Environment
世界の女性を取り巻く環境
女性だから、というだけで差別や格差、暴力や性的虐待に女性や少女は苦しめられています。
日本のジェンダーギャップ指数はG7(主要先進7か国)中、ずっと最下位です。特に政治、経済分野が低いままです。
でも世界には命や尊厳にかかわるもっと深刻な状況に置かれた女性たちが大勢います。自分の人生を生まれた国の制度や文化、他人に決められ、声を上げられない、声を上げることを教わる機会さえ奪われています。

- 貧困
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世界の女性の10人に1人が、国際貧困ラインの1日2.15ドル以下で暮らす「極度の貧困」です。
その数は男性より2400万人以上多いのです。女性と少女が極度の貧困から抜け出すのに、このままではあと137年かかります。

- 教育格差
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世界では1億2千万人もの少女が学校に通えていません。
高校に進学しない少女の割合はサハラ以南アフリカ地域では約半数、オセアニア地域(除:豪、NZ)では4人に1人以上です。

- 生理による差別
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毎月、世界中で20億人以上が生理を迎えます。当たり前で健康的なことなのに、生理が女性の暮らし、権利、自由を妨げる要因になっています。
何百万人もの女性と少女が生理用品を買えず、安全な水やトイレを使うことができていません。また偏見と差別によって世界には今も、生理中の女性は不潔で触れてはいけないものとされている地域があります。
生理中の女性や少女は隔離しなくてはいけない、という根拠のない社会通念によって移動が制限されたり、処理できないため学校や仕事に行けない状況に置かれたりしています。

- FGM(女性器切除)
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世界では2億3千万人もの女性や少女が大人への通過儀礼として女性器を切り取る慣習の被害にあっています。その内サハラ以南アフリカでは21.7%、アフリカ北部では73.6%です。
施術は不衛生で麻酔なしで行われるため、出血や感染症、さらには死亡のリスクが伴います。施術を受けた女性は、長期的に体や心に傷を負い苦しむことが多いです。
FGMは女性の権利を侵害する行為であり、健康や幸福に対する重大な脅威であり、根絶しなければなりません。でも現実は根絶どころか8年前と比べて15%、人数でいうと3千万人以上も増えているのです。

- 児童婚
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世界では5人に1人が18歳になる前に結婚しています。
貧困国や紛争国の少女たちは特にその影響が大きく、3人に1人が教育の機会を与えられないまま、自分の気持ちと無関係に結婚していきます。

- 妊娠・出産による死亡
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世界で1日800人が、妊娠・出産が原因で死亡しています。その内500人が紛争下の国々です。
妊婦や授乳中の女性が食べ物や水のない中で避難を繰り返し、病院へも行けません。また途上国では、女性の健康や安全よりも有害なジェンダー規範が優先されています。

- 重労働の家事
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女性は家事、育児、介護など無報酬の仕事に男性の2.5倍もの時間を費やしています。北アフリカや西アジアでは4.9倍です。
例えば水汲み。遠くに水を汲みにいかなければいけない地域では女性や少女にその負担が集中しています。時間数でいうと男性の3倍以上です。
男性たちが余暇を楽しんだり少年たちが学校へ行ったりしている時に、その機会を持てないまま、道中、怪我や暴力の危険にもさらされているのです。
例えば炊事。特に貧しい地域、紛争下の地域ではエネルギーが手に入らず、薪や石炭、牛糞、ごみなど集めてきて、それを燃やして調理しています。これも女性の仕事です。 有害な煙にさらされて寿命を縮めています。これは女性の死因の第3位です。

- 女性に対する暴力
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世界の女性の3人に1人、7億3600万人が一生のうちに暴力の被害にあっています。
2023年には51,100人、10分間に1人の割合で、女性や少女が親密なパートナーや家族によって殺害されました。これが世界の現実です。
このジェンダーに基づく暴力は、男性支配、女性差別、有害な社会規範が根強くあることが要因となっています。

- 戦争の犠牲
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戦争を始めるのは男性ですが、女性が不均衡に犠牲を強いられます。6億人以上の女性と少女が、世界の170の戦争・紛争下で生きています。
戦争は直接女性の命を奪うだけではありません。女性は食料、水、衛生、エネルギーなど基本的なニーズを男性の後回しにされます。
家を追われ避難を繰り返す中で、医療へのアクセスも身を守るすべも失われていきます。戦術として性暴力が利用されることもあります。
例えば2023年、武力紛争で死亡した女性の割合は前年に比べて2倍に増えました。紛争関連の性暴力は国連が確認できたものだけでも50%も増えています。
世界の女性たちが置かれた厳しい現実をストーリーでご紹介します。
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「私が生きている限り、毎朝、目を覚ましたら、FGM(女性性器切除)は間違っている、児童婚はレイプと変わらない、と世界に叫び続けます」
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「食料も水もテントもない」ー戦争の中、ガザの女性たちは生き残りをかけて戦っています!
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生理の貧困「生理は触れてはいけない話題なので、ほとんどの少女と女性はそれについて語りませんでした」

- 「私が生きている限り、毎朝、目を覚ましたら、FGM(女性性器切除)は間違っている、児童婚はレイプと変わらない、と世界に叫び続けます」
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ジャハ・ドゥクレさんはUN Womenアフリカ親善大使です。女性性器切除(FGM)と児童婚を乗り越えてきた経験から、2022年11月リベリア政府が実施する暴力撤廃の取り組みで講演しました。
「私は生後1週間でFGMを施され、人生で2回児童婚を経験しました。初めて結婚したとき、私はまだ15歳でした。
私の国ガンビアだけでも、女性の77%以上がすでにFGMを受けています。世界的には、2億人以上の少女と女性が受けていると推定されています。また、毎年世界中で6億人以上の女の子が意に反して結婚することを余儀なくされています。これは児童婚の夫に何度も何度も妻をレイプする権利を与えていることと同じです。
何億人もの少女が私と同じ経験をしています。でもみんなは人々の前に立って何が起こったかを話し、聞いてもらえる機会や場を得られていません。私自身、自分の話を何度も人に話すのは簡単なことではありません。でも変化を起こすのはまさにFGMを経験した人でなくてはなりません。その人たちこそ、立ち上がって声を大にして言えるのです。『私たちはFGMに反対します。なぜならそれを経験してどのようにつらい思いをしたかわかるからです』
私が生きている限り、私は毎朝目を覚ましたら、FGMは間違っている、児童婚はレイプと変わらないことを世界に叫び続けます。多くの場合、FGMは伝統的な慣行だから、と言われてしまいます。でも伝統のすべてが私たちにとって良いわけではありません。私たちがそれに終止符を打つ時です。アフリカだけでなく世界中の少女がFGMの後遺症に苦しまないようにする時です。」

- 「食料も水もテントもない」ー戦争の中、ガザの女性たちは生き残りをかけて戦っています!
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パレスチナ・ガザ地区、激しい戦闘が始まって5か月の2024年3月。
「食料も水もテントもなく、トイレに行く場所もないのです」とハリルさん。ハリルさんはパレスチナ・ヨルダン川西岸の女性団体メンバーです。ガザにいる叔母によると水道は1日2時間しか使えない時もあれば、週に2時間しか使えない時もあるということです。
2月の時点でガザの水は戦闘以前のわずか5.7%にまで落ち込んでいます。生きるために水が必要なのは言うまでもありませんが、衛生状態も深刻です。
「水がないので、シャワーを浴びることができません。髪を洗うこともできない。だから、今はシラミがたくさんいます。ガザの女性たちは髪を剃ったりして対応せざるをえません」とハリルさんは言っています。家から追い出されたガザの家族の話もしてくれました。
「イスラエル兵は家族に建物から出て行くように命じました。1週間後にその家の娘は出産しなければならないのに水もありませんでした」と彼女は言いました。「どうやって水なしで出産したのかわかりません。本当に非人道的な状況です」

- 生理の貧困「生理は触れてはいけない話題なので、ほとんどの少女と女性はそれについて語りませんでした」
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世界中の何百万人もの人にとって生理用品はとてつもなく高額です。ジェンダーに無関心な政策と税法(女性用品への「ピンクタックス」など)がその一因です。例えば、アメリカの多くの州では、バイアグラ(勃起不全治療薬)は税控除の対象になる健康製品に分類されているのに、生理用品はぜいたく品と分類され、最高税率がかけられています。貧困国ではそもそも売っていません。
加えて、個室トイレなどの基本的な衛生サービスを受けられない人が世界に15億人以上います。12か国の農村部の10人に1人が生理の間、洗濯や着替えをする専用の場所がないと答えています。
生理の貧困は教育不足によって世代を超えて繰り返されています。多くの少女が生理について教えられていません。バングラデシュとエジプトでは、 初潮の前に生理のことを知っていたと答えた少女がそれぞれ32%と66%にとどまりました。
生理をタブー視する社会もあります。生理中の少女や女性は不潔で触れてはいけないものとされ、移動や集会を制限されます。生理中の女性や少女は、腐るので特定の食べ物に触れてはいけない、礼拝の場に入ってはいけない、隔離しなくてはいけない、という根拠のない社会的通念が広まっています。
戦争や災害などの危機にあっても生理は止まってくれません。でも危機対応の決定に女性が参加できないため、気にしてもらえません。 UN Womenの最近のガザからの報告によると、54万人以上の女性と少女が生理用品を入手できず、布やスポンジを使わざるを得ません。UN Womenは、ガザの女性と少女のニーズに応え尊厳を守るために、毎月1,000万個の使い捨て生理用ナプキンが必要だと見積もっています。
レバノンでは、経済危機の間、 国内産の生理用ナプキンとその他の衛生用品の価格が98~234%上昇しました。2020年4月、66%の少女が生理用品を買う余裕がないと答え、そして生理は触れてはいけない話題なのでほとんどの少女と女性はそれについて語りませんでした。