女性主導団体が、コソボの紛争関連性暴力(CRSV)のサバイバー支援を推進

記事をシェアする

2025年5月6日

2024年10月21日付

女性に対する暴力撤廃国連信託基金(国連信託基金)からの助成金を受けているスーパーマーケットで、暴力のサバイバーが作った製品を販売するメディカ・ジャコヴァのチームメンバー   写真:国連信託基金Etsehiwot Eguale

1990年代、西バルカン半島では壊滅的な紛争が発生し、コソボは残虐行為の中心地となりました[1]。1998年から1999年にかけての戦争では、一般市民は残忍な暴力、強制移住、組織的な性暴力に耐え忍びましたが、人々には深い傷跡が残りました。

2015年、コソボは実施規定第22/2015号[2]の可決によって画期的な一歩を踏み出しました。1998年2月から1999年6月にかけて行われた紛争関連性暴力(CRSV)を生き抜いてきたサバイバーに、公式な「サバイバー資格」を申請する権利を認めたのです。これにより、月々の年金、法律扶助、無料の医療、その他の給付を含む、重要な賠償へのアクセスが可能となりました。サバイバーの団体や市民社会の長年にわたるたゆまぬアドボカシー活動を受けて、コソボは2017年に「紛争関連性暴力被害者の地位の検証と承認のための委員会」を設立しました。同委員会はサバイバーを特定し、彼女たちのアイデンティティーを守りながら支援を提供しています。 2018年以来、2,100人以上のサバイバーが名乗り出ており、そのうち1,600人以上はサバイバーとしての地位を認められ、本来受けるべき補償を受けることができるようになっています。UN Womenは、CRSVのサバイバーたちが司法と必要な支援にアクセスできるようにするため、委員会の設立と強化の両方に尽力してきました。

メディカ・コソヴァの支援を受けるコソボのCRSVサバイバー   写真提供:国連信託基金Etsehiwot Eguale
 

支援の柱

メディカ・ジャコヴァの心理社会カウンセラーであるンデリメ・サハトキヤ氏は、25年もの間、コソボのCRSVサバイバーの命綱となってきました。当時を振り返り、彼女は次のように語りました。

「当初、私たちは女性の意識を高め、利用可能なサービスを紹介するために、ジャコヴァ(市)の一軒一軒を訪ね歩きました。2015年にコソボにおける性暴力の認知と賠償が実現されて以来、メディカ・ジャコヴァと他の市民社会組織は、献身的な努力により、女性のための2,000件近い申請を確保してきました。」

メディカ・コソヴァのヴェプロレ・シェフ事務局長   写真提供:国連信託基金Etsehiwot Eguale

メディカ・コソヴァのヴェプロレ・シェフ事務局長は、同団体が提供する法律相談と心理的支援の重要性も強調しました。2023年だけでも、メディカ・コソヴァは67人のCRSVサバイバーを支援し、彼らが正義と癒しにアクセスできるよう支援しました。

メディカ・ジャコヴァメディカ・コソヴァは、コソボを代表する2つの女性の権利団体で、1999年以来最前線に立って、CRSVサバイバーたちに重要な専門的支援を提供してきました。女性に対する暴力撤廃国連信託基金(国連信託基金)の助成パートナーであるこれらの団体は、法律相談や法廷同行から心理社会的サポートや生活訓練にいたるまで、あらゆる支援を提供しています。これらの団体は、政府から財政的支援を受けていて、サバイバーの法的地位の申請を支援できる4認可団体のうちの2つです。

声を取り戻すサバイバーたち

メディカ・ジャコヴァとメディカ・コソヴァでは、CRSVサバイバーは彼女たちのニーズを共有することで、自分たちの声を取り戻し始めます。メディカ・ジャコヴァのンドリメ氏は、「多くの女性は、身近な家族にさえ暴力体験を隠していて、このセンターが、彼女たちが自分の話を安心して話せる最初の場所かもしれません」と語りました。「ピスコタ」のような自助グループを通じて、サバイバーたちはつながり、日々の困難を分かち合うことで安らぎを得ています。

メディカ・コソヴァが運営するセンターでは、サバイバーが去って行ったあとでもケアは終わりません。ある会員は、センターは、「家に帰って来るような、自分を理解してくれる人たちに会える場所のような感じがします。そして、今になっても、サポートが必要だと感じたときはいつでも迎え入れてくれるし、私たちの様子を見るために時々電話をくれたりもします」と話してくれました。

各団体は、サバイバー認定を申請できる時間がより長くとれるよう、「紛争関連性暴力被害者の地位の検証と承認のための委員会」の任務の延長を訴えてきました。メディカ・コソヴァのヴェプロレ氏は、「現行制度による時間的制約が、サバイバーには、長く残る社会的羞恥心やスティグマのために認定を求めることを躊躇させているかもしれません。申請期間を延長することで、より多くのサバイバーが時間をかけて権利を取り戻すことを促せるのです」と述べました。

同委員会の設立以来、メディカ・ジャコヴァとメディカ・コソヴァは、それぞれ251人と449人のCRSVサバイバーを支援し、法的地位の確保に努めてきています。

生存者のためのホリスティックサービス(全人的ケア)

メディカ・コソヴァとメディカ・ジャコヴァは、20年以上にわたってサービスを発展させ、この1年だけでも100人以上のサバイバーによる委員会への申請を支援してきました。

ホリスティック(全人的)なアプローチには以下のことがらが含まれています:

  • 心理社会的ケア:個人カウンセリングとグループカウンセリングの提供
  • 法的支援:法廷代理人や無料の法律扶助の提供
  • 婦人科:頻繁な健康診断とPAP検査。
  • 財政面のトレーニング:原材料の確保、市場開拓、起業家ネットワーク構築の方法の教授

2024年8月、メディカ・ジャコヴァはプリシュティナに2号店をオープンし、サバイバーたちが作った製品を販売することで、女性の経済的なエンパワーメントを更に推し進めています。ある女性起業家は、「このような取り組みやワークショップは、友情、そして、新たに得た自信のための安全な空間を作り出しています」と話します。

コソボのプリシュティナでのメディカ・ジャコヴァ2号店のオープニング 写真提供:メディカ・ジャコヴァ

UN Womenの国内支援により、コソボは最近、ジェンダーに基づく暴力に対処するため、ジェンダーに配慮したアプローチを取り入れた史上初の「移行期の正義に関する国家戦略」を承認しました。「20年以上にわたり、UN Womenは女性団体や地方自治体と緊密に協力しながら、サバイバー中心のサービスと司法へのアクセスのための法執行など、コソボにおけるCRSVサバイバーへの揺るぎない支援を行ってきました。私たちのプログラムは、サバイバーに経済的な力を与え、CRSV委員会とサービス提供者の能力を強化してきました。また、同様に重要なことは、私たちはCRSVを取り巻くスティグマを取り除くことを目的としたアドボカシー活動に力を注ぎ続けるということです」とUN Womenコソボ事務所のヴローラ・トゥジ・ヌシ所長は述べました。

女性主導団体への制度的支援

コソボでは女性に対する暴力が依然として蔓延しており、報告された家庭内暴力の事例では女性がサバイバーの80%を占めていますが、事例の90%は報告されていないと推定されています[3]。メディカ・コソヴァやメディカ・ジャコヴァのような女性主導団体は、女性サバイバーにとって最初の窓口となることが多く、複雑な申請手続きを指南し、サバイバーの認知と救済を擁護しながら、排斥される恐怖を克服する手助けをしています。

首相府ジェンダー平等局のエディ・グシア事務局長は、「地域的な課題が山積する中で、女性と少女にとって重要なコミュニティ支援を提供するために、市民社会組織は重要な役割を果たしています。女性への投資は、長期的な平和にとって極めて重要なのです」と述べました。

[1]コソボに関するすべての記述は、国連安全保障理事会決議1244号(1999年)の文脈で理解されるべきものです。

[2]コソボ紛争中の性暴力被害者の地位の承認と検証の手続きの定義に関する規定第22/2015号は、「殉教者、戦没者、退役軍人、コソボ解放軍メンバー、民間人戦争被害者とその家族の地位と権利に関する法律第04/L-054号」を実施するためのものです。

[3]ポーラ・クロル、エミネ・カバシ、アルディタ・ラミジ・バラ。コソボにおける女性に対する暴力の被害者支援サービスのマッピング。欧州評議会。2017年6月10日。2024年9月25日にアクセス。

(原文)
Women-led Organizations Drive Support for Survivors of Conflict-Related Sexual Violence in Kosovo | UN Women – United Nations Trust Fund to End Violence against Women

カテゴリ: ニュース , 国連ウィメン日本協会

寄付する