【15のストーリー No. 15】それでも、彼女たちは働き続ける

UN Women設立15周年(2025年7月)を記念してこの1年間お届けしてきた【15のストーリー】も、いよいよ最終話となりました。
それでも、彼女たちは働き続ける
~戦時下のガザから問いかける「仕事」の意味~
昨年10月の停戦合意後も、ガザには安全な場所などありません。そこにあるのは極度の苦難と今なお繰り返される攻撃です。それでも女性たちは働き続けています、命をかけてまで―。いったい「仕事」とは何でしょうか。日々の仕事に追われる私たちに問いかけてきます。
爆撃で病院が揺れる中、子どもたちの命を救おうとする医学生。
世界に真実を伝えるため、危険と隣り合わせでカメラを向けるジャーナリスト。
学ぶ場所を失った子どもたちに、もう一度未来を届けようと教師になった避難民。
◇イマン・アヤドさん|医学生

度重なる爆撃を受けるアル・シファ病院―そこで働くイマンはまだ医学生ですが、医療が崩壊する一方で患者はどんどん運ばれてきますから、そんなことは言っていられません。もう幾度も手術を行ってきました。イマンはその胸の内を明かしてくれました。
「食べ物も安全もない中で、休みなく仕事を続けなければなりませんでした。何より私たち医療スタッフ自身が攻撃の標的となったんです。ここには『安全』という概念自体が存在しませんでした。」
「普通、医学生は一日の3分の2を勉強に費やすものだけど、電気がないので勉強することは不可能でした。インターネットもなく、情報を得ることは困難を極めました。ですから、病院で働く医師たちが私にとって唯一の学びの源でした。私はこの戦争で、無力感と人間らしさが失われていく深い悲しみを味わってきました。子どもたちにいったい何の罪があるというんでしょう? 子どもたちは普通の暮らしの全てを奪われました。医療を受けるという当たり前の権利さえも、もうガザには残されていないのだなと実感します。」
イマンにとっては、人々が日常を取り戻し、子どもたちが本来保障されるべき権利を再び享受できるようにすることが、仕事を続ける原動力となっています。
◇ドアー・アル=ハラジンさん|ジャーナリスト

「私たちジャーナリストは、世界中の人々にガザの現実を伝えようとしています。ここには虐殺、命を落とす民間人、毎日のように新たに未亡人となる女性たち、引き裂かれ死んでゆく子どもたち、そして住民登録から完全に消し去られてしまった家族たちがいる。可能な限りこうした犯罪を記録しようと努めているのです。」
ドアーにとって、ジャーナリズムに対する使命感は、女性ジャーナリストを狙い撃ちにする攻撃と隣り合わせです。「私は女性ジャーナリストを保護する施設で暮らしています。でもここにいること自体が、自分の命を危険に晒していることにもなるんです。いつ攻撃の標的にされてもおかしくないわ。」
個人的な喪失もドアーを深く傷つけています。「私たちは人生も、家も、家族も、健康も失いました。親しい親族たちも亡くなって、私にはもう誰もいないんです。」
多くを失いながらも、ドアーはジャーナリストの仕事を続けることで自らの使命に支えられ、生きています。
◇ラミヤ・オスマンさん|教師

「私たちガザの人々は、世界でも教育水準の高い人々です。戦争があろうとなかろうと、私たちは学び続けます」と話すのは、コンテンツクリエイターから教師へと転身したラミヤです。
戦争が始まると会社は破壊され、ラミヤは自宅からも避難せざるを得なくなりました。自身が多くを失う中で、他者を助けるという使命を感じたのはその時です。
「アル・ブレイジ難民キャンプからデイル・アル・バラへ避難し、そこで教師として働く機会を得ました。私は、生徒たち、そして教えることそのものに心を奪われました。」
デイル・アル・バラの小さな学習用テントで教え始めたラミヤは、現在ガザで、両親を亡くした子どもたちのために、「アル・スムード学校」(「不屈の学校」)を運営しています。
「一緒に過ごし、教え、毎日生徒たちに囲まれていることがとても幸せなの。決してここを離れないわ。神の御心があれば、これからも教え続けます。」
「多くの子どもが教育を受ける権利を奪われてしまった。だから、私が教え始めたときは、基礎の基礎 ― 本来ならすでに知っているはずの幼稚園レベルのことから始めなければなりませんでした。」2年間にわたって本格的な学校教育を受けられなかったことの影響について、ラミヤはこう語りました。
「私が望むのは、ガザの子どもたちが、世界中の子どもたちと同じように学ぶ機会を得られることだけです。」ラミヤが仕事を続ける意味はシンプルで切実です。
【15周年、15のストーリー:レジリエントな女性たち】は、これで幕を閉じます。同じ時代を生きる世界各地の女性たちの物語には、たくさんのインスピレーションがありました。
彼女たちの日常は私たちとは大きく異なります。でもその願いは同じです。家族や友人と笑顔で食卓を囲み、子どもたちが十分な教育を受け、自分らしく安心して未来を描けること。
女性たちはそれぞれの場所で困難を乗り越えながら、一歩ずつ未来を切り拓いています。
その歩みが止まることはありません。
