ジェンダーの不平等と気候変動はどのように関連しているのか

2025年6月9日

2025年4月21日付

気候危機は、現代における最も差し迫った課題のひとつです。それは人権と持続可能な開発のこれまでの進展を覆す脅威であり、ジェンダーの不平等を悪化させ、世界中のすべての女性と少女の生活様式、生計、健康、安全、安心に具体的なリスクをもたらすものです。

より多くのデータや調査によって、ジェンダーの公正・社会の公正と気候変動との関連性が明らかになってきている今、気候変動が女性と少女にどのような影響を与えるのか、なぜジェンダー平等が世界的な気候変動対策にとって重要なのか、そして、女性による女性のための解決策をどのように支援しなければならないのかについて話し合うべき時が来ています。

気候変動は女性と少女にどのような影響を与えるのか？

気候危機は「ジェンダー中立」ではありません。気候危機は、既存のジェンダー不平等を増幅させ、女性と少女の生活、健康、安全に独特の脅威をもたらすため、彼女たちはそうした気候危機の影響の矢面に立たされるからです。

フェミニスト的気候正義は、気候変動との闘いにジェンダーの視点を持ち込み、気候危機の要因がジェンダー不平等の要因でもあることを認めています。

報告書『ジェンダースナップショット2024』によれば、2050年までに、気候変動によって、最大で1億5800万人以上もの女性と少女が貧困に追い込まれる可能性があります（これは男性と少年の合計数より1600万人多い）。実は、現在でも、4,780万人以上の女性が、男性よりも多く食料不安や飢餓に直面しています。

女性は天然資源への依存度が高いが、天然資源へのアクセス度は低い

多くの地域で、女性が、家族のために、食料、水、燃料を確保する責任を負っています。 気候の変化によってこれらの資源が不足すると、女性はより懸命に働き、より遠くまで行かなければならなくなります。このことはまた、少女たちにさらなる重圧をかけます。母親の負担増を軽減するために学校を離れなければならないこともあるからです。

ボリビアの環境ジャーナリスト、ミリアム・ジェミオ氏は言います。「気候変動の影響に直面し、対応するのは女性ですが、彼女たちの役割は理解されておらず、可視化されていません。採掘主義と気候危機は、先住民に対して深刻な社会的・環境的影響を及ぼしていますが、女性に対して与えるそうした影響は（男性に対して与えるものとは）異なっています」。ジェミオ氏は、伝統的に水汲みなど家族の世話が女性の責任のひとつとなっているチキタニア（ボリビア東部の地域）の先住民女性の例を挙げ、「水はますます不足しています。チキタニアでは、女性たちは、季節によって、別のコミュニティや最寄りの都市まで行かなければならないのです」と語ります。

気候変動がジェンダーに基づく暴力の急増を招いている

2025年国連スポットライト・イニシアチブの報告によると、気候変動は、女性と少女に対する暴力の増加に拍車をかける社会的・経済的圧力を高めています。例えば、この報告書で取り上げたある研究では、熱波がやってきている間のフェミサイド（ジェンダーを理由とする女性や少女の殺害）が28％増加していることがわかりました。

緊急に対策を講じなければ、今世紀末までに、親密なパートナーからの暴力の10件に1件が気候変動が関係したものとなる可能性があります。その影響は、女性がすでに根強い不平等に直面している地域社会で最も深刻に感じられることになるでしょう。

気候変動は、紛争の影響下にある地域のジェンダー不平等を悪化させる「脅威の乗数」である

気候変動の影響は、脆弱で紛争の影響を受けやすい環境、つまり女性と少女がすでにあらゆる形態のジェンダーに基づく暴力にさらされやすい地域において、社会的、政治的、経済的緊張をエスカレートさせます。例えば、農村経済においては、地元の農業を直撃する長引く干ばつや強力な洪水は、食料と清潔な水へのアクセスだけでなく、収入源を破壊する可能性があります。これは、政治が不安定な地域では、火薬庫の火種になりかねません。

調査によれば、こうした気候変動に起因する紛争の結果もたらされる不安定と貧困は、紛争関連の性暴力、人身取引、児童婚の増加を招きます。

女性と少女は自然災害を生き延びる可能性が低い

気候変動は、異常気象やその他の自然災害の増加に拍車をかけています。災害が発生すると、女性は不釣り合いな影響を受け、負傷する可能性が高くなります。これは、情報、移動、意思決定、資源や訓練へのアクセスにおける格差を生み出してきた長年のジェンダー不平等に起因するものです。

その結果、女性や少女は救援や支援を受けにくくなり、生活や福祉、復興がさらに脅かされ、将来の災害に対して脆弱になるという悪循環が生まれます。

気候変動は妊産婦と新生児の健康にも影響を及ぼし、特に災害や紛争によって支援サービスや保健医療へのアクセスが制限される場合に、その影響は顕著です。調査によると、猛暑は死産の発生率を高め、温暖化はマラリア、デング熱、ジカウイルスなどの媒介性疾患の蔓延を助長しています。

女性と少女にとって、気候変動は、他の不平等とどのように交差するのか？

女性と少女は、世界レベルで気候変動による不釣り合いな影響を経験していますが、その影響は一様ではありません。様々な不平等の形態がしばしば作用し合い、互いを悪化させるというインターセクショナル・フェミニズム（交差性のフェミニズム）の視点から気候変動を見ると、気候変動のリスクが、先住民やアフリカ系住民の女性や少女、高齢の女性、LGBTIQ+の人々、障がいのある女性や少女、移住してきた女性、農村部や遠隔地、紛争や災害の起こりやすい地域に住む女性や少女たちにとって深刻であることは明らかです。

「日常生活で目に見えない存在であれば、危機的な状況において、あなたのニーズは対処されることはおろか、顧みられることもないでしょう」と、タイのチェンマイ、メーホンソン、タックの3県で、無国籍で土地のない先住民の女性や少女、若いLGBTIQ+の人々のエンパワーメントに取り組むレズビアンのフェミニスト人権擁護者、マッチャ・ポーンインさんは言います。

「人道的プログラムは異性愛規範的になりがちで、性別やジェンダーの多様性を考慮しなければ、社会の家父長的構造を強化することになりかねません」とフォーンインさんは説明します。「構造改革に取り組むことで、私たちはあらゆる種類の平等を提唱し、その実現に向けて取り組んでいるのです」。

女性のエンパワーメントは気候変動対策に役立つか？

女性と少女は、特に農村や先住民のコミュニティにおいて、気候変動の壊滅的な影響の矢面に立たされているため、解決の最前線にも立っていることになります。

たとえば、コロンビアのトゥマコに住む 「コンチェラ・ウーマン」（貝の女性たち）は、何世代にもわたり、食料と収入を得るためにピアングと呼ばれる軟体動物を持続可能な形で収穫してきました。地域のマングローブ林の破壊がピアングを破滅させていることに気づいたとき、彼女たちは協力して木の移植プログラムを立ち上げました。マングローブは地域の収穫と伝統を守るだけでなく、水をろ過し、海岸線を保護し、炭素を吸収します。

「私たちはマングローブから強じん性を学びました」と、ライセス・デル・マングラル協会のコンチェラ（貝の女性）であるマグノリア・オルドニェスさんは言います。その過程で、事業計画や財務管理、他の女性をサポートすることの重要性を学んだと付け加えました。「私たちに新たな希望を与え、コミュニティにおける私たちの役割を際立たせてくれました」。

ジェンダー平等のための最も先見的な計画である北京行動綱領から30年を迎え、世界が振り返る中、気候変動対策において女性と少女の権利とリーダーシップを優先させることが非常に重要です。それは、介護労働や持続可能な農業、再生可能エネルギーなど、環境に配慮したグリーンな仕事への投資とアクセスを増やすことを意味します。

すべての女性と少女のジェンダー不平等に取り組むことで、気候変動の複雑で多様な影響をよりよく理解することができます。そして、これらの影響をより深く理解すればするほど、私たちの気候変動対策はより強力で持続可能なものになるでしょう。

（原文）
How gender inequality and climate change are interconnected | UN Women – Headquarters

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