可能にしてくれます。ですから、女性が意思決定に関与できるよう、現地の女性組織のリーダーシップ能力を強化することが極めて重要です。
UN Womenはその専門性を生かして40を超える国々で人道支援を実施し、国連の人道的調整メカニズムにおいてジェンターの視点を確保、推進しています。
経済的自立
女性は無報酬の労働に従事し収入を得る機会が少なく、経済・社会政策への関与も制限されています。女性の経済的自立のために世界が投資すれば、今ある不平等、貧困など多くの問題を解決し、経済と持続可能な開発に道筋をつけることができます。
女性差別撤廃条約、北京行動綱領など女性の経済的自立を提唱する国際公約の形成に、世界の女性たちが尽力してきました。UN Womenはこれらに沿って、最も困窮している女性たちに手を差し伸べています。多くの場合、現地の草の根女性団体と連携して農村部の女性、スキルを得る機会のない女性、移民など社会の脇に追いやられている女性たちを対象に実施しています。
女性に対する暴力撤廃
世界の女性の3人に1人が身体的または性的暴力を経験しています。2023年には10分間に1人の割合で親密なパートナーや家族に殺害されています。でも暴力を受けた後に何らかの助けを求めた女性はわずか40%です。そのためUN Womenは、保護と回復に不可欠のサービスを提供し、被害者がアクセスできるようにサポートしています。予防は暴力を止めるための最も効果の高い方法です。早期教育、尊重すべき人間関係、男性や少年との協力に焦点を当てています。またデータ収集と分析も強化しています。これは暴力撤廃に向けた取り組みにおいて何が有効かを探ること、啓発活動を推進することに役立っています。
女性・平和・安全保障(WPS)
終わらない戦争、新たな武力紛争の勃発…。 6億人以上の女性と少女が世界170の戦争・紛争下で生きています。2000年に国連安保理が、「女性・平和・安全保障(Women, Peace and Security)に関する決議1325号」を採択しました。戦争によって女性と少女が男性とは異なる不釣り合いな被害を受けていることを認識したものです。また、女性を紛争下の性暴力からの保護の対象であると同時に平和・安全保障の主体者としても認識し、平和を求める全ての段階で女性が参画することを要請したものです。
UN Womenは50か国以上の現場に拠点を置き、この決議に沿った支援活動を続けています。加えて重要なのは調査、研究、分析を行い、加盟各国がこの決議を実践に移す手助けをしていることです。和平プロセスのすべての段階に女性が参加することが戦後の平和を持続的なものにし、復興に寄与することを証明しています。
リーダーシップと政治参加
女性が政治的な意思決定に参加できないのは男性よりも能力が低いからなのでしょうか。もしそうだとしたらその能力格差は、女性がリーダーになるために必要な教育、人脈、資源を得る機会が男性よりも低いからです。差別的な法律や制度、慣行、ジェンダーの固定観念、教育や収入格差といった構造的な障壁が女性の政治参加を制限しています。
UN Womenは政治家を目指す女性たちに研修を提供し、有権者にジェンダー平等について市民教育を実施しています。政党や政府などにも女性のエンパワーメントに役割を果たすよう呼びかけ、女性の参加を確保するための立法、憲法改正を提唱しています。
若者とジェンダー平等

世界には10~24歳の若い世代が18億人いますが、このうち6億人が10代の少女です。世界各地で若い女性は教育を受けられず、意思決定の場に参加することが制限されています。ジェンダーに基づく差別、疎外、暴力に直面し続けている現状では、リーダーシップを発揮する機会がありませんが、UN Womenは若い世代に力を与えることがジェンダー平等の達成に不可欠だと考えています。若者運動に「ジェンダーを取り入れ」、女性運動に「若者を取り入れる」のです。若い女性のリーダーシップ、若い女性の経済的エンパワーメントとスキル開発、若い女性に対する暴力撤廃が3本柱です。またジェンダー平等推進のパートナーとして若い男性との連携も進めます。

Program

支援プログラム

人道支援

地球上で絶え間なく起きている紛争、自然災害…
特有の影響を受ける女性と少女を支援しています

世界で戦争や紛争が続き、その間にも気候変動などにより自然災害が頻発し、女性と少女が大きな影響を受けています。こういった緊急時には、生計に及ぼす影響ばかりでなく、人身取引、性的虐待や暴力など、より深刻な状況を生み出します。UN Womenは危機的な状況にある現場にとどまり、地域に根ざして活動している女性団体をサポート。目の前の命と尊厳を守ることを第一に、人道支援が途切れないように活動しています。

(Photo: UN Women/Aurel Obreja)

経済的自立支援

女性が運営するコミュニティ・キッチン誕生!
世界各地の女性起業を支援しています

例えばネパールでは新型コロナ感染症によるロックダウンで女性の41%が職を失いました。UN Womenは失業した女性の仕事を創り出し、同時に女性が確実に食料を入手できるように、女性が運営するコミュニティ・キッチンを全国に立ち上げました。これが女性たちに収入をもたらし、経済的自立や起業につながる体験を積む機会になっています。また、女性のケア労働を軽減し、コミュニティに信頼の輪と結束の絆を築いています。

(Photo: Maiti Nepal)

暴力撤廃

暴力の被害者に対する警察官の対応改善へ

身体的または性的暴力の被害を受け警察に助けを求める女性は、世界で10人に1人しかいません。女性は警察官から差別的に責められることを恐れ訴えないことが多いからです。
UN Womenは、世界各地で警察官を対象にジェンダーと暴力に関する研修を実施し、難民キャンプに女性警察官を配置しています。また、国連薬物犯罪事務所と国際女性警察官協会と共同で『暴力を受けている女性と少女のためのジェンダー視点に立った警察サービスに関するハンドブック』を作成、22か国で警察改革の推進に努めています。

(Photo: UN Women/Allison Joyce)

「女性に対する暴力撤廃国連信託基金」のご紹介

女性と少女に対するあらゆる形の暴力を防止し、根絶するために

1996年に国連総会によって設立された多国間助成メカニズム、それが「女性に対する暴力撤廃国連信託基金」です。女性への暴力撤廃に特化して取り組む唯一の基金であり、UN Womenが国連システムを代表して運営しています。この基金には、国連機関、NGO、専門家がプログラム諮問委員会を通じて意思決定に参加しています。
基金の財源は政府、国連機関、そして民間セクターであり、市民社会とフェミニズム運動のつながりを世界規模で構築する機能を持っています。創設以来140の国と地域で、草の根の女性団体など670の活動に、2億2,500万米ドルを助成してきました。
国連ウィメン日本協会では、民間からのサポートとして企業・団体、個人の皆さまからのご寄付を募っています。

女性に対する暴力撤廃国連信託基金2024年年次報告↓
詳しくはこちら(英文)

Message

親善大使からのメッセージ

エマ・ワトソン
エマ・ワトソン

男性も、女性のために一緒に行動を!

映画『ハリーポッター』で一躍大人気となったエマ・ワトソンさんは、2014年に親善大使に就任。以来、UN Women『He For She』キャンペーンの推進役として活躍中。女性の課題解決には男性の理解と参加が不可欠であると、国連や世界経済フォーラムなどで力強いスピーチをしています。

アン・ハサウェイ
アン・ハサウェイ

映画『リトルプリンセス』でキュートな女子学生を演じたアン・ハサウェイさんは、2016年に親善大使に就任。自身も母親となった今、女性が仕事を続けるには夫の家事や育児負担が欠かせないとし、家庭におけるケア・ワークのジェンダー平等の負担の課題に取り組んでいます。

国連総会で行った、男性の意識改革を訴えるスピーチは、国連ウィメン日本協会のニューズレター13号で紹介しています。

ニコール・キッドマン
ニコール・キッドマン

女性に対する暴力の根絶を!

2006年に親善大使に就任。当初から、女性に対する暴力の根絶キャンペーンに取り組んでいます。UN Womenが世界中で、女性に対する暴力署名活動を行った際は、国連事務総長にその署名簿を手渡ししました。

近年では、出身のオーストラリアで暴力根絶キャンペーンを支持し協力しています。

マルタ・ビエイラ・シルバ
マルタ・ビエイラ・シルバ

スポーツを通して女性のエンパワーメントを!

ブラジルのサッカー選手、マルタ・ビエイラ・シルバさんは、現在はアメリカ合衆国のサッカーリーグに所属。女性・少女たちはスポーツを通して自信を持ち生活力やリーダーシップを向上し、経済的エンパワーメントも身に着けることができます。しかし、なお、プロのアスリートの社会では、差別的な報酬ギャップ、ガラスの天井に直面しているのも事実です。

ヌクカ前事務局長は、スポーツは世界共通の言語であるとし、マルタの活躍が女性や少女のエンパワーメントとジェンダー平等獲得への動機づけをすると、期待を寄せています。

ダナイ・グリラ
ダナイ・グリラ

女性や少女の窮地に理解を!

ジェンダーに起因した暴力を根絶する16日間キャンペーン(11月25日~12月10日)にちなみ、女優で劇作家であるダナイ・グリアさんが、新しい親善大使に就任。両親はジンバブエ人。「ブラック・パンサー」や「アベンジャーズ:インフィニティウオー」に出演。

劇作家としては、様々な賞を獲得し、最新作の「ファミリア」はイエールシアターで初演されました。また、LOGpledg(Love Our Girls)を立ち上げ、女性や少女たちの窮地を訴える活動をしています。また、アフリカの劇作家たちに創作の機会を与えるAlmasi Artsの共同創設者でもあります。

ジャハ・デュクレ
ジャハ・デュクレ

2018年、ガンビアの著名な活動家であり、女性器切除のサバイバーであるジャハ・デュクレさんが新たに就任しました。

UN Womenを通じ、主にアフリカにおける女性器切除と児童婚の撤廃への取り組みに力を注いでいます。この年の後半にはその功績が認められ、ノーベル平和賞の候補に挙がりました。